2021年度活動報告
本年度の活動内容
生物多様性, 減災・防災, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, 貧困, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)
横浜シュタイナー学園 2021年度活動概要

ここ数年、教育現場へのITC機器の導入が一気に加速してきていますが、私たちは一貫して、言葉と感覚を通じて教員と子どもたちがダイナミックに関わり合う教育スタイルを堅持しています。
小中学生、とくに低学年の子どもたちの成長段階では、諸感覚の育成と統合、想像力(イメージ想起力)とそれに結びついて発展する豊かな情操、それらの活動から結果的に引き出されていく生きた倫理感覚等々を豊かに育てていくことが重要です。このような、人としての根幹をこの時代に健全に築くことが、いま世界が問いかけている持続可能性へのもっとも確実な答えだと私たちは考えています。
そこで私たちは、SDGsやESD for 2030への取り組みを〈世界の全体性を人間に取り戻す教育アプローチ〉と捉えなおし、学びを芸術的に編成することでそれを実現しています。
本活動報告では、ユネスコスクールの重点3分野*のなかの「持続可能な開発および持続可能なライフスタイル」に関連する活動に焦点を当てたいと思います。なお、本学園の教育活動と重点3分野との関連についての詳細は、本学園の『サステイナブルスクール報告書』をご参照ください。
* ユネスコスクールの重点3分野
- 地球市民および平和と非暴力の文化 (GCED)
- 持続可能な開発および持続可能なライフスタイル (ESD)
- 異文化学習および文化の多様性と文化遺産の尊重
-
横浜北部最大の里山での環境保全活動
里山の自然環境保全活動を終えて帰路につく新型コロナウイルス感染が広がって2年目を迎え、いろいろな制約はあるものの、日々の学びはほぼ平常を取り戻しました。その中で新しい展開を見せた活動に、7年生(中1)の園芸の授業があります。6年生から8年生にかけて取り組む園芸は、本学園のカリキュラムの特色のひとつです。
これまで園芸の活動は、学園の園庭での作業のほかに、横浜市緑土木事務所の要請を受けて結成した十日市場西田公園愛護会の活動を通じて行ってきましたが、今年度から、本学園に隣接する横浜北部最大の里山である新治市民の森を保全する活動が加わりました。
67.2ヘクタールの広さを誇る新治市民の森は、神奈川県内では、箱根、丹沢に次ぐ生物多様性に富む豊かな森として知られています。横浜市はその一部を里山公園に指定し、にいはる里山交流センターを設置しています。同センターの指定管理者である指定管理者のNPO法人新治里山〈わ〉を広げる会を始め、新治市民の森愛護会などの複数の団体がこの広大な森の保全に取り組んでいます。
新治里山〈わ〉を広げる会のご協力をいただき、今年度より、本学園の7年生(中1)が里山の保全活動を体験しています。生徒たちが手始めとして取り組ませていただいたのは、里山の生態系に侵入してくる外来植物の駆除作業でした。保全に関わるボランティアの高齢化が進むなか、急勾配傾斜地に侵入したセイタカアワダチソウを引き抜く作業はお年寄りにはたいへんです。そんな事情もあり、身軽な7年生にこの仕事が託されました。最初は急斜面にひるんだ生徒たちも、里山型の生物多様性を守るという外来植物駆除の意義について説明を受け、がぜん張り切りました。斜面にとりついて抜いていくコツもすぐにつかみ、成果が目に見えて上がっていく楽しさもあって、仕事はどんどんはかどりました。後日、学校の休み時間に、学校の隣にある公園の斜面に群生したセイタカアワダチソウを抜いている生徒たちの姿がありました。
学園はこれまでも、谷戸の湧水を使った稲作を行ったり(3年生)、竹林の竹を切り出して家を建てたり(同)、豊かな自然を活用した生きた学びを実践してきましたが、今年度から農学を修めた専門の教員が園芸の授業に入ったことで、園芸のカリキュラムを環境保全活動と結び付けてアレンジできるようになったことから、このプロジェクトは実現しました。横浜市から事業委託されている新治里山〈わ〉を広げる会にとっては、学園を教育支援することが教育支援事業の実績につながり、学園の生徒たちには生きた生態系の学びとなり、地域にとっては里山保全につながるという“三方ヨシ”の活動を、来年度以降も継続していく予定です。
里山と公園の保全活動の紹介記事
-
