2022年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 持続可能な生産と消費

東京都多摩市立連光寺小学校の学区域は、古く万葉からの歴史や里山が残っている。「総合的な学習の時間」を軸にしたESDに取り組む以前から、こうした地域環境資源を用いた教育活動を行ってきたが、ESDの視点で教育活動をトレースすることで一層地域との結びつきを深めたり、地域の外にも目を向けて学習活動を行うようになった。視野が広がったことによって、新たな学びの世界が開けたのである。6年間を通して、発達段階や学習活動のつながりを考慮したESDの実践により、児童の資質・能力・態度を育てるために、学年間のつながりのある生活科・総合的な学習の時間のカリキュラムをつくりあげることがきた。今年度は、私たちの取り組んできた環境教育をマスターピースとしたESDが、SDGsにどう寄与しているのかを明らかにする取り組みを行った。

年度末には、生活・総合発表会を2日間にわたって開催し、児童一人一人が1年間の学習活動をSDGsを達成することを結末として動画にし発表を行った。

 

1 ESDで育む6つの資質・能力・態度

<知識及び技能>

ア 環境や社会の仕組みを理解する。イ 学び方を身に付ける。

<思考力・判断力・表現力等>

ウ 課題をつかみ考え判断し解決する。

エ 価値を見いだし思いや考えを伝える。

<学びに向かう力・人間性等>

オ 人・自然・社会に関心をもち、意欲的に関わる。

カ 協力してよりよい社会をつくろうと行動する。

 

2 各学年の取り組み

どの学年も、育成する資質・能力・態度に合った活動を計画し、問題解決のプロセスを活用した活動を行った。

  • 1年生の主な学習活動「多様な自然体験」

一年間、季節を追って校庭や学区の公園で、生き物や樹木、草花などに触れ合ったり、友達と一緒に、自然や身の回りの物を利用した道具で遊んだりしながら、自然と関わる楽しさや自然の不思議さに気付く活動を行った。また、自分たちの学習活動、学校生活が、どうSDGsと関わっているのかを可視化し、地球市民としての意識付けを行った。

  • 2年生の主な学習活動「まちたんけん」

一年を通した「まちたんけん」の活動では、地域の公園や施設、商店などを中心に、関心をもって探検した。それぞれの施設で地域の人々との交流も行うことで、地域と自分との関わりに気付く。「連光寺のすてきなことを伝えたい」という思いを大切にして発表活動を行った。また、自分たちの学習活動、学校生活が、どうSDGsと関わっているのかを可視化し、地球市民としての意識付けを行った。

  • 3年生「都立桜ケ丘公園ガイドになろう」

一年間の活動を通して、総合的な学習の時間の学び方の基礎を身につける。学校に隣接する都立桜ケ丘公園や周辺地域の自然、歴史をテーマに、都立桜ケ丘公園ボランティアの力も借り、自分たちの足で確認したことをもとにした探究活動を進め、主体的に「課題発見・計画・実施・発信・行動」に取り組むことを通して、仲間と協働で活動したり、自分たちの思いや考えを発信したりする力を養った。e-ポートフォリオを蓄積することで、情報のまとめや発信活動の際に有効活用した。

  • 4年生「川は自然の宝箱」

多摩川での共通体験となる基礎講座を専門家の協力を仰ぎながら行ない、それぞれの興味や関心にそって、個人の追究テーマを決めて課題解決学習に取り組む。テーマには、魚・石・水質・鳥・植物などがあり、課題別にグループで活動していく。専門家の方にも継続的に調査方法や着眼点などを教えてもらい、探究活動を進める。

  • 5年生「連光寺SATOYAMAプロジェクト」

4年生で学習したことをもとに川の源である地域の里山を舞台として、さらに地域の森林環境の探究活動をESDの視点で行い、造詣を深めさせていく活動を実践した。地域の谷戸田での米作りと環境保全活動、竹炭づくりを体験した。さらに、個人のテーマをもち、里山や森林での動植物の調査やしながら、里山や森林、及び人間の社会活動との関わり、その価値や環境を守ることについて探究活動を進めた。地域の方々や専門家の先生方に協力を仰いでいる。

  • 6年生「未来に優しいエネルギー」

これまでの学習を活かし、さらにグローバルな広い視点をもつことを目指した。再生活動エネルギーである風力発電や太陽光発電、水力発電などに取り組むことで、再生可能エネルギーの可能性を探り、持続可能な社会の在り方を考えた。ゼロカーボンに取り組む建築士やFFFの大学生、SDGsを実践している企業等の協力も仰いだ。また、子供たちが発電した電気で、聖蹟桜ヶ丘駅前にイルミネーションを点灯させ、環境保全を訴えた。さらに、国連「持続可能な開発目標SDGs」について学びながら、これからの社会の在り方について考え発信した。

来年度の活動計画

今年度は、自分たちの学習活動がどうSDGsに寄与しているのかを意識付けさせ、より学びを自分事とするために、学習活動の最終段階でSDGsとの関連を視点として持たせ、まとめさせてきた。

これまでSDGsが国連や企業、政府が取り組みを進め、市中でもロゴを目にすることが非常に多い。目標達成年限の2030年に成人を迎えるであろう小学生にとって、今時点が子供だから大人の取り組むSDGsを見ていればよいというわけではない。受け手のいわば消費者教育にとどまらず、アントレプレナー教育を進めることが、次世代のSDGsを達成する人材育成につながるはずである。

あらためて学習計画を見つめなおし、自分たちの学んでいることがどのようにSDGsとかかわり、目標達成のために寄与していっているのかを明らかにする研究活動を行った。そこには、昨年度取り組んだe-ポートフォリオの活用を最大限生かし、学習活動を進めた。また、評価方法を明瞭化、1本化して児童の思考の変容を明らかにする試みも始めた。

次年度も、児童自身がSDGsを自分事とし、メタ認知を高めるために、学習活動の目的を明確化する研究に取り組む予定である。児童が自己の成長を自らつかみ、肯定することで、より主体的で自分事となるESDの実践活動につながるはずである。