2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 気候変動, 環境, 文化多様性, 国際理解, 人権

本校は私立 日本大学を母体に持つ付属中等教育学校であり、「自主創造・師弟同行・文武両道」を校訓とし、日々教育に当たっている。学校の所在地である栃木県内では唯一の中等教育学校である。本校の建学の精神は「日本文化を基調として世界の文化を探求し、もって人類の平和と福祉に寄与する」というものであり、ユネスコスクールの理念との一致をみている。

2017年2月のユネスコスクール承認以降、ESDの「国際理解教育」「環境教育」を軸に据え、様々な活動に取り組んでいるが、近年ではそれに加え「文化多様性」「人権問題」「平和学習」などにも部分的に取り扱い、活動の幅を広げている。

具体的な活動としては、①定期的な国際交流活動、②オーストラリアでの環境保護活動への参加、③人権保護に関する作文コンテストへの参加、④戦争体験者による平和講話、⑤「平和の鐘を鳴らす運動」への参加、⑥(株)ファーストリテイリング様主催による「服のチカラ」プロジェクトへの参加、⑦「世界哲学の日」校内実施 などが挙げられる。

①定期的な国際交流活動

 本校では世界6か国に点在する学校と定期的な交流を実施している。イギリス(2校)、ハンガリー、オーストラリア、中国、マレーシア、アメリカなどがそれであるが、それぞれの国にある姉妹校生徒と定期的な交流、ホームステイ活動への参加を通して、相手国文化に対する理解をより深めることができている。さらに、本校での定期的な受け入れ活動を通じ、日本文化の紹介や、生徒たちの日本文化に対するより深い理解を促進することも可能となっている。例えば、マレーシアの滞在では、世界4大宗教が一堂に会するその環境を有効活用し、異文化が友好的に混在する社会について深く学び、現地の一般生活文化だけではなく、企業訪問などを通じて多文化国の在り方を学ぶ良い機会となっている。

②オーストラリアでの環境保護活動への参加

 本校のオーストラリア姉妹校を訪問した際、熱帯雨林を保護するNPO団体を訪問し、「継続的な発展のための活動」を目の当たりにし、ESD/SDGsに対するより深い理解を涵養することができた。令和2年度はこの活動を国内へと移し、地元地域の林業従事業者との連携をもつことで、自然環境の保護・持続可能な生産と消費のかかわりについての学びを深めていく予定である。

③人権保護に関する作文コンテストへの参加

 中学1年生~3年生を対象に、栃木県が実施する「すべての人々が互いの人権を尊重し、共に生きる社会の実現を目指し、人権教育・啓発推進県民運動強調月間」の一環である人権作文コンテストに参加。

④戦争体験者による平和講話

 これは、本校が伝統的に実施している平和学習であり、中学1年生を対象に、地元・佐野市にお住いの四十八願(よいなら)様を講師としてお迎えし、約1時間の内容で平和に関する講話を頂戴している。ご本人は「日の丸飛行隊」の養成員として実際に訓練を受け、指導者として戦争に従事する若者の育成に携わった自らの経験をもとに、いかに平和が大切で貴重なものであるかを丁寧にお話しいただいた。

⑤「平和の鐘を鳴らす運動」への参加

 栃木県・佐野ユネスコ協会主催(熊倉勝会長)の「平和の鐘を鳴らす運動」に参加した。これは毎年7月に実施される活動で、地域の小学生・中学生を対象に(ア)戦争と平和に関する民話語り、(イ)佐野名産の「天明鋳物」で作られた「平和の鐘」を参加者全員が鳴らすものである。本校生徒(希望者)も毎年参加し、当運動の実施・運営を手伝っている。

⑥(株)ファーストリテイリング様主催による「服のチカラ」プロジェクトへの参加

 令和元年度、ファーストリテイリング主催の「服のチカラ」プロジェクトに参加することができた。不要となった子供用衣類を回収し、世界の難民キャンプへ届けるプログラムである。中学1年生~2年生を主担当に据え、衣類回収の意義、世界難民キャンプの現状、日本が国際社会に置かれている立場、民間人ができる国際貢献など、幅広い内容を学ぶことができた。実際に本プログラムを担当する方にお越しいただき、講話を頂戴した。また、実際の衣類回収をどのように効率的に、また幅広く回収が可能であるかを生徒たちに考えさせる経験は「協働学習」という観点から考察し、非常に有効であったと考える。6か月に及ぶ活動の中で、佐野市内の小学校、一般家庭などへの声掛けを行い、トータルで600kg近い衣類を回収することができた(11月末日で終了)。

⑦「世界哲学の日」の校内実施

 UNESCOでは2005年に11月第三木曜日を「世界哲学の日」と策定したことをうけ、本校においても同様の活動を実施している。「哲学はすべての知の源泉」とし、哲学を学ぶことの意味について全校生徒を対象に授業などを活用し、啓もうしている。具体的には、(ア)人類が直面している課題により効果的に対応するために哲学的分析・研究を促進すること、(イ)グローバル化や近代化への影響で生じる問題に対して哲学の重要性の認識を高めること、(ウ)次世代のための哲学教育の重要性を強調することなどについて、各教職員が哲学者をピックアップし、その理解促進を促すものである。また、「世界哲学の日 翻訳コンテスト」と題し、UNESCOが定めた「世界哲学の日」実施に関する条文を日本語に翻訳するコンテストを実施している。

来年度の活動計画

 令和元年はユネスコスクール承認から2年目となり、本格的な内容の充実が求められたが、ユネスコスクールに対する教職員の理解も深まりつつあり、全プログラムが初年度に比べてはるかに円滑に進んだといえる。この点に関し、教職員によるより深い理解、また積極的な参加を促すべく、SDGs/ESDに関するより充実した研修を実施していく。

 生徒を対象としたプログラムとしては、体系的な環境教育プログラムを構成していきたい。現段階では、「地元への寄与」という意味において、地産地消・減災・森林保護などをテーマとした活動を予定している。学校所在地である佐野史は、10月に発生した台風19号により甚大な被害を被ったが、地元企業の協力を仰ぎ、より具体的な活動・体験学習を立ち上げ、理解を深めていきたい。

 さらに令和2年度は東京オリンピックが行われることに関し、生徒たちへの異文化理解教育を実践する格好のタイミングであることから、現在提携を結んでいる各国の姉妹校と連携し、内容の充実した交流活動を行っていく。