2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 環境, 文化多様性, 国際理解, 人権, ジェンダー平等, 持続可能な生産と消費, 食育

2021年度も、それまでと同様もしくはそれ以上に社会全体が重苦しく、閉塞感に満ちていたように感じる。学校と言う環境の都合上、複数名の生徒たちが一堂に会することが無くてはならないわけであるが、それゆえ、学校行事・食事・部活・授業と多くの場面において生徒達は我慢を強いられることになり、生徒たちの気持ちを慮ると、なんとも形容し難い複雑な心境になってしまうのはどの学校でも同様であると思う。

2020年度の活動報告書にて「次年度は自然環境保護に関する学びを実施したい」と書いたが、その通りとはいかなかったものの、一部関連する行事・学習を行えたことは大きな成果である。多くの行動・活動が制限される今だからこそ、「逆に「窓」を大きく開け、新たな知識を吸収する時期とすべし」ということで、従来には設定してこなかった新たなプログラム”Professional Talk × SDGs” もローンチすることができた。それを含めたいくつかの活動内容を以下に記載する。

 

1.UNESCOスクール活動団体「GLOBE」の立ち上げ

本校では2017年のUNESCOスクール参加以前より、海外派遣に限らず、校内での異文化理解学習等を含めた様々なグローバル教育活動を実践して きたが、その活動の教育効果をより高めるため、また生徒主体で運営するため、生徒による活動団体である「GLOBE」を立ち上げた。6年制の学校である本校では、中等3年生~5年生を「コア学年」とし、学校内外での様々な活動に率先して参加するように促しているが、立ち上げ元年となる2021年は中等3年生と4年生から合計で11名の生徒が運営委員として活動している。以下に記載した2021年度の活動内容のほぼすべてにおいてこれらの生徒が主体となって運営に関わっており、これまで以上により「生徒目線」での活動が可能となった。

 

2.”Professional Talk × SDGs”

本校では、生徒の海外派遣を中心とし、世界7か国での10以上のプログラムを定期的に行ってきたが、コロナ以降、これらのプログラムのすべてはいずれも中止・延期を強いられてきた。この状況が続くことは、生徒たちの「発展的学び」の機会が失われてしまうこととなり、経験はもちろんのこと、新たな知識吸収のチャンスを失うことになる。この状況を打開するため、海外渡航ができないこの時期を「学びの時期」と定め、通常授業では学ぶことができないハイレベルな専門内容に触れる機会を設定した。具体的には、本校が日本大学の付属学校であるメリットを活かし、理系・文系を問わず、様々な学部で教鞭をとる先生方から、本校生徒を対象とした特別講義を実施してもらった(UNESCOスクール事務局より案内を頂戴したシンポジウム等も含む)。

①グローバル人材育成講演

期日:令和2年11月9日

主催:宇都宮大学

話者:モリソン・バーバラ准教授(宇都宮大学国際学部 英文学博士)

主題:「ジェンダーと社会」

②海洋生物学シンポジウム

期日:令和3年2月1日

主催:成蹊大学サスティナビリティ教育研究センター、海洋生物学アウトリーチ研究会、国立科学博物館

話者:猿渡敏郎(東京大学大気海洋研究所)、中江雅典(国立科学博物館)、ほか

主題:「海を探る、海を調べる。」

③SDGs/ESDシンポジウム

期日:令和3年3月6日

主催:成蹊大学サスティナビリティ教育研究センター

話者:渡貫淳子氏(第57次南極地域観測隊 調理担当)

主題:「南極のエコな生活から持続可能な未来を探る」

④SDGs/ESDシンポジウム

期日:令和3年3月15日

主催:佐野日本大学中等教育学校

話者:居駒知樹教授  (海洋建築工学科 工学博士)/ 野志保仁助教授 (海洋建築工学科 工学博士)

主題:居駒教授 テーマ①「海洋建築とSDGs」

テーマ②「各種浮体式構造物の波浪中運動性の研究」

野志助教 テーマ 「沿岸域環境の実態」

⑤SDGs/ESDシンポジウム

期日:令和3年6月14日

主催:佐野日本大学中等教育学校

話者:眞嶋麻子助教 (国際総合政策学科 国際交流修士)

主題:「国際協力の未来について…貧困/ファストファッション/SDGs」

⑥SDGs/ESDシンポジウム

期日:令和3年7月17日

主催:佐野日本大学中等教育学校

話者:青木千賀子講師 (国際関係学研究科 国際関係博士)

主題:「社会開発とジェンダー ~ネパールのフィールドワークから:SDGsの推進~」

⑦SDGs/ESDシンポジウム

期日:令和3年11月1日

主催:佐野日本大学中等教育学校

話者:小林伸司氏 (神永写真館代表)

主題:「レンズを通して見たケニア 〜キベラスラムで出会った命の輝き〜」「魅力的な写真の撮り方講座」

⑧SDGs/ESD実践講習

期日:令和3年12月13日

主催:佐野日本大学中等教育学校

話者:藤田睦教授 (佐野日本大学短期大学 栄養フィールド主任)

主題:「食料自給の難しさ」「調理実習を通して学ぶ食のありがたさ」

 

3.Vege Farm ~学校でできるサステナブルな農業~

 

