2022年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 持続可能な生産と消費, ジオパーク

本校の教育目標である「合理的な思考・豊かな情操・積極的な行動」に基づき、ユネスコスクールが重点的に取り組む3つの分野を通して、21世紀を力強く、積極的に、心豊かに生きていく力を育成することを目標とした。

① 総合的な探究の時間における取り組み

高校3年間を通したテーマは、「温郷知新」「Think Locally Act Globally」である。これらは本校の造語である。前者は、「ふるさとをたずね、あたらしきをしる」という意味である。また、後者は「地元に学びつつ、世界を視野に入れて行動しよう」という意味である。

第一学年は、「地域を深く知ること」をテーマに探究学習を行った。まず、「地域の魅力と課題を探究する」というテーマのもと、一連の探究のプロセスを体験した。続いて、「身近な地域をフィールドとしたスタディツアープランを作成する」という活動を行った。その際、自らが提案するスタディツアープランが、地域課題の解決やSDGs達成とどのように関わるのかという視点を重視し、ツアーの意義やストーリー性を明確にすることを目標に定めた。また、外部講師を招聘し、地域の課題、観光(魅力)、防災、地方創生など、地域に関する多種多様なテーマの講演会を開催した。

第二学年は、「地域と世界とのつながり」をテーマに探究学習を行った。和歌山県は全国有数の「移民県」であり、明治時代以降、多くの県民が世界各国へ移住した。世界各国に「和歌山県人会」が組織され、現在もコミュニティを形成し、活動している。そこで、地域から世界に飛び出した先駆者である移民について学習し、ブラジル和歌山県人会とオンラインで交流をした。また、JICA関西和歌山デスクと連携し、サモアで国際貢献活動に取り組まれた体験談をお話していただいた。その他、SDGsに関連するレポートの作成にも取り組んだ。

第三学年は、「自己の生き方・在り方を探究する」をテーマに探究学習を行った。自己の興味・関心や特性を再確認しながら、進路について深く考え、自らが地域社会・国際社会にどのように貢献するのかを文章でまとめ、クラス文集を作成した。

② SEEKER(生徒国際委員会)の取り組み

ユネスコスクールとしての活動に専門的に取り組む生徒有志の委員会(SEEKER、シーカー)を組織し、ESDの理念にもとづく活動を行った。「持続可能な地域づくりに貢献する」「熊野の地から世界をみつめる」をテーマに、地域連携・国際交流に取り組んだ。

≪地域連携≫

「世界遺産チーム」を結成し、田辺市文化振興課のご指導のもと、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である熊野古道の道普請を実施した。そして、学習・活動の成果をまとめ、ユネスコスクールである岩手県の盛岡中央高等学校とオンラインで交流した。岩手県が有する世界文化遺産について学べたり、他校の取り組みを知ることができ、県外の世界遺産に対する興味・関心が高まる貴重な交流会となった。

他には、「U-MAKER」というチームを結成し、地元農家と連携して梅商品の開発に取り組んだ。「和歌山の梅を世界へ」をテーマに、主に外国人観光客をターゲットとした梅干しの商品を開発し、パッケージデザインも考案して商品化を実現した。

≪国際交流≫

大阪観光大学と連携し、東南アジア出身の留学生との交流会を開催した。多言語を話せる留学生との交流に本校生徒は大きな刺激を受け、外国語を学ぶことへの意欲をさらに高めるとともに、他国への興味・関心を喚起する機会となった。

また、「移民学習チーム」を結成し、和歌山県中南米交流協会および和歌山大学観光学部と連携して、和歌山から世界へ移住した先人たちについて探究した。ブラジル和歌山県人会の皆様にオンラインでインタビューをし、11月に田辺市で開催された移民に関するシンポジウムで探究成果を発表した。地域と世界とのつながりを実感し、パートナーシップを持続させていくことの重要性を認識する機会となった。

今後、2023年1月にはペルー和歌山県人会とのオンライン交流会、3月には中国・四川省の北京第二外国語学院成都附属高校とのオンライン交流会を計画している。草の根の国際交流が、他国に対する先入観・固定観念を打破することにつながり、平和の礎になることを期待している。

 

以上のように、本校では「総合的な探究の時間」における探究活動と、生徒有志による委員会活動とを中核にしながら、持続可能な社会の担い手の育成やSDGsの達成を目標とするESDに取り組んでいる。

 

来年度の活動計画

基本的には2022年度の取り組みを継承しつつ、生徒の主体性を重視しながら、以下の活動を行う予定である。

① 世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を教材とする世界遺産学習を行い、ユネスコの理念や文化遺産を尊重することの大切さを学ぶ。また、人類の宝としての世界遺産を後世に継承するため、世界遺産保全活動を行うとともに、世界遺産を活用した持続可能な地域づくりについて探究する。

② 2022年度にユネスコスクール事務局のサポートにより実現した盛岡中央高等学校との交流会を継続したい。今年度の交流会で、岩手と和歌山は共通の地域課題に直面していることが確認できたので、相互に学び合いながら、世界遺産の保全と活用や地域活性化について探究したい。

③ 総合的な探究の時間において、1年次は持続可能な地域づくりの視座に立った地域探究、2年次はSDGsと関連付けたグローバル探究、3年次は地域社会や国際社会への貢献という視点からキャリア探究を行う。また、行政機関・民間企業・大学・地域の民間団体などの外部機関と連携した講演会を企画し、生徒の視野を広げたい。

④ 民間企業や大学等と連携し、持続可能な地域づくりへの貢献をテーマとした活動を行う。具体的には、地元にオフィスを構えるIT企業と連携した植林活動などを予定している。

⑤ 対面形式だけではなく、オンラインツールも駆使しながら国際交流の機会を多く設ける。国際交流を通じて、異文化を尊重する態度を養い、人類の平和と友好、パートナーシップの大切さを学び、心の中に平和の砦を築くための取り組みを推進する。