2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

気候変動, エネルギー, 環境, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉

本校は、「心を清くし 愛の人になれ」を学校理念としており、ESDの理念はノートルダム清心学園創立時からの理念であると捉えている。ESDの実践を通して、自立した女性としてグローバル・リーダーとなるための資質の育成を主な目標としている。
具体的にはSSH(Super Science High School), SGHA(Super Global High School Associate) を柱に①女性科学研究者として必要な基盤を育成する教育プログラムの開発、②人権教育に係わる活動、③福祉に係わる活動、④グローバル社会で活躍するために必要な語学力と国際感覚の育成、⑤地球が抱える課題解決に向けたESDプログラムの開発、⑥ユネスコスクールネットワークに係わる活動を行った。

①女性科学研究者として必要な基盤を育成する教育プログラムの開発
生物教室でサンショウウオやアカハライモリを飼育しながら,その産卵から成長していく様子を調べてまとめた。また,絶滅危惧種のデンジソウの栽培も年間を通して行い,学会や高校生対象の発表会等で発表した。花酵母の研究では、プラスチックを分解する酵母を探す試みを研究し発表した。
さらに、世界の環境問題を考えることのできる研修として、昨年度まで実施していたマレーシアのジョホール州やサバ州での研修がコロナの影響で中止せざる得ない状況にあったため、その代替として、日本で初めて世界遺産になった屋久島での研修を実施した。ガイドと連携して、自然観察や樹林の調査を行った。屋久島にしかない貴重な自然環境ならではの生物多様性を学ぶと同時に環境問題についても考えることのできるプログラムである。

②人権教育に係わる活動
各学年の人権教育として、高1はLGBT,高2はハンセン病患者、高3は様々な差別を題材にした研修を実施した。
また、高校2年生NDSU特別進学コース生徒を対象に、「現代社会とジェンダー」といった女性に関わる問題をテーマに週2時間の授業を行った。テーマごとに、姉妹校ノートルダム清心女子大学の講師が講義をした。授業を通して女性に対する諸課題に気づき,自分の問題として捉え,課題研究を行った。文化祭で課題研究の中間報告を行い、3学期には校内でプレゼンテーションによる最終報告を行う予定である。また、外部の発表会にも参加し、研究内容を校内外に発信した。
海外研修としては、Women’s Studiesをテーマとしてアメリカ、サンノゼの姉妹校への短期留学があるが、今年度はコロナの影響で中止となった。

③福祉に係わる活動
他者への感謝と信頼の心を忘れず、惜しみない奉仕の心をもって奉仕活動に取り組む「聖ジュリーの日」には、毎年、中学2年生は福祉施設での奉仕活動、中学3年生は高齢者疑似体験や車いす体験、高校1年生は手話学習、高校2年生は特別養護老人ホームや障がい者福祉施設でのボランティア活動を実施するが、今年度はコロナの影響で見送った。しかし、クリスマス時期のボランティアとして、路上生活者支援の一環で、手編みのマフラーとクリスマスカードを送る活動に携わった。またクラブ活動では、社会福祉部が、児童福祉施設への訪問や障がい者福祉施設で作られたお菓子の委託販売を実施するなど、ボランティア活動を実施した。

④グローバル社会で活躍するために必要な語学力と国際感覚の育成
以下のような様々な活動を、各教育現場で実施した。
1.「アジアの架け橋プロジェクト」を通じて、留学生がトルコとインドネシアから2名在学中
2.ハワイにおけるESD活動の講義(JTB主催)に参加し、本校のESD活動についても発表した。(オンライン)
3.「アートマイルプロジェクト」を通じてパキスタンの生徒との交流。コロナに関連する差別をテーマとしたディスカッションを実施(オンライン)
4.オーストラリアの生徒と、プラスチックの問題についてディスカッションを実施した上で、「エコバック」「文房具」といった各テーマ別に課題研究を実施(オンライン)

なお本校は、自文化と世界を知り、皆にとってより良い世界にするために協働する人を育成するという目標を掲げ、様々な国への短期留学を実施している。中学3年生全生徒対象にした2週間のオーストラリア研修、高校生対象に、「マレーシア海外研修」「サンノゼノートルダム短期留学」「ハワイ語学研修」、本校で40年間継続しているフィリピンの子どもたちへの資金援助「チャイルド・ファンド・ジャパン」への理解を深め、持続可能な支援方法を模索するための「フィリピンスタディーツアー」がある。これらは、現地の人々との交流を通して、多様な価値観に触れ、世界が抱える課題解決の方法を考える機会となっているが、今年度はコロナの影響で全ての企画が中止となったため、上記のようなオンラインを使った交流を充実させた。

⑤地球が抱える課題解決に向けたESDプログラムの開発
高校1年生国際系の生徒は、アートマイルジャパン事業に参加し、パキスタンの生徒と、コロナに関連する差別の問題についてディスカッションを進めた。課題を多角的に捉え、様々な人の立場に立って課題について考えることを学んだ。また情報過多なこの時代に、その中から正しい情報を見極める力、また偏見を持たない態度などの育成ができた。
高校2年生の選択科目「ハイレベル英語」では、プラスチックごみの問題をテーマに課題研究を進めた。4グループに分かれ、「文房具」「リサイクルエコバック」「風呂敷エコバックの普及」「お菓子の個包装」というテーマで課題研究に取り組み、英語でのプレゼンテーションの準備を進めている。

⑥ユネスコスクールネットワークに係わる活動
岡山県内のユネスコスクール10校の生徒約40名がzoom meetingで集い、コロナ禍での各校のESD活動について発表し、意見交換を実施した。現状をネガティブに捉えるのではなく、その中でもできることを模索し自分たちのできる活動を実践したことで、思考力と行動力を高める活動となった。

来年度の活動計画

コロナの影響も踏まえ、昨年度まで実施していた活動の継続しつつさらに活動の場を拡張するのか、校内やオンラインを利用した新たな取り組みの開発に重点を置くのかを見極める必要がある。いずれにせよ、時代の変化に伴った新しい視点での新しいESDの開発が必要である。また、一部の教員にとどまらず、全教員でESD活動の意義や目標を共有し、中高一貫校の特質を生かした継続的で積み上げ思考の独自の教育開発が必要である。

来年度、コロナが終息し、実践交流会や郊外の講演・ボランティア活動など精力的に活動できる場も生徒に提供できることを強く望んでいる。