2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, エネルギー, 環境, 文化多様性, 平和, 人権, 持続可能な生産と消費, 食育

本校では、子どもと教師が共に身近な地域の自然や社会と関わり、本物に触れる体験を通して、自ら課題を見つけ、今ある知識・技能を生かしながら主体的・協働的に目の前の問題を解決しようと粘り強く取り組んでいる。その中で対象から教科の枠を超えた事柄を総合的に学び、友だちの大切さや自分自身のあり方を見つめ直していく活動を生活科や総合的な学習の時間に位置づけ、そこで表出された子どもの姿をESDの理念で意味づけている。

活動の具体として、ここでは、①「動物とのくらしをつくる活動」(1、2年)②米作りの活動(5年)を取り上げる。

①動物とのくらしをつくる活動(1年、2年)

1年生は、毎年1年生が飼育することになっている烏骨鶏との活動を進めてきた。出会いの場面では、7羽いる烏骨鶏との触れ合いの時間を十分に確保するとともに、担任自らが執筆した教材本「うこっけい」の読み聞かせを行うことで、子どもたちは「ウコッケイさん」への思いを醸成していった。

6月には狭い小屋で暮らす烏骨鶏のための「遊び場作り」の活動を行った。のこぎりで切り出した木材をねじや釘でとめて枠を作り、その上に金網を又釘で取り付けていった。子どもたちが「ウコッケイさんの誕生日」と言う、7月21日(烏骨鶏の日)には、持ち寄った葉物野菜や果物をあげながら、枠を組んでようやく完成した遊び場の中で自由に動き回る烏骨鶏と一緒に遊ぶことができ、満足そうな子どもたちの姿が見られた。

秋に行われた音楽会では、担任と子どもたちとで作った『ウコッケイさん』という合唱奏を、思いを込めて演奏することができた。また、山ノ内の厳しい冬に備えて小屋の冬囲いの作業を仲間と協力して行った。

このような活動を通し、子どもたちは「命の大切さ」「友だち同士で協力する良さ」「思いを表現することの楽しさ」を味わい、学んでいった。

2年生は、1年生の秋から羊の「ゆき」との生活を営んできた。コロナでの休校明け、ゆきが自由に過ごせる遊び場を作りたいと願いを持った。「遊び場をどこにするか」の話し合いの場面では、最初は「いつも近くで見ていたいから教室の前がいい」と言っていた子どもたちであったが、話し合っていく中で「ゆきにとって一番いい場所はどこだろう」という羊の視点で考え、場所を探し求めるようになった。朝、2時間目休み、昼休みでは日光の当たり方が違うこと、場所によって風の通り道があることに子どもたちは気づいた。そして「場所によってどのぐらい気温の差があるのか」と、温度計で調べたり、自分で実際にその場で過ごしたりする活動を通して、羊にとって最適な場所を見つけ、そこに遊び場を作ることができた。

秋、ゆきの出産を願う子どもたちは、生命誕生の仕組みや羊の出産について学び、種付けを行うことにした。そして、秋からの発情期に合わせて牧場から雄の羊を借り、交尾の瞬間を見ることができた。上手くいけば来春に生まれてくる子羊との生活に心を躍らせている。

また、5月の休校中に刈られたゆきの毛をきれいに洗いフェルトボール作りに取り組んだ。羊毛を丸めてボール状にし、デコレーションを施したり、ストラップを付けたりして、えさの牧草を買うための商品作りを行った。売上金で当分のえさ代を賄うことができることが分かり、子どもたちは満足そうであった。

羊との生活を通し、解決すべき課題や子どもたちの願いが生まれ、そのたびにどうしたらいいのかとクラスみんなで話しあい、解決方法を考え、力を合わせて解決してきた子どもたち。そして、命と向き合う毎日から、命の尊さ、責任感、喜びを体を通して感じとっていく子どもたちであった。

 

②米作りの活動(5年)

5年生は、毎年取り組んでいる米作りに取り組むことになった。しかし、毎年使っている学校脇の田んぼは小さく、長年使用した土の状態も決していいものではなかった。「せっかく作るならおいしい米を作りたい、食べたい!」という子どもの願いから、担任は、地域の方々の協力を得て、学区内にある須賀川地区の休耕地を新たに開墾し、田んぼを作って子どもたちと共に米作りに挑戦することにした。五月末、水が張られた田んぼにおそるおそる足を入れる子どもたち。「きゃー、冷たい!」「土の中って気持ちいい!」とあちこちから悲鳴と歓声があがる。最初は気持ちが悪かった泥も、そのやわらかさや温かさ、足を包み込む感覚など、しだいにその感触を楽しむようになっていった。

子どもたちを夢中にさせたのは、ゲンゴロウ、オタマジャクシ、アメンボなど水の中の生き物だった。これほどまでにこの田んぼに様々な生き物がいるのは、肥料も農薬も入っていない手つかずの自然であることが大きかった。生き物を教室に持ち帰り、生き物について調べていく中で、無肥料・無農薬が生き物たちの生活を豊かにし、稲が育つ環境もよくなっていくことがわかった。地域の方からこのまま無肥料・無農薬で育てられそうだと聞いた子どもたちは、「安全じゃん」「無農薬の方が絶対おいしいでしょ!」と、自分たちの米を無農薬・無肥料で育てたいと願うようになっていった。「絶対においしい米を作りたい。食べたい」という願いを強くしていった子どもたちであった。

そして、地域の方々に支えられながら子どもたちが育てた米は、全国食味鑑定コンクールで見事金賞を受賞した。「金賞ってすごい!」「どんな味なんだろう。早く食べてみたいな。」と全国に認められた米の味への興味関心が高まっていった。

須賀川地区で米作りをすることを通して、地域に残る豊かな自然を肌で感じ、その良さに気づいたり、地域に暮らす人々とのつながりの中で自分自身のあり方を考えたりする子どもたちであった。

来年度の活動計画

令和3年度は、本校の目指す子ども像「自ら感じ 自ら考え 自ら動き出す子ども」を念頭に、児童と教師はもちろん、保護者、地域の方々と共にESDの推進を図っていきたい。それには、子どもと教師がくらしを創る生活科や総合的な学習の時間をベースに、子どもたちの主体的な学びを日々の授業実践として積み重ねていく。

また、各学級の生活科や総合的な学習の時間において中核活動を中心にしたESDカレンダーを年度当初に作成し、一年間の活動の見通しが持てるようなストーリーマップを作成していくようにしていきたい。カレンダーの作成に当たっては、これまで作成してきたカレンダーの内容を参考にしながら、その年の担任と子どもとのやりとりの中で計画を練っていくようにしたい。

そして、ユネスコエコパーク内にある学校としての意味を全体計画に位置づけていきたい。

さらに、情報機器を活用しながら同じユネスコスクールとして活動する町内の小中学校との交流を広げ、深めていきたいと考えている。