にいはる里山交流センター・つれづれ日誌「ぴかぴかになりました」
※ 新治里山公園に開放されている古民家のすす払いにも7年生が取り組みました
http://www.niiharu.jp/diary/1336 -
タウンニュース緑区版「お助け隊が活動を指導 十日市場西田公園で」
※ 8年生が担当する十日市場西田公園維持活動では外部講師から公園保全を学びました
https://www.townnews.co.jp/0102/2021/06/03/577065.html
-
にいはる里山交流センター・つれづれ日誌「ぴかぴかになりました」
-
SDGsアシストプロジェクト「体験型『暮らしと仕事』学習プロジェクト」
2020年申請の第11期SDGsアシストプロジェクト「循環型社会理解の基礎となる体験型『暮らしと仕事』学習プロジェクト」は、新型コロナウイルス感染拡大のために年度内に予算執行できず、2021年度へと年度を越して終了しました。
このプロジェクトは、前項に記した豊かな里山の環境を生かし、自然と人の営みが循環する里山の学びを「暮らしと仕事」という年間カリキュラムに織り込んで実施しているものです。このカリキュラムを通じて子どもたちは、牧畜、農、住、職人の仕事と生活のつながりを年間にわたって体験しました。このプロジェクトは今後も継続していく予定です。
【参考】
第11期SDGsアシストプロジェクト
横浜シュタイナー学園「循環型社会理解の基礎となる体験型『暮らしと仕事』学習プロジェクト」-
申請書
横浜シュタイナー学園 申請書 -
報告書
横浜シュタイナー学園 報告書
-
申請書
-
イスラム教、イスラム文化の学び
7年生は世界史の時間に行った世界の宗教の学びのなかで、イスラム教について学びました。パキスタン出身のイスラム教徒である英語科のサラ先生に、イスラム教について話していただきました。そのお話を通して、イスラム教は行いを重んじる高いモラルに基づいた宗教であることを知り、生徒たちはイスラム教への関心を深めたようです。お話の後では、多くの質問が飛び交っていました。
-
その他(保護者の活動など)
文部科学省のサステイナブルスクール事業を通じたご縁から、日本学術会議のESDと人材育成の推進分科会・ESD/SDGsカリキュラム小委員会に、学園ユネスコスクールグループのメンバーで卒業生保護者の石原靖久が委員として参加しました。石原は、本職の海洋技術者の仕事の関係から、地球規模の気候変動に関する研究を独自に続けてきました。公開ワークショップ『Future Earth 持続可能な社会の創り手を育てる学び~海の学び、ESD/ SDGsの学びを豊かに~』にも登壇させていただきました。
以上をもって、昨年立てた活動計画の多くが達成されたことをご報告いたします。
以上、2021年度活動概要(年次報告)
来年度の活動計画
横浜シュタイナー学園 2022年度活動計画
次年度も引き続き、〈世界の全体性を人間に取り戻す教育アプローチ〉を意識したホリスティックでサステイナブルな学びを、より豊かに展開します。以下は、とくにESD分野で重点的に取り組もうと考えているプロジェクトになります。
-
横浜北部最大の里山での環境保全活動
2022年度も引き続き、重点的に取り組んでいきます。新たな活動としては、NPOによる谷戸田の保全活動への参加があります。本学園は3年生でも稲作体験をしますが、より専門的な知識と体験によって日本の稲作文化を探求し、里山の環境との関わり、気候変動との関わりなども学びます。現時点では、以下を予定しています。
- 5月:畔付(くろつけ)
- 6月:田ノ草取り
- 10月:稲刈り
また、横浜動物園ズーラシアが保護活動を行っている、横浜ではここにしか確認されていないツチガエルの調査を行うことも検討しています。カリキュラム上、この活動の位置づけが「園芸」であることとのバランスを取りながら計画していきます。
-
体験型『暮らしと仕事』学習プロジェクト
毎年の継続プロジェクトとして、2022年度もしっかりと取り組みます。第13期SDGsアシストプロジェクトにも申請します。
-
カリキュラム研究
「サステイナブルスクール報告書」にまとめた、学年を越えて展開していく「化学・農業実習を通して地球環境を学ぶ」のような独自カリキュラムの研究を行い、継承すべきものがあればしっかり継承できるように学習資料や研修プログラムづくりを目指します。ゆくゆくは、他校とのシェアリングも可能になればと考えています。
-
その他
2021年の計画に準じます。
以上、2022年度活動計画