2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 人権, 福祉, その他の関連分野

本校は、「自治と自由」の校訓のもと、「新たな未来を創造する人の育成」を教育目標に掲げ、ESDの実践を通して、地域の文化や社会的な課題に対する理解を深め、地域社会を維持し、担っていく力を培うとともに、広い視野を持って、異なる習慣や文化を持った人々とともに生きていくための資質や能力の育成を目標とした。

具体的には、ふるさと学習、国際交流を柱に、①世界遺産や地域の文化財等に関する学習、②SDGsの達成を視野に入れた学習を行った。

①世界遺産や地域の文化財等に関する学習

私たちが住む和歌山県には世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」があり、本校はその一部である高野山のふもとに位置している。空海の開いた高野山は1200年を超える歴史を有し、仏教の聖地として信仰の中心地であるだけでなく、国宝や重要文化財に認定された多くの仏教美術や建築物を保有している。この地域の宝である世界遺産や文化財を学ぶことにより、歴史や文化、伝統などに対する理解を深め、自分たちの地域に誇りを持ち、そのよさを発信し、地域の発展につなげることを目標に取り組んでいる。

中学校では、「総合的な学習の時間」にふるさと学習を行っている。3年間を通して、ふるさとに誇りを持ち、自らが次世代に向けてふるさとのよさを伝える担い手となるよう意識づけをすることを目標としている。1年生では、①世界遺産講座 ②みかんの話 ③和歌山市への校外学習 ④「わかやま検定」 ⑤橋本クイズなどを行い、「ふるさと」について理解を深め学んだ。和歌山県にある世界遺産、和歌山の歴史・特産品、和歌山に関連する著名人などについて学びを深めることができた。今年度はふるさと学習の現地学習が中止となったため、2、3年生は世界遺産マスターでもある堂宮大工の尾上恵司氏を招いて、世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」や堂宮大工の仕事について話していただいた。何百年前からの技術を現代まで引き継いでいることや、なぜ高野山にお墓が集まっているのかなど、興味深い話を聞くことができた。また、自分で手作りした道具を使って木材を削る作業を実演してもらいながら、生徒たちも実際に行った。

高校では、昨年中止になったオーストラリア海外研修に参加する予定だった生徒1、2年生9名が、研修のために準備していた「日本紹介」のパワーポイントを使い、中国西安外国語学校の生徒と「観光とSDGs」をテーマにオンライン交流を行った。事前学習として、高野山へ現地研修に行き、高野山霊宝館館長の山口文章氏を講師に、金剛峯寺や壇上伽藍の見学や「高野山の歴史と西安」と題して講演をしていただき、高野山の歴史や中国西安とのつながりなどについて学習した。現地で高野山の建造物を見学したり、その歴史を学ぶことにより、生徒たちは改めて地域の重要文化財である高野山を大切にしていかなければならないことを認識した。

②SDGsの達成を視野に入れた学習

中学校では「総合的な学習の時間」において、SDGs の17のゴールについて学習した。2年生では、SDGs のゲームを通して、2030年どんな社会を目指すべきかを考えた。3年生では、17のゴールについて調べ、和歌山県がかかえる問題と関連させながらゴールの達成には何が必要かを考え、1年生に発表する活動を行った。

高校では1、2年生の「総合的な探究の時間」において、SDGsの達成を視野に入れた学習を年間を通して行った。1年生では、橋本市の協力により農林業や高齢者、子育てや危機管理など市の抱える課題に対して、橋本市への施策提言を行うこととした。2度の発表会を実施し選ばれた優秀なプレゼンテーションの2作品を市長への施策提言として発表した。2年生では、SDGsの17の目標の内、10の目標から生徒それぞれが選んだ目標について、東南アジアを中心とする対象の外国と日本の課題を比較検討し、問題解決の提案を行った。発表は、1度目は各教室でSDGsの目標ごとに、2度目は各目標から選ばれた優秀なプレゼンテーション10作品を全体集会で発表し、グループから1つ優秀なプレゼンテーションを選んだ。

