2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 環境, その他の関連分野

本園では、「調和のとれた教育、幼児の主体性、自然と関わりながら」を教育理念とし、園庭の豊かな自然や周囲の里山林と主体的に関わり、生活や遊びに取り入れ、学びに繋げていこうとする一連の活動を、ESD「里山教育」として位置づけ、実践を通して全人格的な発達を促し、生きる力の基礎を育むことを目標とした。

具体的には、①「食育」、「環境教育」、「伝統文化教育」の活動として「稲作、畑作」、②「環境教育」の活動として「里山再生」、③「生物多様性」の活動として「ムササビとの関わり」を行った。

①稲作、畑作

園内の田畑を使い、野菜、麦、稲を育てる中で、土作りから園児が主体的に関わり、家庭や給食の野菜くず、稲作で生じた籾殻や米糠、飼育ヤギや野ウサギの糞、地域乗馬クラブの馬糞、里山林の腐葉土など、様々な有機肥料をすき込み、園児が土壌を作った。

・畑では園児が種をまき、雨水タンクの雨水や井戸水で潅水し、毎日世話をして育てた野菜・麦を収穫し、園児が調理をして食したり、給食の材料となった。また、残った野菜くずは畑の肥やしとなり、食の循環について体験を通し学んだ。

・年長児は園庭の棚田で8ヶ月間かけて稲作を行う。1から10まで園児が自ら行うことで、食の大切さ、汗水流し物事を成すことの大切さを知る。

・田んぼの生き物が棲みやすい環境を整えるため、田んぼ、小川ビオトープの清掃・整備を日常的に子ども達が行っていく。更に生き物の採取、飼育、観察等を通して、生命の尊厳とつながりを学ぶ。

・脱穀、籾すり、精米作業は、江戸時代から使われてきた農機具を使用したり、弥生時代の手法で作業を行い、日本古来の稲作について体験を通して知る。

・地域の「みなみ野自然塾」塾長の指導の下、保護者有志の会「鉄腕クラブ」が、田んぼの畦塗り作業や稲作のサポートを行う。

②里山再生

・行政と連携し、園の周囲の里山林を再生するため、部分伐採し萌芽更新を促した。この伐採木を使用して、親子で「森の精」を制作し、子ども達を見守る存在として園内各所に設置した。

・里山林が持続可能であるために、コナラ、クヌギ等のドングリを拾い、園庭各所に「ドングリ畑」を作って育てた。

・東日本大震災の津波で消失した東北の森を再生するため、東北の保育園児が拾ったドングリを送ってもらい、本園の年少が園庭で育て、定植可能な高さまで育った苗を、東北に送り、植樹をしてもらう活動を継続的に行っている。

③ムササビとの関わり

園の周囲の森にムササビが棲んでいることを知った年長児は、ムササビについて調べ、園庭の「森の広場」で安全に生活できるよう、巣箱を6個設置した。半年後からムササビが巣箱に出入りをしたり、一定期間棲みつくようになった。愛着を持った年長児の興味関心を深めるため、大学附属高校の「ムササビ博士」にお越し頂き、その生態について教えて頂いた。学んだことをポスターにまとめて発表したり、「ムササビの歌」を作って、全園児、保護者の前で披露した。ムササビを驚かせないよう、恒例となっている夏祭りの打ち上げ花火も取りやめた。

観察用に設置した暗視カメラに、親のムササビが子育てをしている様子が見られたが、その後、隣接の森からテンがやってきてムササビの巣箱を襲おうとする様子がカメラで捉えられたため、年長児は、ムササビ親子を守る方法を考え、木にトタンを巻いてテンが登りにくくする試みをおこなった。また、食痕や糞を確認するため、ビニール傘を巣箱の下に設置して観察しやすいようにした。数ヶ月後、ムササビの子どもが大きくなり、巣箱から顔を出す様子が見られた。

園児が生き物に関心を持ち、生き物にとって棲みやすい環境について考え、行動に移していく一連の活動から、「学びに向かう姿勢」、「持続可能な社会の担い手」としての価値判断に繋がる姿勢が見られた。

来年度の活動計画

・2020年度も、これまでの活動を継続、発展させていく。特に報告に挙げた3点の活動は、自然や生き物を対象としているため、興味関心が年々深まり、園児の「学びに向かう姿勢」が更に促進されるよう、主体的な関わりを基本としながらも、地域や専門的な立場の方にお越し頂き、指導、サポートして頂けるようにする。

・ユネスコスクールを中心に、国内外の幼稚園、学校等と連携を深め、教職員のESDに対する理解促進、保育の質の向上、園児の交流を図る。