2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 環境, 食育, その他の関連分野

本園では、「調和のとれた教育、幼児の主体性、自然と関わりながら」を教育理念とし、園庭の豊かな自然や周囲の里山林と主体的に関わり、生活や遊びに取り入れ、学びに繋げていこうとする一連の活動を、ESD「里山教育」として位置づけ、実践を通して全人格的な発達を促し、生きる力の基礎を育むことを目標としている。
新型コロナウィルスにより活動の制限を強いられる1年であったが、園児の学びや成長の歩を止めることなく、工夫をしながら活動を行った。昨年同様に、 ①「食育」、「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「稲作、畑作」、②「環境教育」の活動として「里山再生」、③「生物多様性」の活動として「ムササビとの関わり」を行った。

①稲作、畑作
園内の田畑を使い、野菜、麦、稲を育てる中で、土作りから園児が主体的に関わり、給食の野菜くず、稲作で生じた籾殻や米糠、飼育ヤギの糞、乗馬クラブの馬糞、里山林の腐葉土など、様々な有機肥料をすき込み、園児と共に土壌を作った。
・畑では園児が種をまき、雨水タンクの雨水や井戸水で潅水し、毎日世話をして育てた野菜・麦を収穫し、給食の材料となった。昨年までは園児の調理保育に繋げていたが、コロナ禍により給食で食す形に絞った。残った野菜くずは畑の肥やしとなり、食の循環について体験を通して学んだ。
・年長児は園庭の棚田で8ヶ月間かけて稲作を行う。1から10までできるだけ園児が自ら行うことで、食の大切さ、汗水流し物事を成すことの大切さを知る。
・田んぼの生き物が棲みやすい環境を整えるため、田んぼ、小川ビオトープの清掃・整備を子ども達と行った。特に今年度は、小川でゲンジボタルの生育を促すため、年長が陶芸の型で使用した石を小川沿いに敷き詰めコケの生育を促した。更に生き物の採取、飼育、観察等を通して、生命の尊厳とつながりを学んだ。
・脱穀、籾すり、精米作業は、千歯扱き、唐箕、回転足踏み脱穀機など、古くから使われてきた農機具を使用したり、弥生時代からの手作業で行うなど、幼児にとってしくみが理解しやすい原始的手法に特化し、日本古来の稲作について体験を通して知った。

  

 

   

 

②子どもの森づくり(里山再生)
・周囲の里山林が持続可能であるために、コナラ、クヌギ等のドングリを拾い、園庭各所に「ドングリ畑」を作って育てた。特に今年度はドングリが豊作であったため、より多くの場所に播種することができた。
・例年は東日本大震災の津波で消失した東北の森を再生するため、東北の保育園児が拾ったドングリを送ってもらい、本園の年少が園庭で育て、定植可能な高さまで育った苗を東北に送り植樹してもらうのだが、今年度は育った苗を園から東北に送るのみとした。

③ムササビとの関わり
昨年度まで経緯を踏まえ、今年度も年長の活動として継続的にムササビの観察を行ってきた。特に今年度は、年長が観察中に目の前で巣箱から飛び出して木をのぼり、滑空する姿に遭遇し感動に包まれる場面もあった。年長児にとってムササビがより身近な存在となったことで、巣箱の中でどのように過ごしているかということに興味を持ち、NHKの取材協力の下、巣箱の中を撮影するカメラを設置することになった。

園児が生き物に関心を持ち、生き物にとって棲みやすい環境について考え、行動に移していく一連の活動から、「学びに向かう姿勢」、「持続可能な社会の担い手」としての価値判断に繋がる姿勢が見られた。

 

来年度の活動計画

・2021年度も、これまでの活動を継続、発展させていく。特に報告に挙げた3点の活動は、自然や生き物を対象としているため、興味関心が年々深まり、園児の「学びに向かう姿勢」が更に促進されるよう、主体的な関わりを基本としながらも、地域や専門的な立場の方にお越し頂き、指導、サポートして頂けるようにする。

・引き続き、ユネスコスクールを中心に、国内外の幼稚園、学校等と連携を深め、教職員のESDに対する理解促進、保育の質の向上、園児の交流を図る。