• せいしんちゅうがっこう・せいしんじょしこうとうがっこう
  • 清心中学校・清心女子高等学校

  • Seishin Junior High School / Seishin Girls' High School
  • 種別 地区
  • 主な活動分野生物多様性, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 貧困

所在地 〒701-0195 岡山県倉敷市二子1200
電話番号 086-462-1661
ホームページ http://www.nd-seishin.ac.jp/
加盟年 2012

2023年度活動報告

活動分野

生物多様性, 海洋, 減災・防災, 気候変動, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 貧困, その他の関連分野

※1【ユネスコスクールが重点的に取り組む3つの分野】
①地球市民および平和と非暴力の文化
②持続可能な開発および持続可能なライフスタイル
③異文化学習および文化の多様性と文化遺産の尊重

本校は、「心を清くし 愛の人になれ」を学校理念としており、ESDの理念は学園創立時からのこの理念と合致すると捉えている。ESDの実践を通し、自立した女性としてグローバル・リーダーとなるための資質を養成することを主な目標としている。
具体的には、ユネスコスクールが重点的に取り組む3つの分野(①地球市民および平和と非暴力の文化、②持続可能な開発および持続可能なライフスタイル、③異文化学習および文化の多様性と文化遺産の尊重)を念頭に置きながら、SSH(Super Science High School)であることも踏まえ
A(①に関連する)人権教育に係わる活動
B(①に関連する)地球が抱える課題解決に向けたESDプログラムの開発・実施
C(②に関連する)女性科学研究者として必要な基盤を育成する教育プログラムの開発
D(②に関連する)福祉に係わる活動
E(③に関連する)グローバル社会で活躍するために必要な語学力と国際感覚の育成
F(①②③に関連する)ユネスコスクールネットワークに係わる活動
尚、中高一貫の学校であるため、中学1年生からSDGsに関する調べ学習を実施するなど、上記の取り組みに向けた基礎知識の習得を図っている。

A(①に関連する)人権教育に係わる活動
中学校では毎年、人権教育として様々な活動に取り組んでいる。
今年度は、性差別の撤廃に取り組み、ジェンダー平等のアイコン的存在の女性であるアメリカの法律家 ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の生涯を描くドキュメンタリー映画を視聴し、性差別の歴史を知り、男女共に平等な世界の実現について考えた。
また、女性として史上2人目となる最高裁判事を27年に渡って務め、男子大学の女性排除、男女の賃金差別などの問題に果敢に切り込んでいった彼女の活動には、家族や友人、同僚などの協力や理解はもちろん、彼女の誠実さに賛同する多くの人々の支えが必要不可欠だったことを学び、そのような人と人のつながり、女性であることへの差別に立ち向かう勇気、人権について「社会」という視点で見る方法について学ぶことができた。
高校では、各学年のロングホームルームや全校対象の講演などで、様々な人権学習に取り組んだ。例えば、高校3年生は、ハンセン病に関する学習に取り組み、ハンセン病療養所「愛生園」を訪問したり、高校2年生は、映画「カランコエの花」とNPO法人ReBitの「多様な性って何だろう?」を視聴した。生徒たちは特別な配慮が当事者を傷つけるおそれがあることを知り、真に多様性を尊重するとはどういうことなのか考え、性的マイノリティへの理解を深めた。
更に、高校2年生の希望者が受講する「発展科目 女性」では、女性という視点から現代や歴史、日本のみならず国際社会を見つめ直し探究学習を行った。ノートルダム清心女子大学の先生方による専門的な授業を通して知識見聞を広げ、その後自分の関心に基づいてテーマを設定して課題研究を行った。生徒たちは文献調査にとどまらずアンケート調査やインタビュー調査を行い、学問と実社会とのつながりを実感することができた。また、、全校生徒対象に、ハンセン病の療養所で働く社会福祉士の方から歴史や入所者の方について講演を聴く機会を設けた。

海外研修としては、Women’s Studiesをテーマとしてアメリカ、サンノゼの姉妹校への短期留学制度があり、数年はコロナの影響で中止していたが、来年度から再開する予定である。

