2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 貧困

本校は、「心を清くし 愛の人になれ」を学校理念としており、ESDの理念は学園創立時からのこの理念と合致すると捉えている。ESDの実践を通し、自立した女性としてグローバル・リーダーとなるための資質を養成すること主な目標としている。
具体的にはSSH(Super Science High School)であることも踏まえ①女性科学研究者として必要な基盤を育成する教育プログラムの開発、②人権教育に係わる活動、③福祉に係わる活動、④グローバル社会で活躍するために必要な語学力と国際感覚の育成、⑤地球が抱える課題解決に向けたESDプログラムの開発、⑥ユネスコスクールネットワークに係わる活動を行った。
尚、中高一貫の学校であるため、中学1年生では、SDGsに関する調べ学習など、上記の取り組みに向けた基礎知識の習得を図っている。

①女性科学研究者として必要な基盤を育成する教育プログラムの開発
生物教室でサンショウウオやアカハライモリを飼育しながら,その産卵から成長していく様子を調べてまとめた。また,絶滅危惧種のデンジソウの栽培も年間を通して行い,学会や高校生対象の発表会等で発表した。花酵母の研究では、プラスチックを分解する酵母を探す試みを研究し発表した。
さらに、世界の環境問題を考えることのできる研修として、令和元年度まで実施していたマレーシアのジョホール州やサバ州での研修がコロナの影響で中止せざる得ない状況にあったため、その代替として、日本で初めて世界遺産になった屋久島での研修を実施した。ガイドと連携して、自然観察や樹林の調査を行った。屋久島にしかない貴重な自然環境ならではの生物多様性を学ぶとともに環境問題について考えた。

②人権教育に係わる活動
中学校では、岡山県出身の自閉症作家のドキュメンタリー映画を鑑賞した。その映画を通じて法律や社会制度の現状について学び、「学ぶ平等」「障がい者と健常者の共生」について、自分たちにできることや考えるべき課題についてディスカッションを行った。
高校では、各学年のロングホームルームで様々な人権学習に取り組んだ。例えば、高校3年生はハンセン病患者への差別を題材にした研修を実施した。
また、高校2年生NDSU特別進学コース生徒を対象に、「現代社会とジェンダー」といった女性に関わる問題をテーマに週2時間の授業を行った。テーマごとに、姉妹校ノートルダム清心女子大学の講師が講義をした。授業を通して女性に対する諸課題に気づき,自分の問題として捉え,課題研究を行った。
海外研修としては、Women’s Studiesをテーマとしてアメリカ、サンノゼの姉妹校への短期留学制度があるものの、今年度はコロナの影響で中止となった。

③福祉に係わる活動
他者への感謝と信頼の心を忘れず、惜しみない奉仕の心をもって奉仕活動に取り組んだ。「聖ジュリーの日」には、例年、中学2年生は福祉施設での奉仕活動、中学3年生は高齢者疑似体験や車いす体験、高校1年生は手話学習、高校2年生は特別養護老人ホームや障がい者福祉施設でのボランティア活動を実施している。今年度はコロナの影響で一部の活動を見送ったが、車いす体験や高齢者体験などは実施することができた。クリスマス時期のボランティアとして、路上生活者支援の一環で、手編みのマフラーとクリスマスカードを送る活動に携わった。更に、クラブ活動では、社会福祉部が、児童福祉施設への訪問や障がい者福祉施設で作られたお菓子の委託販売を実施するなど、生徒がボランティア活動に参加しやすい環境が整っている。

④グローバル社会で活躍するために必要な語学力と国際感覚の育成
以下のような様々な活動を、各教育現場で実施した。
1.例年、「アジアの架け橋プロジェクト」を通じて、留学生を受け入れているが、
今年度はコロナの影響で中止となった。
2.ユネスコスクール実践交流会に参加し、ブルガリアの生徒たちとオンラインにて交流した。本校のESDについて発表したのちに、「ジェンダー」について話し合った。
3.「大分カンボジア協会」の協力を得てカンボジアの留学生と交流を行った(オンラインを中心に直接の訪問も実施)。「貧困」「教育」「異文化理解」をテーマとした探究活動を実施した。

なお本校は、自文化と世界を知り、皆にとってより良い世界にするために協働する人を育成するという目標を掲げ、様々な国への短期留学を実施している。中学3年生全生徒対象にした2週間のオーストラリア研修、高校生対象に、「マレーシア海外研修」「サンノゼノートルダム短期留学」「ハワイ語学研修」、本校で40年間継続しているフィリピンの子どもたちへの資金援助「チャイルド・ファンド・ジャパン」への理解を深め、持続可能な支援方法を模索するための「フィリピンスタディーツアー」がある。これらは、現地の人々との交流を通して、多様な価値観に触れ、世界が抱える課題解決の方法を考える機会となっているが、今年度はコロナの影響で全ての企画が中止となったため、上記のようなオンラインを中心とした交流を充実させた。

⑤地球が抱える課題解決に向けたESDプログラムの開発
中学校では、今まさに世界が抱える最大の課題「世界平和」について、自分たちに何ができるのかを考えるESDプログラムの開発に取り組んでいる。その第一歩として、姉妹校である広島の清心の生徒とともに広島の原爆を題材に「戦争」と「平和」について学び、自分たちができることについてディスカッションを行った。
高校1年生国際系の生徒は、「大分カンボジア協会」「おかやまユネスコ協会」「CHAJAPAN」の協力を得てカンボジアについて学び、「貧困」「教育」「異文化理解」をテーマとした様々な活動を行った。これらの課題についてディスカッションを行った上で、自分たちにできることを考え、チームとして協働して取り組める活動を主体的に考え実践した。課題を多角的に捉え、様々な人の立場に立って課題について考えることを学んだ。また情報過多なこの時代に、その中から正しい情報を見極める力、また偏見を持たない態度などの育成ができた。
高校2年生の選択科目「ハイレベル英語」では、「廃油の再利用」「プラスチックごみの削減」といった環境に関するテーマを中心に各自が関心のある世界の課題をテーマに課題研究・探究活動を進めた。3学期には、英語でのプレゼンテーションを実施する予定である。

⑥ユネスコスクールネットワークに係わる活動
岡山県内のユネスコスクール10校の生徒がzoom meetingで集い、コロナ禍での各校のESD活動について発表し、意見交換を実施した。現状をネガティブに捉えるのではなく、その中でもできることを模索し自分たちのできる活動を実践したことで、思考力と行動力を高める活動となった。

来年度の活動計画

コロナの影響を見ながら、「昨年度まで実施していた活動を継続しつつ、さらに活動の場を拡張するのか」、「校内やオンラインを利用した新たな取り組みの開発に重点を置くのか」を見極める必要がある。いずれにせよ、時代の変化に伴った新しい視点での新しいESDの開発が必要である。また、一部の教員にとどまらず、全教員でESD活動の意義や目標を共有し、中高一貫校の特質を生かした継続的で積み上げ思考の独自の教育開発が必要である。