2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 福祉, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)

1   本校の国際教育・ESDの特徴

筑波大学附属坂戸高等学校(以下「本校」)では平成20年に校内の国際教育推進委員会(Committee of International Studies、以下「CIS」)を設置し、それ以来本校独自の取り組みである「国際的視野に立った卒業研究の支援プログラム」、ブラジル、タイ、カナダ、台湾、インドネシアなど各国からの留学生の受け入れ、ユネスコスクールへの加盟、学校設定教科「国際」とその科目の設置、そして本校が主催する「高校生国際ESDシンポジウム」などを通して、総合学科高校だからこそ可能である多角的な国際教育のあり方を模索しながら実践を積み重ねてきた。そして、これまでの本校の実践の成果をベースとして、平成26年から5年間、文部科学省のスーパーグローバルハイスクール校として、語学だけではなく、「グローバル社会において、自分自身は社会とどのようにかかわり、平和で持続可能な社会を実現するために何ができるか。」を生徒自身が考え、実践できることを重視したプログラムを展開してきた。

1946年に地元の農業高校として発足してから70年、1994年からは日本初発の総合学科高校のパイオニアとして20年以上歩みを重ね、平成26年度のSGH指定後は、総合学科を生かしたグローバル社会におけるキャリア教育の実践を積み重ねている。2018年4月には、国際バカロレア日本語DPの1期生が入学した。1期生が3年生になった本年度DP最終試験を迎え、初年度から世界平均を上回るスコアでDP取得者を出すことができた。

本年度、コロナ禍でWWL(ワールドワイドラーニング)コンソーシアム構築支援事業の拠点校として、何ができるか、大変困難な1年となった。そのようななかにおいても、これまでの連携先からの変わらぬ支援や新たな連携先からの支援をいただき、新たな取り組みにもチャレンジすることができた。ここでは、WWL事業について拠点校の視点からまとめるとともに、本年度あらたに開催したThe 2nd SDGs Global Engagement Conference online versionやアジア学院でのフィールドワークを中心に報告する。

2 2020年度のWWL事業について(拠点校の視点から)
WWL事業は、SGH事業の後継事業に位置付けられている。これまでのSGH事業と大きく異なる点は、学校を指定するのではなく、管理機関を指定し、そこに拠点校、そしてコンソーシアムによりさらに共同実施校、連携校を置くことである。WWL事業で各コンソーシアムにおいて求められている主なものとして、1)グローバル人材育成のためのカリキュラム開発(社会課題を掲げたPBL)、2)高校生が主体となった国際会議の開催、3)高大接続による高度な学習機会の提供、4)教師教育等があげられている。1)については、すべてのフィールドワークが中止となったが、2020年11月にコロナ禍においても実施できるプログラムとして、栃木県にあるアジア学院の協力により、国内版国際フィールドワークを実施することができた。2)については、後述するようにこれまで開催してきたシンポジウムのネットワークを活かし、大学、海外校、企業によりオンラインで実施した。3)については、大学と引き続き協議をすすめている。4)の教師教育は、昨年度受け入れた、SEAMEOのプログラムである、SEA-Teacherプログラムは中止となったが、あらたにオンラインによる教育実習も模索されている。来年度以降の展開を期待したい。また、SEAMEO(東南アジア教育大臣機構)のAffiliate memberに筑波大学がなっており、その一環で、本校も筑波大学と合わせSchool Networkへの加盟が認められた。日本では、はじめての加盟である。
SEAMEOのネットワークにより、昨年度の取り組みでは、アセアンの学生の皆さんの教育実習中に英語科の授業だけではなく、理科では各国の環境問題について公民では現代社会について英語で授業を実施してもらった。また、本校で実施している総合学科研究大会でもプレゼンを実施してもらった。このように、実質的な高大連携を進めていければ、WWL事業で掲げられているグローバル人材育成のためのカリキュラム開発、国際会議、教師教育そしてそのベースとなる各国とのネットワーキングなど、様々な波及効果があると思われる。コロナ禍においても、WWLを活かした海外との連携をすすめていきたい。

