2022年度活動報告
本年度の活動内容
生物多様性, 海洋, 減災・防災, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, 貧困
(1)概要
本校では、「自分 友だち 社会の幸せをつくる子ども」と学校教育目標が掲げており、ESDを柱に学校教育目標の達成に向けて力をつくしてきた。特に、総合的な学習の時間、生活科の実践においては、長年にわたって積み重ねてきた経緯があり、その成果は内外に評価されている。
この3年は、「子どもと教師の変容を促す効果的なリフレクション研究」とのテーマ設定の下、リフレクション(Reflection以下、リフレクション)を取り上げて重点研究を行っている。一昨年より、「~自分、友だち、社会の幸せをつくる資質・能力の育成~」との副題を付し、学校教育目標の達成に向けて、子どもの資質能力の育成に効果的なリフレクションの在り方について研究を進めてきた。
資質能力の育成にあたっては、毎年、資質能力表を作成し、年度途中にワークショップ形式で見直す時間を設けており、職員からも効果的であるとの肯定的な意見が多く出ている。
(2)研究の目的
研究の目的は、大きく二つある。一つが子どもの資質能力の向上に資する効果的なリフレクションの在り方を探ることであり、2つ目は、同僚性向上と教師の信念の更新に効果的なリフレクションの在り方を探ることにある。これは、本校がESDのホールスクールアプローチの視点から、児童の資質能力の育成だけでなく教職員の働き方ややりがい、また校務の在り方も含めた学校教育全体をESDで捉えなおすことを重視していることによる。
(3) 児童のリフレクション
授業の実践概要は、主に総合的な学習の時間や生活科の実践をしている。各学級の実態に応じながら、ESDの視点で実践を重ね、必ずリフレクションを取り入れるようにしている。ここでは、主に3つの実践を紹介する。
1年生 「生活科」
「きらきら なかよし だいさくせん ~つうがくろ たんけん~」
本実践では、自分が毎日通る通学路に目を向けることで、みんなの安心、安全のために多くの人がかかわってくれていることを知った。また、実際に、安全を守ってくれる人たちとの交流を通して感謝の気持ちをもったり、安全のために自分ができること、やりたいことを考えられたりした変容が見られた。
子どもたちからは、普段接していて見守りをしてくれる人を自信たっぷりに紹介する姿や、自分たちも登校班の見守り活動に挑戦する姿が見られた。
4年生「総合的な学習の時間」
「チャレンジ!サスティナブルシーフード大作戦!!」
本実践では、横浜の海や魚を題材に、持続可能な横浜の海の姿に向けて自分たちに何ができるかを問い、体験的活動を通して、学習を深めてきた。
活動では、まず、国土交通省の方と人工干潟での生き物調査を行ったり、お話を伺ったりすることを通して、横浜の海の特徴や課題を知ることで、身近な海の姿を自分事としてとらえることができた。
また、中央卸売市場の方との交流や神奈川区の主催の地域清掃イベントに参加をすることを通して、自分たちができることを考え、実行に移していった。例えば、マイバックやフードロスに取り組んだり、学習したことをポスターにして紹介したりする姿などである。 さらに、学習活動をユネスコスクール交流発表会で積極的に伝えることもできた。
6年生「総合的な学習の時間」
「平和と平等の虹を架けよう 」
本実践では、SDGs10の「人や国の不平等をなくそう」をテーマに①アートマイルプロジェクト ②他校との交流 ③ユネスコスクールの役割について のプロジェクトを、差別や不平等の視点から考察し実践してきた。
特に①については、アフリカのルワンダの学校と交流を重ね、不平等について話し合うだけでなく、自分たちがその解決に向けて、どのような行動ができるか意見交流した。
話し合いを重ねる中で、日本の子どもたちは、ルワンダへの文房具支援活動を思いつき、ルワンダの子どもたちにも意見を聞きながら全校に呼び掛けて、活動を展開した。また自分たちとルワンダの子どもたちと協同で、学習のメッセージを込めた壁画を完成する予定である。
子どもたちは国を超えた人権意識が芽生えるとともに、身近にある差別や不平等、また自分の普段の言動にも目を向けて考えを深める姿が見られた。
(4)教職員のリフレクション
職員のリフレクション研究の在り方として、研究会では「協同的なリフレクション」を取り入れている。これはリフレクションをテーマに設定してから、研究会の在り方を毎年模索して、修正を繰り返し定着してきたものである。概略として授業者の振り返りをもとに、参加者が小グループで話し合い、対話を重ねていく。授業の正解を探ることを目的とせず、授業者と参加者の内省を深めながら、協同性を高めることを目的とした実践である。
また、夏には校務の改善について全職員が参加して話し合った。ここではリフレクションをより促す手法としてPMIといった思考ツールを取り入れて対話を重ねた。学校の当たり前を当たり前として受け止めず、持続可能な学校の在り方を探る手法とした実践である。実際に、夏での研修を受けて、年度末を待たずに、改善に動いた業務が複数ある。
上記の実践を行ってきた結果、同僚からは同僚性の向上を実感したり、学校の変容を実感したりする声が多く出ている。
以上、本校のリフレクション実践と成果の一端を紹介してきた。こうした変容は、児童と教職員がともにリフレクションを起点に変容を繰り返すことで、生まれた成果であると考えている。しかしながら、たとえ、そのような変容がみられない児童や教職員がいても、「誰一人取り残さない」との信念のもと、関わっていくことこそがESD実践であることを、本校では確認し合ってきた。引き続き、持続可能な社会の創り手の育成に向けて、本校の実践を高めるよう努めていきたい。
来年度の活動計画
次年度も、本年度の活動の成果を踏まえて、リフレクション実践をベースに児童、教職員、そして学校の持続可能な変容に向けて取り組む予定である。