2018年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

環境, 国際理解, 減災・防災

当校は,「進取創造」「至誠貢献」という校訓に基づき,「地域・日本・世界に貢献できるグローバルリーダーの育成」を目指している。これに関し,ESDを現代社会に生きる地球市民としての資質育成にとって重要な教育活動として捉え,「世界の水問題の解決」を学校全体の活動テーマとし,中学校と高校で連携・連動してESDを推進している。「水」問題は,SDGsに掲げられた持続可能な開発目標の一つでもあり,「水」問題は環境のみならず,教育やジェンダー等,その他のSDGsにも関連する重要な問題の一つである。これを軸に多様なESD活動を展開し,SGH事業と連携しながら「適切な世界観」「本質を見抜く力」「相対化する力」「共感する力」「構想力」の5つの力の育成を目標とした。

具体的には年間を通して,時間割に組み込まれている「総合的な学習の時間」(中学校)と「課題研究」(高校)を柱にし,①環境学習に係わる活動,②課題研究に係わる教育,③国際理解に係わる学習を行った。

① 環境に係わる活動

中学:中学校1年生では,通年3回の野外巡検(定点観測)を通じて,四季の移ろいによる植生の変化や生命の多様性を感じ取らせ,それらを具体的にデータ化し,実証的かつ科学的に問題を捉えさせる取組を行っている。また,中学校2年生は,北上川下流に行き,ヨシの植樹を行い,ヨシ原の再生活動に参加すると共に,震災や防災に関する理解を深める活動を行っている。

 今年度より,公益社団法人日本フィランソロピー協会主催の被災地復興応援「チャリティー・リレーマラソン東京2018」事業に参加している。東日本大震災や熊本地震被災地の復興に向けて中学生同士で議論,発信,行動することを通して,支援に貢献することができた。

高校:高校1年生は週3時間「課題研究」という時間があり,そこで水問題や環境問題についての書籍を読み,「ブックレビュー」に取り組ませている。そして,それを先行研究のベースとして,それぞれ関心のあるテーマを設定し,調べ学習を行い,論文執筆に取り組んでいる。また,体験的な活動として,10月末に1泊2日で全員が参加して「北上川フィールドワーク」に出かけ,鉱山の汚染にあった地域の学習や防災施設の見学,また植林活動を通して,環境について体験的に学んでいる。高校2年生は個人ないし少人数のグループで「課題研究」に取り組み,主にアジア地域の水問題について,興味関心に基づいてテーマを設定し,研究活動を展開している。11月下旬には4泊5日の海外フィールドワーク(シンガポール)に出かけ水関連施設を訪問し,現地調査をしながら広く環境問題について学習している。

なお,中学生が「全日本中学生水の作文コンクール」で最優秀賞の内閣総理大臣賞を,「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト2018」で審査員特別賞を受賞したり ,高校生がアメリカ合衆国・ハワイで行われた国際学会(AOGS)で発表したりするなど,環境に関する各種大会等で顕著な成果を残している。

② 課題研究に係わる教育

中学:中学校3年生では,今まで学習したことを基に自分でテーマを設定し,仮説を立て,実験・観察を行い,ポスターセッション形式にまとめて発表するという活動を行っている。ポスターセッションは,同級生以外に保護者や下級生,大学の教授にも参加してもらい,成果を共有している。また,国語の授業で探求の仕方や発表の仕方について学ぶ時間を設定することで,課題研究にスムーズに取り組めるよう工夫している。

高校:高校1年生,2年生は全員「課題研究」に取り組む。高校1年生は,本校教員や外部講師による講演から関心のある分野や問題意識を発掘し,テーマを設定する。その後は,文献やインターネットによって情報を収集しながら,調べ学習を進める。加えて,「模擬国連」を数回に分けて実施し,国連のシステムや各国のパートナーシップ等,広く国際関係,国際理解について学んでいる。高校2年生では同様に「課題研究」に取り組むが,全員「水問題」に絡めて研究活動を行う。生きたデータを入手するために全員に現地調査を行う。海外研修先であるシンガポールでインタビューやアンケートを行い,それを帰国後の学習活動に反映し,最終報告を提出する。年度末にはポスター発表をし,気づきを発信すると共に,全体で共有している。さらには,高校3年生の希望者は,研究を発展させ,安全な水の確保やバイオトイレの確保,塩害を防ぐプロジェクト,ゴミ問題解決のためのエコ容器作成等に取り組み,その成果を各学会(「水環境学会」「日本土木学会」等)で発表し,発信した。