今年度はコロナ禍の影響で予定していた国際交流が中止となった。その中で、「総合的な探究の時間」等で学習した内容などについて、オンラインによる国際交流を実施した。

(1) 中国西安外国語大学附属西安外国語学校との交流

昨年度オーストラリア研修に参加する予定だった生徒と西安外国語学校の日本語クラス1年生の生徒が「観光とSDGs~日中高校生の視点から~」をテーマに2回にわたり、オンライン交流を行った。交流するに当たり、生徒たちは高野山の現地研修で、高野山を開いた空海と西安とのつながりや、海外の観光客が高野山に何を求めて訪れるのかなど学んだ。また、和歌山大学国際交流課の職員に講演していただき、海外の事例を通して、観光がSDGsにどのように貢献しているのかを学習した。両校の生徒は、自分たちの地域の観光スポットの紹介や、旅行プランを提案し、お互いの歴史や文化や習慣などを理解できた。また、グループディスカッションでは、発表した観光地についての話や、コロナ禍での日常生活の様子、日本のアニメやゲームの話などの身近な話題を、顔を見ながら会話をすることができた。海外研修ができない中、画面越しではあるが、同世代の子どもたちとの交流はとても貴重な経験となり、異文化理解するよい機会となった。

(2) 台湾台北市立南港高級中学との交流

2年生の総合的な探究の時間の取り組みの中で、台湾について研究している5名と、南港高級中学の生徒がオンラインで交流した。コロナ禍にあって、台湾や日本の日常の様子や、お正月の過ごし方などを意見交換し、台湾の現状を知ることができた。また、台湾の生徒の英語力の高さや積極性にも刺激を受け、大変貴重な経験となった。

(3) 中国四川省華陽中学との交流

本校の中国語選択生3年生と華陽中学の日本語クラス1年生とが中国語の授業内で交流した。本校の生徒はパワーポイントで、学校の紹介や日本で流行っているものなどを中国語で紹介した。お互いに、学習し始めたばかりの中国語や日本語を使って会話をするよい機会となった。中国の生徒は日本のアニメや食べ物などにとても興味があり、生徒たちも中国の生徒をとても身近に感じたようだった。

(4) 令和2年度文部科学省委託事業「ユネスコ未来共創プラットフォーム事業」ユネスコスクールオンライン近畿地方大会への参加

2020年11月1・8日はプレ大会、15日は本大会が実施された。この近畿大会は開催県から2校、兵庫、京都、滋賀、大阪から1校が参加し、和歌山県からは本校が参加した。3日間を通して「ユネスコスクール子どもフォーラム」が開催され、子ども宣言の作成が行われ、午後には2つの分科会とESD研究会が開催された。

本校では、15日の本大会における「子どもフォーラム」に昨年度の「総合的な探究の時間」の発表会で優秀作品に選ばれた2年生5名が「高齢者の居場所づくり」についての発表を行い、質疑応答を行った。午後には第2分科会において、本校教員から「ユネスコスクールにおける地域連携教育とSDGsについて」発表し、ESDの視点から本校のコミュニティースクールの取り組みと「総合的な探究の時間」の取り組みを発表した。

来年度の活動計画

①世界遺産や地域の文化財等に関する学習

中学校では今年度に引き続き、3学年とも「ふるさと学習」を総合的な学習の時間の中心として取り組む予定である。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」について、世界遺産マスターに指導を受けながら、SDGsに関連した学習をすすめていく。

②SDGsの達成を視野に入れた学習

中学校では、「総合的な学習の時間」で、SDGsの17のゴールについて知り、ゴールを「自分ごと」ととらえ、ゴール達成のために何が必要かを考える予定である。

高校では、「総合的な探究の時間」で、SDGsを核に学習活動に取り組む。1年次では、橋本市と協力して、農林業や高齢者、子育てや危機管理など市の抱える課題に対して市長へ施策提案を行う予定である。2年次では、SDGsの17の目標の内、10の目標から生徒が選んだ目標について、東南アジアのいくつかの国と日本の課題を比較検討し、問題解決の提案を行う予定である。

また、国際交流活動については、コロナ禍での制限がまだ続くと予想されるので、オンラインでの交流を推進したい。今年度オンライン交流を行った学校に加え、さらに交流できる学校を増やして、異文化理解、語学力、コミュニケーション能力を向上させる機会としたい。中国の姉妹校とも友好関係を継続させるために、オンラインの形で交流できるよう検討していきたい。また、2年生の「総合的な探究の時間」で取り組むアジアの国々と日本の課題を比較検討していく中で、オンラインで海外の高校生と情報や意見交換ができるように検討していきたい。