2018年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 環境, 食育, その他の関連分野

本園では、「調和のとれた教育、幼児の主体性、自然と関わりながら」を教育理念とし、園庭の豊かな自然や周囲の里山林と主体的に関わり、生活や遊びに取り入れ、学びに繋げていこうとする一連の活動を、ESD「里山教育」として位置づけ、実践を通して全人格的な発達を促し、生きる力の基礎を育むことを目標とした。
具体的には、 ①「食育」、「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「稲作、畑作」、②「環境教育」の活動として「里山再生」、③「生物多様性」の活動として「ムササビとの関わり」を行った。

①稲作、畑作
園内の田畑を使い、野菜、麦、稲を育てる中で、土作りから園児が主体的に関わり、家庭や給食の野菜くず、稲作で生じた籾殻や米糠、飼育ヤギや野ウサギの糞、地域乗馬クラブの馬糞、里山林の腐葉土など、様々な有機肥料をすき込み、園児が土壌を作った。
・畑では園児が種をまき、雨水タンクの雨水や井戸水で潅水し、毎日世話をして育てた野菜・麦を収穫し、園児が調理をして食したり、給食の材料となった。また、残った野菜くずは畑の肥やしとなり、食の循環について体験を通し学んだ。
・年長児は園庭の棚田で8ヶ月間かけて稲作を行う。1から10まで園児が自ら行うことで、食の大切さ、汗水流し物事を成すことの大切さを知る。
・田んぼの生き物が棲みやすい環境を整えるため、田んぼ、小川ビオトープの清掃・整備を日常的に子ども達が行っていく。更に生き物の採取、飼育、観察等を通して、生命の尊厳とつながりを学ぶ。
・脱穀、籾すり、精米作業は、江戸時代から使われてきた農機具を使用したり、弥生時代の手法で作業を行い、日本古来の稲作について体験を通して知る。
・地域の「みなみ野自然塾」塾長の指導の下、保護者有志の会「鉄腕クラブ」が、田んぼの畦塗り作業や稲作のサポートを行う。

②里山再生
・行政と連携し、園の周囲の里山林を再生するため、部分伐採し萌芽更新を促した。この伐採木を使用して、親子で「森の精」を制作し、子ども達を見守る存在として園内各所に設置した。
・里山林が持続可能であるために、コナラ、クヌギ等のドングリを拾い、園庭各所に「ドングリ畑」を作って育てた。
・東日本大震災の津波で消失した東北の森を再生するため、東北の保育園児が拾ったドングリを送ってもらい、本園の年少が園庭で育て、定植可能な高さまで育った苗を、東北に送り、植樹をしてもらう。

③ムササビとの関わり

園の周囲の森にムササビが棲んでいることを知った年長児は、ムササビについて調べ、園庭の「森の広場」で安全に生活できるよう、巣箱を6個設置した。半年後からムササビが巣箱に出入りをしたり、一定期間棲みつくようになった。愛着を持った年長児の興味関心を深めるため、大学附属高校の「ムササビ博士」にお越し頂き、その生態について教えて頂いた。学んだことをポスターにまとめて発表したり、「ムササビの歌」を作って、全園児、保護者の前で披露したり、NHK番組で発表した。ムササビを驚かせないよう、恒例となっている夏祭りの打ち上げ花火も取りやめた。
園児が生き物に関心を持ち、生き物にとって棲みやすい環境について考え、行動に移していく一連の活動から、「学びに向かう姿勢」、「持続可能な社会の担い手」としての価値判断に繋がる姿勢が見られた。

来年度の活動計画

・31年度も、これまでの活動を継続、発展させていく。特に30年度3点の活動は、自然や生き物を対象としているため、興味関心が深まり、園児の「学びに向かう姿勢」が更に促進されるよう、主体的な関わりを基本としながらも、地域や専門的な立場の方にお越し頂き、指導、サポートして頂けるようにする。

・ユネスコスクールを中心に、国内外の幼稚園、学校等と連携を深め、教職員のESDに対する理解促進、保育の質の向上、園児の交流を図る。