今年度新たに実施した挑戦に「Vege Farm」が挙げられる。これは先述したGLOBEが中心となって実施している活動であるが、自然環境保護/フードロスに関する学習の一環として、生徒自身が考案した内容であり、学校内の一部を畑へと転用し、複数種類の野菜の栽培~収穫を行った。普段我々が何気なく口にしている食材を栽培することの難しさについて、実体験を通じて学んだ。収穫した作物は、上記の”Professional Talk × SDGs”の⑧に挙げた付属短大の栄養フィールド主任教授からの特別実習にて調理するだけではなく、大学生との協働作業を通じて、キャリア教育に関する学びの機会ともなった。

 

4.服のチカラプロジェクト

UNESCOスクールに所属する他の学校の多くも取り組んでいる「服のチカラプロジェクト」であるが、本校においては4年連続で実施しており、毎年度当初にSDGsに関する基本概念を理解すべく、中等1年~3年を対象に特別講義を実施している(そのおかげもあり、校内で実施したSDGsの理解度に関するアンケートでは、全校生徒がその概要を理解することができている)。また、毎年実施しているプロモーションを兼ねた「ポスターコンテスト(中等1年~3年対象)」で、ベスト3に選出された以下の三作品については、表彰されるとともにチラシ・ポスターとして印刷され、衣類提供を訴えるプロモーション活動に使用された。また、今年度初の試みとして、近隣のUNIQLO様(佐野店)のご協力を仰ぎ、店舗において上記のチラシを配布する活動の許可をいただいた。コロナ感染に配慮し、屋外での活動であったが、参加したGLOBE生徒達にとっても良い学びの機会となった。

 

5.茨城キリスト教学園様とのOnline交流

UNESCOスクールの活動目標としても掲げられている「世界中の学校との交流を通じ、情報や体験を分かち合うこと」を実践するため、UNESCOスクールとして活動されている茨城キリスト教学園様と活動内容に関する情報共有を行うため、2021年11月にZoomを使用してOnline交流を行った(教員のみ)。現在、活動を実施する中で感じている教育効果、今後の課題などについて情報共有をさせていただいた。画面越しではあったが、それぞれの学校環境で行っている取り組みを知ることができ、担当者としてとても学びの多い機会となった。今後、実際の生徒間交流を目指し、計画を立てていくこととなる。

 

6.ユネスコ関東ブロック活動研究会in栃木への参加・発表

2021年度のユネスコ関東ブロック研究会において、佐野ユネスコ協会に所属する学校として、本校でのUNESCOスクール活動について発表させていただいた。今年度は初となるオンライン実施となった。

来年度の活動計画

本校ではSDGsを含めたグローバル教育を実施する際「佐野から世界へ羽ばたく人材を育成する」を合言葉とし、幅広い内容の教育活動をじっせんしてきた。しかし、他校同様、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、多くの「発展的学び」に関する活動が実施できていない状況である。この危機的状況が収束し、一日でも早く「通常」へ戻ることを祈る以外ない。

しかし、これは本校におけるUNESCOスクール活動の在り方が、これまでは「外部頼み」であったことを再認識させ、自校でのオリジナリティある学習活動の展開が不十分であることを露呈させた。コロナ以前のスタンダードとは異なる、新たなスタンダードが一般化してきた今、本校においての学びの在り方も検討していかなくてはならい。そこで、「佐野で世界を思考する人材を育成する」を新たな合言葉として設定し、コロナ禍であるからこその新たな学びを展開したい。

 

①世界のUNESCOスクールとのOnline交流の活発化

「Onlineは味気ない」という印象はどこえやら、今となっては「Onlineなくしてはありえない」という状況である。物理的な「Face to Face」が持つ力はそのままに、それが叶わない今だからこそ、新たな手法で「発展的な学び」を展開していきたい。UNESCOスクールに所属生徒達であるからこそ、その特徴を最大限に活かし、世界中のUNESCOスクールとの交流を行う。先述した茨城キリスト教学園様との生徒間交流に加え、海外のスクールと異文化交流を含めた機会を設けていきたい。

 

②”Professional Talk × SDGs”の外部発信・交流

今年度一年間を通して実施してきたが、すべての回において、定員を超える参加人数が集まり、参加する生徒たちの意識がとても高いことがうかがえた。それぞれの専門分野において「プロ」である方々からの講義は生徒たちの知的好奇心を満たすだけの力を有している。次年度は生徒たちにとってより有益であるテーマを提供していくとともに、学校外部の方々の参加も促し、UNESCOスクールとしての活動をプロモーションするにとどまらず、発展的な学びをさらに外部へ発展させ、「知の独占」とならぬようにしたい。本校ではこれまで、海外姉妹校生徒が来校した際、近隣の公立校を訪問し、一緒に異文化交流を行う「Share the Wonderプログラム」を展開してきた。これはその名の示す通り、「共有」することが目的であるが、このプログラムを当てはめ、「学びのすそ野を広げる」活動を展開したい。

 

③Vege Farmの継続及び外部発信

本校は栃木県佐野市に在るが、地元地域の産業として農業が大きな割合を占めている。今後Vege Farm活動を行う際、地元地域で農業に従事する方々からのご協力を仰ぎ、より専門的な知見に触れる機会を設けていきたい。