2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 減災・防災, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, 貧困, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)







横浜シュタイナー学園 2020年度活動概要

情報化が加速し、散文的な知の奔流に日々さらされる現代社会のなかで、教育に求められるものは、揺るぎない自己の確立と、その土台の上に立って、個々の知を統合し、それらを貫く法則をつかみ取り、そこに新たな価値を注いで世界を再構築していく力を育むことです。わたしたちはこの観点に立って、SDGsやESD for 2030への取り組みを〈世界の全体性を人間に取り戻す教育アプローチ〉と捉えなおし、学びを芸術的に編成することでそれを実現しています(詳細は サステイナブルスクール報告書をご参照ください)。

2020年度はとくにコロナ下の状況にあって何が可能かを模索する1年となりました。今回はそれらの活動を中心に報告します。

  1. 休校措置下での学びの継続性に向けた取り組み

    初回の緊急事態宣言の際、当学園は約2ヶ月間の休校措置を行った。世の中がオンラインの活用に流れるなか、緊急時とはいえ、子どもたちの心身の発達段階を考えると、電子媒体を通じた学習には慎重にならざるを得なかった。私たちは話し合いを重ね、家庭の理解と協力を得て、私たちは紙媒体と電話によるサポートで乗り切った。その取り組みのポイントを整理すると、

    • 紙媒体による課題をクラス担任と教科教員が相談しながら作成し、家庭に郵送して取り組んだ。
    • クラス毎に学びと生活の時間割をつくって実行するようにした。
    • 定期的な電話サポートを行った。
    • 家庭に学習への協力態勢をつくってもらった。
    • サポートが必要な家庭のために臨時学童保育を提供した。
    • 新入学家庭や必要とされる家庭には訪問授業や面談を行った。

    以上の工夫により、約2ヶ月の休校を乗り切ることが出来た。困難を感じた家庭もあったが、家庭での学びを通して、普段見えなかった子どもたちの姿が見えたという家庭も多く、よい経験となった。

    現在、ギガスクール政策によりITC機器の教育現場への一律な導入が進んでいるが、子どもたちと教員との直接的な対話、実体験を伴った学び、身体感覚を学びに結び付けることに、発達に応じてたっぷり時間を使うことがむしろ重要だとわたしたちは考えている。学習へのITC機器の活用には十分な教育心理学的・医学的検証が必要であり、また、ITC機器の使用・不使用を選択できる権利が保障されることが、SDGsやESD for 2030を支える基本精神である文化的多様性に適った道だと考える。

    参考資料として、わたしたちが国際フォーラムでの議論を重ねて2018年に採択した「ディジタル化時代の子どもの教育憲章」へのリンクを以下に示す。

    ディジタル化時代の子どもの教育憲章

  2. 様々な制約下での学びの工夫

    コロナ下で様々な活動に制限がかかったが、制約下でも様々な工夫を通して、平時に増して創造的な活動に取り組むことができた。一例として、5年生が宮ヶ瀬湖畔で行った山の学校の宿泊体験学習を記す。


    宮ヶ瀬地域の歴史を野外劇に仕立てて上演

    今回、通常なら利用できる体験施設が人数制限で利用できないなど、多くの制約が生じた。しかしそのことによって生まれた時間を生かして、むしろ創造的な活動に取り組むことができた。

    まず、事前に現地の撚糸産業の史実を学び、それを劇に仕立てて、現地で上演することを考えた。現地では、子どもたちが街を見下ろす丘の上で野外劇を上演するアイディアを出し、実際に丘全体をステージにして劇を上演することができた。子どもたちは、丘の木々や起伏を利用して、様々な工夫を凝らして熱演した。また、川遊びやタグ取りゲーム(タグラグビーの導入)など、開放的な自然環境で身体と五感をフルに使った体験をたくさん楽しむなど、定型化されたプログラムではできない学びができた。

    SDGsアシストプロジェクトの助成を受けた「循環型社会理解の基礎となる体験型『暮らしと仕事』学習プロジェクト」も、一時は実施が危ぶまれたが、様々な安全対策のもとで、予定の学びをほぼ実施することができた。

  3. 大人はオンラインを積極的に活用

    教職員や保護者は積極的にオンラインを活用し、最適な衛生管理を検討する会議を慣れないオンラインで重ねた。オンラインと対面を併用するスタイルも確立し、蓄積されていた家庭の不安をオンライン集会でくみ上げることができた。児童募集の催しや教員養成講座も初めてオンラインで開催した。

    また、全国のフリースクール、教育研究者、保護者、学生たち約400名がオンラインで一堂に会した第7回多様な学び実践研究フォーラムの分科会運営にも参加し、豊かな教育社会創成に向けて皆で力をあわせた。同フォーラムでは、淡江大学准教授・王美玲先生による台湾の教育多様性を保障する政策の報告は圧巻で、大きな目標をいただいた。ほぼ同内容のオンライン勉強会の報告資料を以下に示す。

    王美玲:台湾のオルタナティブ教育制度と実践

    なお、オンライン設備の設置に当たっては極力有線設備を使い、不必要な電磁波被曝を押さえるように配慮した。

以上のように、コロナの緊急事態を柔軟に受け止め、創造的に活動に生かしていくことができたことは、SDGsやESD for 2030を実現していくためのスキルが着実に育まれてきた証だと考えています。子どもたちも、不安に駆られることもなく新しい生活習慣に馴染み、のびのびと成長しています。

以上、2020年度活動概要(年次報告)


来年度の活動計画



横浜シュタイナー学園 2021年度活動計画

  1. サステイナブルな教育実践の継続と深化

    これまで実践してきたサステイナブルな教育実践を、今年も継続し、深めていきます。その際、SDGsやESD for 2030の視点からそれらの実践を再評価する作業にも取り組みます。また、そこから得た知見を発信していきます。

  2. 教室間連携による〈ホールスクールアプローチ〉

    上記の観点を生かしつつ、教室間の風通しを向上させて教員同士が支え合う〈ホールスクールアプローチ〉を、教員間の意識においても、組織的な仕組みにおいても、より一層充実させていきます。

  3. 社会との多様な接点の創出

    学校を越えたつながり、社会との多様な接点を創出し、自らの本分を大切にしながらも、よき変化への視点を取り入れていきます。

  4. サステイナブルな学びを広げる取り組み

    「横浜シュタイナー学園で学ぶ教員養成講座」「横浜シュタイナー学園で学ぶ手仕事教員養成講座」の2講座を開催し、サステイナブルな学びの本質を多くの方にお伝えしていきます。

  5. ユネスコスクール・コミュニティへのコミットメント

    ユネスコスクール関東ブロック大会および全国大会に参加します。

  6. 保護者による取り組み

    保護者主導のSDGs活動を充実させていきます。

以上、2021年度活動計画