2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 環境, 文化多様性, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, 持続可能な生産と消費

本校は学校全体で、持続可能な社会の担い手を育成する教育(ESD)の理念を、総合的な探究(学習)の時間を中心に、各教科・課外活動などに積極的に取り入れている。3年間のテーマは「温郷知新~地元に学び、世界を舞台に活躍できる人材の育成」である。「温郷知新」とは、本校の造語であり、「ふるさとをたずね、あたらしきをしる」という意味である。また、”Think Locally Act Glabally”というテーマも設定している。郷土への愛着を高め、異なる文化や価値観をもつ集団のなかでアイデンティティを確立し、持続可能な社会づくりに取り組む力を育むことを目的としている。具体的には、①地域魅力発見・課題解決探究に関わる活動、②世界遺産の保全と持続可能な質の高い観光地づくりに関わる活動、③多文化共生社会の実現に関わる活動を軸に、幅広い活動を行っている。

① 地域魅力発見・課題解決探究に関わる活動

入学後すぐに、SDGsの観点から、持続可能な地域を実現するために個々人がどのような行動をとるべきかを学ぶため、「地域の環境・防災・地域創生・地域福祉・地域医療」をテーマに、探究活動とプレゼンテーションを行った。この活動を通して、地元への誇りを醸成するとともに、調査することの楽しさや地域の人々とのつながりの大切さを実感し、課題探究に向けてのモチベーションを高める効果があった。その後、今年は新型コロナウイルス感染症対策を徹底するため、グループ学習・フィールドワークを実施せず、個人個人が「地域が直面する課題解決」「地域の強みを活かすための方策」を提言するため、課題発見・課題解決型の探究活動に取り組んだ。また、和歌山県をはじめ地域のさまざまな組織・企業などの協力・支援のもと、リモート講演会などを実施した。最終プレゼンテーションで地域の課題解決策を提言することで、地域社会と自らが直接結びついており、地域の中での自己有用感を持たせることを目的をしている。なお、立命館大学経済学部・田辺市・本校が連携して課題研究を進めており、高大官連携を実現している。

② 世界遺産の保全と持続可能な質の高い観光地づくりに関わる学習

ユネスコ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である熊野参詣道(熊野古道)に焦点をあて、世界遺産の保全と活用について学習を深めている。具体的には、保全活動では和歌山県世界遺産センター及び管理団体である田辺市の指導のもと、世界遺産保全活動(道普請)を行った。一方、活用面では、和歌山県世界遺産センター所長による「地域観光ゼミ」の開講や、「世界遺産の地和歌山の魅力」と題する講演会を実施し、積極的な観光を通した活用など、持続可能な地域社会に向けた取り組みが多岐にわたって実施されていることを学んでいる。また、新型コロナ収束後の外国人誘客に向けて、世界の人々が熊野古道や自分たちの地域に何を求めているのか、世界からみて当地域の魅力は何なのか、などのテーマについても継続的に調査している。一連の活動を通して、生徒一人ひとりが世界遺産の意義、ユネスコ憲章に掲げられる文化交流の大切さ、観光は平和の産業であること、などを学んでいる。

③多文化共生社会の実現に関わる学習

外国人観光客を対象とした活動や調査の中から、国内に定住している外国出身の観光客が一定数いることが分かり、田辺市を中心に在住する外国人にも焦点を当てて活動をしている。本校生徒が田辺市生涯学習課・国際交流センターとともに企画運営を行う外国人との交流イベント「T-cafe ~tanabeでTomodachiをTsukuro~」も4年目を迎えた。今年は対面式イベントに代わり、2020年10月にリモート形式で実施した。今回、県内のユネスコスクールである県立星林高校・県立串本古座高校になども参加を呼びかけ、各校の国際理解・地域連携等についての意見交換を行った。また、地域に住む外国人をアドバイザーとして、外国人向けの地図作りや、当地域の特産品である梅を外国人に広めるために、外国人向けの梅商品パッケージづくりを行っている。こうした活動を行うことで、生徒は日本人では気づかない外国人の視点を理解でき、多文化共生社会に向けた視点を学んでいる。

来年度の活動計画

SDGsの観点からESD教育を推進するために、以下のような活動を行う予定である。

① 2020年度に引き続き、在留外国人との交流イベント「T-cafe」などを開催し、多文化共生社会の実現に向けた生徒・地域住民との輪を広げる(田辺市との協働)。

② 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を通した世界遺産学習を行い、ユネスコと平和、文化と平和について考える。また、人類の宝としての世界遺産を後世に継承するために、世界遺産保全活動を継続的に行う。

③ 総合的な探究の時間では、持続可能な地域となるために、「地域創生・防災・環境・医療福祉」をテーマに地域の課題研究に取り組み、生徒一人ひとりにSDGsの視点をもつよう外部機関と協働し、学習をすすめる。

④ 「紀伊半島大水害」「東日本大震災」から10年の節目を迎えるにあたり、今一度、高校生が取り組む防災についての学習をすすめる。

⑤ 紀南ユネスコ協会や和歌山ユネスコ連絡協議会と連携し、ユネスコ及びユネスコスクールの取り組みの普及活動を行う。