2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

環境

本校は、広島市の中心部から車で約45分、雄大な西中国山地に囲まれた湯来町に所在している。湯来町は、1500年前に、傷ついた白鷺が傷を癒やしているところをみた村人により発見された「湯来温泉」と、1200年前に発見され、江戸時代には藩主浅野公の湯治場として栄えた「湯の山温泉」の2つの歴史ある温泉に加え、ホタルの飛翔の鑑賞、魚のつかみ取り、鮎釣りや神楽など、豊かな自然や伝統芸能でも知られる町である。
本校は、全校生徒14人の小規模校で、生徒のほとんどが保育園等就学前から小学校6年間をほぼ同一の顔ぶれでのびのびと過ごし、中学校に入学してくる。このような小規模校の良さを生かし、生徒同士はもちろん、生徒と教師、保護者や地域が連携・協働しながら教育活動を展開している。
その本校独自の教育活動の一つとして総合的な学習の時間では、「探究的な学習に取組み、その価値や良さに気づくこと」「自己や他者について理解し、将来や社会との関わりについて自分の考えを持つこと」「学んだことをもとに自己表現し、日常生活で生かすこと」の3つを目標に掲げ、3年間系統的な学習を行い、学びを深めている。特に、最終学年である3学年では、「これからの自分が将来、地域に貢献できることを発信できるようになる」ことを目指し、表1のような様々な体験活動を実施している。

<具体的な活動>
① 水内川水質調査
水質調査・環境調べ学習として、総合的な学習の時間を利用して、地元を流れる水内川の「データの分析と水質階級の判定」と「水内川の水質実態調査」を平成18年から継続して行っている。今年度は、7月19日に調査に向けた事前学習を行い、7月20日の午後、5か所の定点観測を行った。この調査を実施するにあたっては、教職員に加え、地域の環境調査に長年携わるともに、本校の生徒にその調査の意義や調査方法、分析方法について指導してこられた地域の方など、外部講師3名にもご協力を毎年お願いしている。
具体的には、5か所それぞれで、①水温の計測 ②ph(水素イオン指数)及びCOD(化学的酸素要求量)の計測 ③水生生物の採取を行い、バケツで学校に持ち帰った水生生物の種類と個体数を観測、記録した。
調査結果をまとめの報告として9月下旬から10月にかけ、校内で調査結果に関する考察を行い、考察結果を報告にまとめ推敲を繰り返し、論理的思考力の育成を図った。パワーポイント及び掲示物にまとめ、10月の文化祭で全校生徒や保護者を対象に、3年生を中心に調査結果の報告を行った。残念だったのは、本年度は区内2小学校から小学生を招待し、報告を聴いてもらう予定にしていたが、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、小学生の招待は中止となった。校内での展示と地域のふれあいまつりでの展示のみ
を行った。新型コロナ感染症が落ち着いたら、こうした取組を学校関係者だけでなく、地域の方へも知っていただくように広く啓発を行っていきたい。

<水内川での鮎の放流>
5月中旬、水内川漁業協同組合のご協力で、鮎の放流と講義を行った。講義の内容としては、「川や湖に棲んでいる魚」「魚がいる川といない川」「漁協の仕事」等であった。
講義内容の重要性はもちろんであるが、放流するときに交わす生徒のつぶやきへの水内川漁業協同組合の方の生きた答えの素晴らしさを実感する体験であった。

<水内川でのシャワークライミング>
湯来町にある地域交流センターのご協力で毎年実施していたカヌー体験を本年度はシャワークライミングに変更し、7月に実施する予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症のため、9月に変更したが緊急事態宣言のため残念ながら中止となった。
<水内川でのオオサンショウウオの生態調べ>
天然記念物のオオサンショウウオが水内川に生息していることを生徒達は知っているが詳しく調べたことはなかったため、まずは専門に研究をされている先生の話の講義を計画した。しかし、新型コロナウィルス感染症の感染拡大のため、本年度は見送りとなった。来年度は是非実施し、水質調査等の他の活動に繋げていきたい。

来年度の活動計画

令和4年度は、本校の総合的な学習の時間の取組が国際社会共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の取組と重なっていることを踏まえ、SDGs「持続可能な社会について考える~わが町のSDGs~」と題し、湯来町のSDGsに止まらず、SDGsに関係している世界の動きを知り、自分たちが行っていることが、地球環境全体に大きく影響していることを生徒に理解させたいと考えている。
なお、これまで目標としてきた「問題解決学習を通じて《生きる力》と《総合的な視野》を育成し、論理的表現力を身に付けさせる」ことは引き続き重視した上で、国際社会共通の目標であるSDGsと水内川を中心とした「自然界の循環型社会形成」を知るためのいろいろな体験と学習を結び付けながら、湯来地区だけでなく広く他の地域にも発信していきたいと考えている。