3 The 2st SDGs Global Engagement Conference On line version について
2012年度から本校では、高校生国際ESDシンポジウムを開催しており今年で9回目となった。SGH指定期間中は、これとあわせて全国SGH校生徒成果発表会を実施していたが、WWL指定後から、The SDGs Global Engagement Conference Tokyoとし、WWLで掲げているSDGsに関する国際会議として開催している。
今回のシンポジウムのあらたな取り組みとして、オンラインでの国際会議の開催に挑戦した。オンラインでの開催で改めて感じたことは、これまでの連携先との信頼関係の大切さだ。はじめての開催であり、戸惑うことも多く、事前の打ち合わせも不十分なところもあったが、多くの支援をいただき無事、開催することができた。最終的に、オンラインの利点を生かし、海外校からの参加は昨年度を上回り、筑波大学の附属学校群からの参加もあった。これまでのネットワーク、新たなネットワーク、オンラインの利点、対面の利点などを整理しながら、来年度、10回目を迎えるシンポジウムの在り方を検討したい。

4 アジア学院における“国内版”国際フィールドワーク
アジア学院は、1973年に創立され、アジア、アフリカ、太平洋諸国の農村地域から、その土地に根を張り、その土地の人々と共に働く“草の根”の農村指導者(Rural Leader)を学生として招き、栃木県西那須野のキャンパスにて、国籍、宗教、民族、習慣、価値観等の違いを認めつつ、公正で平和な社会実現のために、実践的な学びを行っている学校である。9ヶ月間の農村指導者養成の研修は、いのちを支える「たべもの」作りにこだわり、有機農業による自給自足を基本としています。学生たちは座学、ディスカッション、見学研修、グループ単位での農場運営を通して、自国のコミュニティの自立を導くリーダーシップを養っている(http://www.ari-edu.org/about-us/より)。
コロナ禍においても、国内で海外の人たちと共に学べる場所を模索していたところ、本校の卒業生とのつながりの中で、このアジア学院において国際フィールドワークを試行することができた。2020年11月21日から23日の2泊3日に11名という人数で、コロナ対策に常に配慮しながらの活動であった。学院では、人々が最も大切にしていかなければならない、「食」「いのち」をベースに、持続可能で平和な世界を創っていく、まさにSDGsに通底する学びを実現することができた。来年度以降も、継続的に連携を依頼しているところである。

5 上記以外のおもな国際教育活動例一覧

国際連携協定校 ボゴール農科大学附属コルニタ高等学校とのオンライン交流会(2020年7月)
SGH・WWLインドネシア国際FWに参加した卒業生の自主企画による2国間連携ワークショップ(5回)
WWL連携企業:IC-NET株式会社との連携によるコロナ禍におけるオンライン授業の開発(2020年9月)
WWL連携企業:APPJ社との連携による、エシカル認証商品の開発Mtgへの参画
SEAMEO Schools’ networkへの加盟(2020年11月10日)
JICA元ボツワナ支所長による国際講話

 

6 生徒の変容について

SGHおよびWWLでは、生徒の長期的な変容の把握を求められている。本年度、SGH1期生が国際機関に内定した。海外で勤務を始めた卒業生、アセアンの大学院へ留学の準備を進めている卒業生もでている。2014年に掲げた目標が確実に実現しつつある。

来年度の活動計画

本校では総合学科の特性を生かした様々な活動を行ってきた。5年間のSGH事業では「共創的対話力で新しいアイデアを生み出せる。グローバルに活躍できる」リーダーを育成することを目標のひとつとして掲げ活動を行い、WWL(ワールドワイドラーニング)コンソーシアム構築支援事業の拠点校となった現在も継続している。先頭に立って引っ張るだけでなく、現地の人と共に考え、問題を解決できるグローバル人材を総合学科として育てたいと考えている。また、学校の役割として「オープンプラットフォーム」を掲げている。これは、学校に関わる様々なステークホルダーが出会い、学びあい成長しあえる場を提供できる学校でありたいということである。グローバル人材育成は、個人や単独の活動ではなかなか難しい場面もある。そこで、本校がその「中間支援」をおこない、多くの活動が促進される触媒の役を果たしたいと考えている。全世界に広がるユネスコスクールでも、ぜひ、全国の先生方や教育関係者の方々がつながり、未来につながる出会いがあることを期待している。また、本校は、関東ESD支援センターの埼玉県拠点に登録されており、この面からも高校と国内外の様々なステークホルダーがつながっていく場面を提供していきたい。