③ 国際理解に係わる学習

中学:中学校1年生は,広く国際理解について学ぶために,「総合学習」の時間に国際理解ワークショップを実施している。「世界の国からこんにちは」「世界がもし100人の村だったら」「貿易ゲーム」など,NGOや地域の国際関係団体から講師を招いて,体験型学習に従事,世界への関心の扉を開いた。中学校2年生では,英語での会話やコミュニケーションをとる際のマナーやルールを身に付けたり,外国人との直接交流体験を通して,異文化への理解を深めたりすることを目標として,2泊3日で英語のみを用いて過ごす「イングリッシュキャンプ」を実施している。また中学校3年生は,全員参加の研修旅行を香港・マカオで行っている。事前学習では異文化理解や現地文化理解,また私たちの地域や学校を紹介するなどし,現地では同世代の中学生を交流し,異文化理解を深めた。また,シンガポールの交流校との相互交流を行い,現地からの中学生を招いての交流会やホームステイ受け入れを通して,相互理解・異文化理解を深めた。3年間を通し,相互交流先のシンガポールや海外からの訪問団との交流の機会があり,国際理解を深めている。

高校:国際交流が活発であり,昨年のチェコ共和国に続き、今年はイタリアからの長期留学生を受け入れているだけでなく,台湾やアラブ首長国連邦,アメリカ合衆国から高校生訪問団を受け入れ,「バディ」として多くの生徒たちがマンツーマンでお世話をし,交流を行った。また,高校1,2年の希望者(20名)は,12日間アメリカ・デラウェア州の高校でホームステイをしながら現地の高校に通う短期留学をする。ここで異文化を体験するとともに自国文化を相対化・客観視する。日本文化について英語で発信するプレゼンテーションにも取り組む。さらに,高校2年生の希望者10名程度は,メコン川フィールドワーク(ベトナム・カンボジア)に出かけるチャンスもある。現地のニーズを調査し,研究し,実際にアクションをする能動的な学びの場となっている。

教育課程に定位している活動としては,高校2年で実施する全員参加の「海外研修旅行」(シンガポール)が軸となった。この研修旅行では単に観光にとどまらず,研究テーマを持って地元の人々にインタビューをしたり,現地の大学生と多文化共生を実現している街を担当したりして異文化理解や多文化共生についての理解を深めるとともに,共生する姿勢や異文化尊重の態度を身につける機会としている。

さらに,部活動としては,英語部が精力的にユネスコ活動や国際理解活動に励んでおり,地元の留学生が開催する国際祭りやJICAの国際協力講座などに参加し,また国際理解に関する弁論大会やスピーチコンテスト,エッセイコンテストでは多くが入賞を果たしている。とりわけ,今年度,外務省・国連主催の国際理解・国際協力のための「高校生の主張コンクール」においては,特賞である「法務大臣賞」を受賞した。また,JRC部と協同で,ユネスコ寺子屋運動(書き損じはがきの回収)にも取り組んでいる。

来年度の活動計画

平成31年度についても,中学校においては,「総合的な学習の時間」を中心に①環境学習(巡検,植生研究,水問題学習等),②課題解決学習(課題研究,ポスター発表等),③国際理解学習(国際交流,イングリッシュキャンプ,海外研修旅行,国際理解ワークショップ等)の3本柱で,教育課程のなかで体系的・教科横断的に進める。これらに加え,中学3年生が本校としては初めての大きな国際協働プロジェクトUNESCO MGIP’s projectに参加する。

 高校においては,全員が必修の「課題研究」を通して,①環境学習(北上川フィールドワーク,メコン川フィールドワーク,世界の水問題学習等),②課題解決学習(課題研究における調査研究,海外研修旅行での調査,ポスター発表,論文執筆等),③国際理解学習(海外交流校との交流,訪日団との交流,海外研修旅行先での異文化理解等)の3本柱で,年間を通して教育活動を展開していく。また,EDGsを意識した授業実践など,持続可能な社会の担い手育成を視野におき,探究的な学習を促進していきたい。

 また,中学・高校合同で,文化祭におけるチャリティー活動,災害時募金活動,また地域への貢献活動を,関係機関と協力しながら,さらに充実させていきたい。