2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 気候変動, エネルギー, 環境, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費

朱雀第四小学校は,地域や保護者と共に20年以上前から環境教育に取り組んできた。現在もその伝統を受け継ぎ,「人と環境にやさしい町 朱四学区」を目指し,人権教育と環境教育を中心とした本校の教育全体を「朱四舎(あかしや)教育」と定義づけ,年々進化させながら取り組んでいる。

2021年度は「未来に向けて持続可能な社会づくりを担う子を育む人権・環境教育~教科とのつながり,地域・社会とのつながりを生かし,個別最適で主体的・対話的,深い学びを目指す~」を研究テーマに,昨年度までの研究を継続的に推進していくと共に,より児童の主体性を大切にした単元の構築を)図ると共に,GIGAスクール構想との関連付けを図っていきたい。

(ⅰ)児童が主体的に課題解決に取り組める単元構想図の工夫

児童が,自ら課題を発見し,その解決に向けて主体的・協働的に探究し,学びの成果等を表現し,更に実践に生かしていけるようにするために,単元ごとに単元構想図を見直す。

これまでの単元構想図をもとに,児童が主体となって問題解決に取り組めるよう,単元導入時の工夫を図ったり,アンケートなどを活用したりして,問題をより切実に自分事として捉えることで,より児童主体の学習となるようにする。また,発見課題・追究課題・提案課題・熟成課題・表現(実践)課題がスパイラルに高まる単元を構築することで,より深い学びになるようにする。単元の終わりには,学びを生かし伝えたり,広めたり,実践したりする機会を設定し,より実行力のあるものになるようにする。さらには,カリキュラム・マネジメントの視点で,教科・領域の中に効果的なつながりを創造する。具体的には,外国語活動や道徳科,国語科の言語活動などとの関連を探り,単元構想図やESDカレンダーの中に,関連が可視化できる形で示していくようにする。

(ⅱ)教科とのつながり,地域・社会とのつながりを生かしたカリキュラムマネジメント(ESDカレンダー)の見直し

カリキュラム・マネジメントの視点をもとに,人権学習・環境学習と他教科・他領域を関連付けた「ESDカレンダー」を作成し,児童が地域・社会の一員であることを自覚できるよう,地域や社会とのつながりを意識したものにする。また,地域人材,公共機関,校種間連携,企業,NPO,専門家等の人材を有効に活用していき,評価にも関わってもらうことで,PDCAサイクルを社会や地域に開いていく。高学年では,理科や家庭科の学習においてプログラミング学習を取り入れ,省エネに関するさまざまな技術(プログラミング・CCS・燃料電池など)を自分たちの未来にどのように生かすことができるのかを考えるなど,環境学習との効果的な関連付けを探るようにする。さらに,ハートフル学習については道徳科の価値を関連付けていくと共に,GIGAスクール構想との関連付けも意識し,教科・領域の横断的なつながりを盛り込んでいくようにする。

(ⅲ)児童の思考の変容・深まりが分かる自己評価シートの活用

昨年度に引き続き,あかしや教育でつけたい資質・能力(ESDの視点でつけたい概念・能力・態度)を,新しい学習指導要領で定められた3つの資質・能力の中に落とし込んでいく。それぞれの資質・能力・概念・態度と各教科やその他の領域での「つけたい資質・能力」の関連を効果的につなげ,「課題解決力」「コミュニケーション力」に関わる力を重点的に取り上げていく。そして,自分に何が身に付き,何が課題なのかが分かり(自己認識),新たな自分を目指す励みになるような自己評価シートを作成し,つけたい資質・能力がついたのか(何ができるようになったか)を自ら振り返ることができるように活用していく。学んだことに対して,しっかりと自己評価ができるように,1つのノートやファイルなどに毎時間の振り返りを記録し,それに教師からの他者評価を加えるなどして残していく。単元の初めと終わりに自己評価シートでの振り返り取り入れ,児童自らが目標をもち実践を通して自己を振り返るサイクル(PDCAサイクル)を回し,一人一人が学習全体を通して自己を振り返ることを目指す。

(ⅳ)児童の思考の変容・深まりの分かる「あかしやモデル」(思考ツール)の活用

課題解決に向けた話し合いなどで,思考の変容や深まりを可視化する「あかしやモデル」(思考ツールなどを用いたワークシートなど)を活用する。協働的に問題を解決していく中で,自分の考えの過程や友だちの考えが視覚的に分かるようなものにする。あかしやモデルは,児童の発達段階に合ったものを,学習ノートやワークシート,教具・板書などに取り入れ活用していく。低・中学年は,自分の考えを説明し,お互いの考えを比べたり,整理したりしながら考えることができるもの,高学年は,それに加えて理由に対して批判的に考え,思考への改善点や他者へのアドバイスを考えることができるものを作成する。その際には,多面的・総合的,批判的に考える力の育成を目指し,根拠を明確に示していけるような形式を工夫する。学習の中で児童の思考の足跡として,あかしやモデルをポートフォリオ形式で残し,児童が自身の思考の変容や成果を振り返れるようにする。

