2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 持続可能な生産と消費

本校は、「合理的な思考・豊かな情操・積極的な行動」を学校理念として、ユネスコスクールが重点的に取り組む3つの分野を通して、21世紀を力強く、積極的に、心豊かに生きていく力を育成することを目標とした。

① 総合的な探究の時間における取り組み

高校3年間を通したテーマは、「温郷知新」「Think Locally Act Globally」である。これらは本校の造語である。前者は、「ふるさとをたずね、あたらしきをしる」という意味である。また、後者は、「地元に学びつつ、世界を視野に入れて行動をしよう」という意味である。

第一学年は、「地域を深く知ること」をテーマに探究学習を行った。まず、「地域の魅力を知る」という小テーマのもと、探究のプロセスを体験した。次に、「身近な地域をフィールドとしたスタディツアープランを作成する」という活動を行った。その際、自らが提案するスタディツアープランが、地域課題の解決やSDGsの達成とどのように関わるのかという視点を重視した。また、外部講師を招聘し、地域の観光、地域の防災、地域の食と農業、地域の産業、地域経済の活性化などのテーマに沿った講演会を実施した。

第二学年は、「地域と世界とのつながり」をテーマに探究学習を行った。和歌山県は全国有数の「移民県」であり、明治時代以降、多くの県民が世界各国へ移住した。世界各国に「和歌山県人会」が組織され、現在もコミュニティを形成し、活動している。そこで、地域から世界に飛び出した先駆者である移民について学習をし、アルゼンチン和歌山県人会・シアトル和歌山県人会とオンラインで交流をした。また、民間企業やJICAと連携し、海外で国際貢献に取り組まれている方による講演会を実施した。その他、SDGsに関連したレポートの作成にも取り組んだ。

第三学年は、「自己の生き方・在り方を探究する」をテーマに探究学習を行った。将来、自らが地域社会・国際社会にどのように貢献するのかを深く考え、文章のまとめ、成果物としてのクラス文集を作成した。また、和歌山県世界遺産センターと連携し、和歌山が世界に誇る文化遺産や和歌山の魅力などについて学ぶとともに、和歌山が抱える課題を認識したうえで、持続可能な地域づくりに参画することの重要性を学んだ。

② SEEKER(生徒国際委員会)の取り組み

ユネスコスクールとしての活動に専門的に取り組む生徒有志の委員会(SEEKER、シーカー)を組織し、ESDの理念にもとづく活動を行った。

まず、ESD放課後講座を計10回開講した。目的は、持続可能な地域づくりの担い手を養成することである。6回は和歌山県世界遺産センター職員による講座であり、世界遺産を含む地域の観光資源の活用とPR、地域経済の振興などの手法を学んだ。4回は地元にオフィスを構える世界的に有名な大手IT企業の職員による講座であり、ワーケーションの促進やデジタルサービスの提供・普及など、IT企業が持続可能な地域づくりに貢献できる可能性等について学んだ。

次に、和歌山県世界遺産協議会が主催する次世代育成事業に参加した。世界遺産講座を受講した後、熊野古道の保全活動(道普請)を行った。生徒にとって、世界文化遺産に触れることができ、その価値を実感する貴重な体験であった。

また、和歌山県が2020年に中国・四川省と「交流を発展させるための覚書」を締結したことを契機に、四川省の北京第二外国語学院成都附属高校とオンライン交流会を実施した。生徒同士が相互に発表および質疑応答をし、友好的に交流を深めることができた。国際交流が、他国に対する先入観・固定観念を打破することにつながり、平和の礎となることを実感した。

続いて、2021年度わかやまユネスコ・コングレスに発表者として参加した。本校のユネスコスクールとしての活動を報告するとともに、生徒代表3名がSEEKERの様々な取り組みを具体的に紹介した。紹介したプロジェクトは、上記の内容以外に、「福島県立磐城高等学校との防災交流会(オンライン)」「外国人向け観光地図(田辺市)づくり」「外国人向けの梅商品(梅干し)の開発」である。

以上のように、本校では「総合的な探究の時間」と、生徒の委員会活動を中核として、持続可能な社会の担い手を育成するESDに取り組んでいる。

来年度の活動計画

基本的には2021年度の活動を継承しつつ、活動内容の精選を図りながら、以下の取り組みを行う予定である。

① 田辺市在住外国人との交流イベント「T-café」を開催し、多文化共生社会の実現に向けた生徒・地域住民との交流の輪を広げる。

② 世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を通した世界遺産学習を行い、ユネスコの理念や文化遺産を尊重することの大切さを学ぶ。また、人類の宝としての世界遺産を後世に継承するために、世界遺産保全活動を行う。

③ 総合的な探究の時間において、1年次は持続可能な地域づくりの視座に立った「身近な地域」の探究、2年次はSDGsと関連付けた「地域と世界とのつながり」の探究、3年次は地域社会や国際社会への貢献という視点からの「自己の生き方・在り方」の探究を行う。また、外部講師を招聘し、ESDの理念に沿ったテーマの各種講演会を適宜行う。

④ 公的機関と連携して国際交流の機会を設け、異文化を尊重する態度を養い、人類の平和と友好の大切さを学ぶ。

⑤ 地元の民間企業や大学等と連携し、持続可能な地域づくりへの貢献をテーマとした活動を行う。