B(①に関連する)地球が抱える課題解決に向けたESDプログラムの開発・実施
中学3年生では原爆をテーマにした「平和学習」を毎年実施している。社会科の授業内などで原爆についての事前学習をおこなったうえで、10月には広島平和記念公園を訪れた。平和祈念資料館の見学や公園内の碑巡りを通して、戦争の愚かさと平和の尊さを体感的に学習した。また、姉妹校である広島の清心高校の生徒とオンライン勉強会を実施し、「21世紀の平和の在り方」などについて活発な意見交流を展開した。
高校2年生国際系の生徒は1年次に、「大分カンボジア協会」「ハートオブゴールド」「CHAJAPAN」の協力を得てカンボジアについて学び、「貧困」「教育」「水問題」「異文化理解」をテーマとした様々な活動を行った。これらの課題についてディスカッションを行った上で、自分たちにできることを考え、チームとして協働して取り組める活動を主体的に考え実践した。その活動の継続として、地雷やポリオで障がいを負った女性の自立支援を行うために、彼女たちの作ったアクセサリーの販売を行った。また、その売り上げのうち本校の収入で、カンボジアに井戸を2つ寄贈する取り組みを行った。
その結果、課題を多角的に捉え、様々な人の立場に立って課題について考えることを学んだ。また情報過多なこの時代に、その中から正しい情報を見極める力、また偏見を持たない態度などの育成ができた。
高校2年生の選択科目「ハイレベル英語」では、「過疎化」「古着の廃棄・ごみ問題」といったSDGsに関する課題をテーマに課題研究・探究活動を進めた。3学期には、英語でのプレゼンテーションを実施する予定である。
また、ユネスコ部では、「世界平和」について考える活動を行った。戦時下にあるウクライナの人々の支援のための募金活動を実施。更にウクライナの人々を支援する団体との協働企画で、ウクライナの方から伝統工芸品ピーサンカの作り方を学びながら戦争・平和について意見交換をする場を設けた。

C(②に関連する)女性科学研究者として必要な基盤を育成する教育プログラムの開発
中学3年生及び高校2年生において課題研究の授業を実施している。自然科学分野において、各生徒が興味を持ったテーマについて主体的に研究を行う。研究テーマの設定、仮説、研究方法、結果の考察等、研究に関わる一連のプロセスを経験することで、研究することの醍醐味や面白さ、困難な点などを体験することを目的としている。ESDに関連した研究テーマも多く、例えば準絶滅危惧種であるアカハライモリの生態についての研究や、マイクロプラスチックを分解する微生物についての研究などを実施した。
さらに、自然環境を体験を通して学ぶという目的で、海外ではマレーシアやフィリピン、国内においては屋久島でのフィールドワークを実施してきた(ただし、今年度の海外研修はコロナの影響で中止した。)。特に屋久島では、ヤクスギの生態について自分たちの調査結果をもとに考察したり、植生の垂直分布について調査したりするなど、より主体的な学びを展開できている。
その他、広島大学、関西大学、近畿大学等と連携した高大連携実習を年間で複数回実施し、理系の大学・学部への進学につながるようなキャリア教育も行っている。

D(②に関連する)福祉に係わる活動
カトリック校であるため、他者への感謝と信頼の心を忘れず、惜しみない奉仕の心をもって一連の活動に取り組んだ。
全校生徒で実施する「聖ジュリーの日」には、学園の創始者であるSt. Julie Billiartの精神を受け継ぎ奉仕活動を実践した。中学1年と高校2年生は、本校が40年間支援しているチャイルドファンドジャパンの活動について、オンラインで講話を伺い、自分たちの取り組みに対する理解を深めた。中学2年生は「社会福祉体験」で高齢者施設を訪問し、説明を受けた後、奉仕活動と交流会を行った。
奉仕活動では花の手入れや共有遊具の掃除、季節に合わせた掲示物の作成などに取り組み、生活環境の整備に尽力した。中学3年生は、ハンセン病に関する映画「あん」を鑑賞し、ハンセン病をはじめ、様々な差別のない社会について考えを深めた。
さらに、聞くことによって内容を理解できるようサポートする「朗読」を、実際に使われている機材を使って、音量や話し方にも注意しながら録音した。高校2年生はクラス単位で老人ホームや障がい者施設を訪問し、ボランティア清掃活動を行い、高校3年生はハンセン病に関する学びを実施している。
クリスマス時期には、路上生活者や障がい者を支援する施設に、手編みのマフラーとクリスマスカードをはじめ食料や衣料品といった献品や献金を全校生徒で行った。

