2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 環境, 食育, その他の関連分野

本園では、「調和のとれた教育、幼児の主体性、自然と関わりながら」を教育理念とし、園庭の豊かな自然や周囲の里山林と主体的に関わり、生活や遊びに取り入れ、学びに繋げていこうとする一連の活動を、ESD「里山教育」として位置づけ、実践を通して全人格的な発達を促し、生きる力の基礎を育むことを目標としている。
引き続き、新型コロナウィルスにより活動制限を強いられる1年であったが、園児の学びや成長の歩を止めることなく、工夫をしながら活動を行った。昨年同様に、 ①「食育」、「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「稲作、畑作」、②「環境教育」の活動として「里山再生」、③「生物多様性」の活動として「ムササビとの関わり」を行った。また、これに加え、④「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「養蚕」、⑤「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「陶芸」を、ESDの活動として報告する。

①稲作、畑作
園内の田畑を使い、野菜、麦、稲を育てる中で、土作りから園児が主体的に関わり、給食の野菜くず、稲作で生じた籾殻や米糠、飼育ヤギの糞、乗馬クラブの馬糞、里山林の腐葉土など、様々な有機肥料をすき込み、園児と共に土壌を作った。
・畑では園児が種をまき、雨水タンクの雨水や井戸水で潅水し、毎日世話をして育てた野菜・麦を収穫し、調理保育や給食の材料となった。残った野菜くずは畑の肥やしとなり、食の循環について体験を通して学んだ。
・年長は園庭の棚田で8ヶ月間かけて稲作を行う。1から10までできるだけ園児が自ら行うことで、食の大切さ、汗水流し物事を成すことの大切さを知る。
・田んぼの生き物が棲みやすい環境を整えるため、田んぼ、小川ビオトープの清掃・整備を子ども達と行った。小川でゲンジボタルの生育を促すため、年長が陶芸の型に使用した石を小川沿いに敷き詰めコケの生育を促した。更に生き物の採取、飼育、観察等を通して、生命の尊厳とつながりを学んだ。
・脱穀、籾すり、精米作業は、千歯扱き、唐箕、回転足踏み脱穀機などの古農具を使用したり、弥生時代から行われている手作業で行うなど、幼児にとってしくみが理解しやすい原始的手法に特化し、日本古来の稲作について体験を通して知った。

②子どもの森づくり(里山再生)
・周囲の里山林が持続可能であるために、コナラ、クヌギ等のドングリを拾い、園庭各所に「ドングリ畑」を作って育てた。昨年に続き、今年もドングリが豊作であったため、より多くの場所に播種することができた。
・東日本大震災の津波で消失した東北の森を再生するため、東北の保育園児が拾ったドングリを送ってもらい、園庭で育て、定植可能な高さまで育った苗を東北に送り植樹してもらった。送り状、礼状等のやりとりにより、心の触れあいも見られた。

③ムササビとの関わり
今年度も年長の活動として、園庭の森の広場に棲息するムササビの観察と環境作りを行ってきた。昨年度の年長が新たに6つの巣箱を制作し、園内の木々に設置した。また、NHKの取材協力の下、巣箱に付けられたカメラによって、巣箱内でのムササビの様子を園児がリアルタイムで観察することができるようになった。これにより愛着を持って関心を寄せ、ムササビについてより詳しく知りたいと思うようになった。そこで、外部講師にムササビの生態について詳しく教えて頂き、理解を深めることができた。例えば、天敵のテンから身を守り子育てができるようにするため、クラスの1人1人が考え、講師にヒントを頂きながら様々な対策を行った。同時にすべての生き物が種を残すために一生懸命生きていることを感じ、食物連鎖や生物多様性についても理解を深めるきっかけになった。園児が生き物に関心を持ち、生き物にとって棲みやすい環境を考え、行動に移していく一連の活動から、「学びに向かう姿勢」や、「持続可能な社会の担い手としての価値判断に繋がる姿勢」が育っていく様子が確認できた。

④養蚕

例年、年少から年長の全クラスで蚕を育てているが、今年度は年中児が繭から座繰り器で糸を取り、灯籠を作った。「織物の町」である八王子市の歴史・文化に触れる活動でもあるが、蚕を通して生き物への愛着を深め、慈しみの気持ちを育むと共に、命を頂きながら私達の生活に欠かせない衣類や生活用品が作られていることを一連の体験を通して知り、感謝の気持ちを持つことができた。

⑤陶芸

園の周辺地域一帯は、古代の窯の出土数が国内一であり、良質の粘土が採れる。以前は製品の粘土を使用して年長が陶芸を行っていたが、園の土質の良さを知ってからは園庭の土を使うようになった。
今年度は園庭の土を掘り、年長が地層を観察しながら粘土として使えそうな土を採取した。これを細かく砕き、川石を型にして皿の形に成形、焚き火にかけ焼成した。普段から泥団子作りなどをして遊んでいる園庭の土が、手間暇を掛けることで皿になっていく過程を楽しみ、関心を深めていく様子が見られた。体験を通して古の文化に触れながら、想像力、創造力を育むことができた。

 

来年度の活動計画

・2022年度も、これまでの活動を継続、発展させていく。特に報告に挙げた5点の活動は、自然や生き物を対象としているため、興味関心が年々深まり、園児の「学びに向かう姿勢」が更に促進されるよう、主体的な関わりを基本としながらも、地域や専門的な立場の方にお越し頂き、指導、サポートして頂けるようにする。

・引き続き、ユネスコスクールを中心に、国内外の幼稚園、学校等と連携を深め、教職員のESDに対する理解促進、保育の質の向上、園児の交流を図る。