  • 1年生は,継続的に生き物を飼育する活動を通して,生き物の生態,変化や成長の様子について考え,それらが生命をもっていることや成長していることに気付くとともに,生活上必要な習慣や技能を身につけ,生き物に親しみをもち大切にする心情を育てることをねらいとした。
  • 2年生は,野菜の世話や観察を通して,気付いたことや感じたこと,考えたことや困ったことなどを友達と伝え合い,観察や世話の仕方を自分なりに工夫しながら,継続して栽培を行った。単元を通して,野菜にはそれぞれの特徴や育て方があることを,体験を通して学べるようにした。また,野菜と自然との関わりを考え,それらが自分たちと同じように生命をもっていることや,成長していることに気付き,植物を大切にしようとする態度を育てることをねらいとした。
  • 3年生は,校内にいる身近な生き物に焦点を当て,校内を生き物いっぱいにするための自分なりの課題をもち,飼育活動や調べ学習を通じて継続して探究していった。そして,飼育活動や調べ学習の中からわかったことをもとに,生き物と環境の関わりや生き物同士の関わりについて,地域や保護者,他学年の児童によりわかりやすく伝える方法を考え,発信する。さらに,生き物をはじめとする自然と自分との関わりについて考えをもち,実践していこうとする態度を育てることをねらいとした。
  • 4年生は,身近な植物に焦点を当て,みんながすみやすい環境にするための自分なりの課題をもち,栽培活動や調べ学習を通じて継続して探究していった。そして,栽培活動や調べ学習の中からわかったことをもとに,植物のもつ力や大切さを多くの人に発信する。さらに,植物の必要性について自分なりの考えをもち,実践していこうとする態度を育てることをねらいとした。
  • 5年生は,地球温暖化問題を受けて,エコ改修された校舎の仕組みから,実験を通して,省エネになる仕組みを知り,温室効果ガスをできるだけ排出しない暮らしのアイデアを考えていった。実験したことや調べたことをもとに,温暖化対策の必要性やみんなが実践したくなるエコライフを分かりやすく伝える方法を考え,発信する。地球温暖化対策の必要性を知り,自分たちも実践していく態度の育成をねらいとした。
  • 6年生は,自分たちだけがエコライフを実践していては,地球温暖化を防ぐことができないことに気付き, 京都市の環境政策を知ることによりSDGsの目標を達成するためにできることはないか問題解決をしながら学習を進めた。SDGsの目標を調べることを通して,環境問題を自分事として考え,自分たちも京都市の一員であるという自覚をもって実践に取り組んでいった。そして,自分たちが実践したことを地域や保護者に分かりやすく伝える方法を考え,発信していく。学習を通して,児童が環境問題解決に向けて,今すぐ考えていかないといけない課題であるということを理解し,児童が主体的に解決していく力をつけ,今後の自己の生き方に活かせるようにすることをねらいとした。

人権教育では,毎月のテーマで学習するだけでなく,12年生は生活科で「命」3年生は「男女平等」4年生は「総合育成支援」5年生は「外国人」6年生は「国際理解(平和)」と探究的に学習し,学校や地域に発信している。

来年度の活動計画

今年度は,人権教育と環境教育がさらに社会に開かれた教育課程となるように,カリキュラム・マネジメントの視点で学校教育全体を見直し,「ESDカレンダー」を活用して効果的なつながりを探ってきた。そして,協働的問題解決学習の中で主体的・対話的で深い学びを生み出す単元を構築することで,人権学習「探究的ハートフル学習」や環境学習「あかしや環境プログラム」の単元構想を,より探究的で効果的なつながりがあるものに改善させてきた。また,ESDの視点でのつけたい価値観・能力・態度と,新しい学習指導要領で定められる3つの資質・能力の関連を,生活科や総合的な学習の時間の単元を起点に具体化してきた。さらには各教科・領域に応じた「つけたい資質・能力」,道徳科とのつながりも探ってきた。総合的な学習の時間を起点に,外国語活動やプログラミング教育などとのつながりも創造し,教科横断的に内容的・方法的・資質能力的な観点で教育課程を編成してきた。

来年度は,今年度までの研究を継続的に推進していくと共に,より児童の主体性を大切にした単元の構築を図ると共に,GIGAスクール構想との関連付けも図っていきたい。また,重点的に育てたい資質・能力として「課題解決力」「コミュニケーション力」を挙げ,社会に開かれたれた教育課程の達成に向け,研究を進化させていきたい。