また、本校独自の設定科目である発展科目「隣人愛」では、カトリックの精神に基づきながら、障がい者施設でのボランティア活動や「庄認定こども園」での園児との交流など、社会貢献活動を生徒主体で計画・実践した。同時に、神父様を招へいした講演会を開催し、他者とともに生きる自己の在り方について考えを深めた。
更に、クラブ活動では、社会福祉部が、児童福祉施設への訪問や障がい者福祉施設で作られたお菓子の委託販売を実施、ユネスコ部がコンタクトケースの回収や倉敷国際ふれあい広場でのボランティア活動を行うなど、生徒がボランティア活動に参加しやすい環境が整っている。

E(③に関連する)グローバル社会で活躍するために必要な語学力と国際感覚の育成
以下のような国際交流・異文化学習を通して、文化の多様性や文化遺産の尊重について習得している。

1. 本校で40年間継続しているフィリピンの子どもたちへの資金援助「チャイルド・ファンド・ジャパン」への理解を深め、持続可能な支援方法を模索するための「フィリピンスタディーツアー」を実施した。ツアーでは現地の方々との意見交換や貧困層の方々が暮らすスラム街(トンド地区)の訪問、幼稚園との学校間交流などを行った。
2. 中学3年生は4年ぶりにオーストラリア研修を行った。現地では1人1家庭にホームステイし、ブリスベンにあるShafston International Collegeにて、英語のレッスンを受けたり、オーストラリアの文化や歴史について学んだりした。スポーツ体験でクリケットをしてみたり、アボリジニ文化体験では狩りに使う技法であるブーメランを実際に投げたりもした
さらに、ラミントン国立公園という世界遺産にも登録されている多雨林群へ行き、野鳥の餌付けやブッシュウォーキングに挑戦し、自然保護にかんする学びにもなった。英語や異文化に触れることで、視野を広げる大きなきっかけとなった。

なお本校は、自文化と世界を知り、皆にとってより良い世界にするために協働する人を育成するという目標を掲げ、様々な国への短期留学を実施している。コロナ禍でここ数年中断しているものもあるが、高校生を対象にした、「マレーシア海外研修」「サンノゼノートルダム短期留学」「オーストラリア研修」、「フィリピンスタディーツアー」等がある。これらは、現地の人々との交流を通して、多様な価値観に触れ、世界が抱える課題解決の方法を考える機会となっている。

F(①②③に関連する)ユネスコスクールネットワークに係わる活動
岡山県内のユネスコスクール10校の生徒が定期的に交流会を実施。12月には10校の生徒が一堂に集い、各校のESD活動についてポスターセッションと意見交換を実施するとともに、防災をテーマとした「ワークショップ」を行った。できることを模索し自分たちのできる活動を実践したことで、思考力と行動力を高める活動となった。

来年度の活動計画

今年度まで各部署で実施していた活動を継続しつつ、校内での連携を図り、学校全体に活動の場を拡張したり、それぞれの活動を深化させたりする必要がある。さらに、時代の変化に伴った新しい視点での新しいESDの開発が必要である。
特に校内での連携については、昨年度の反省と同様に、一部の教員にとどまらず、全教員でESD活動の意義や目標を共有し、中高一貫校の特質を生かした継続的で積み上げ思考の独自の教育開発が必要である。学年を超えた縦のつながりと教科やコース・系・委員会などの横の枠を超えたつながりを意識し、学校としてどのような能力や資質を習得させることが地球市民となりうる生徒を育成できるのかを考えることが必要だ。

過去の活動報告