2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 食育, 貧困, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)

 

自由の森学園遠景

自由の森学園遠景

本学園は「点数によらない評価、競争を廃した教育」を掲げ、それを求めて県内・県外を問わず様々な地域から生徒が通っているが、学園が立地する「飯能」の里山・森林地域の文化と環境に関わることで、自分の住む地域社会の持続可能なあり方、更には国際社会全体の持続可能性を考え、自立して行動する認識と姿勢を育てることを目標としている。

昨年より、学園寮の重油ボイラーを木質バイオマスボイラーに切り替え、地域で出る産業端材をエネルギーとして利用し、地域と繋がり、生徒が環境について感じ、学べる場所の象徴として運用を始めた。また、公用車の1台をBDF(再生天ぷら油)車両に切り替えカーボンニュートラルを目指している。

自由の森学園バイオマスボイラー

バイオマスボイラー

①中学では総合学習の時間に「森の時間」という名前を冠し、飯能地域全体を学ぶ場として様々な活動的な授業を行い、②高校では3年間で誰もが選択できる選択授業としてESDに係る授業を多く開講している。③また、学内の食堂は、徹底した手作り、安全な食材の使用、地域の食材の使用にこだわっており、自分達の口に入るものがどう作られているかを知ることがESDの役目を果たしている。④今年度は、「自由の森学園は、SDG/ESDとどう向き合っているか」をテーマにオンラインでの公開教育研究会を行った。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD

 

① 中学総合学習「森の時間」の活動

「開墾~稲作・地域のフィールドワーク ~そしてナイトウォークへ。地域学びの集大成、沖縄修学旅行へ」

昨年の1年生は、学校近くにある休耕田を「開墾」するという活動を上半期に週1回行った。新型コロナのよる約2か月の休校期間明けということもあり「休校で眠っていた生徒の体を目覚めさせる」という新たな目標も兼ねて、足袋を履いてぬかるみに入り、その感触を味わいながら自分達だけの田んぼをつくった。今年はその開墾した田んぼに苗を植え、稲を育てた。同時に、今年の1年生と共に異学年交流の場として、今までつくってきたもうひとつの田んぼづくりに取り組み、餅をつく収穫祭まで行うことができた。飯能地域のフィールドワークから始め、地域の昔からの産業である「林業」に関係するものを発見することからスタートして、今後学園に隣接した人工林で間伐体験も行う予定である。「林業」という産業の持つ持続可能性、そして一度自然に手を入れたらその後も手を入れ続ける必要があることなどを学んでもらった。

自由の森学園田んぼづくり

自由の森学園田んぼづくり

2年次には、1年間を通してふたつの田んぼでの米づくりを進めながら、江戸時代に木材を筏で流した川沿いを学校をスタートして上流に向かって歩く6時間のナイトウォークを行うことをメインとして準備を進めた。その過程で、地域を歩くことで地域を知るをテーマに、名栗の子の権現、竹寺を歩き、準備を重ねた。ナイトウォークは伐り出した材木を筏にし、それに乗って名栗川を下った職人が帰りに実際に歩いた道のりの追体験でもある。夜間に歩くことで蛍や鹿など、山間地域ならではの野生生物に出会える体験でもあったが、新型コロナの影響もあり、宿泊を伴わないデイウォークに変更し、名栗から学校に向かって降ってくるプランに変更した。様々な変更を余儀なくされたが、ゴール付近に差し掛かった時には夜になり、学校での感動的なゴールとなった。後期は、命やジェンダーについて考える7回の特別講義を、外部講師をお招きして行なっている。現在は、3年次に向けた修学旅行づくりが始まっている。

自由の森学園ナイトウォーク

自由の森学園デイウォーク

3年次には、2年次からつくり始めた修学旅行の実施である。修学旅行はプランが決まっているわけではなく、これまでの「地域をよく見て、自分で歩き、考える活動」の延長にあり、生徒がどんな沖縄に出会うか?を自分たちで決める旅づくりになっている。自分の立っている足元が沖縄の地に変わった時、どんな出会いや学びをつくって行きたいかについて半年以上かけてつくっている。今年は、やんばるの自然・生き物と出会う、沖縄の海に出会う、沖縄のひとに出会う4コースが立ち上がった。修学旅行の後半は、ガマや基地、佐喜真美術館、ひめゆり資料館等を訪れる平和学習を行っている。授業のカリキュラムも、日本語(国語)、社会、音楽、人間生活科(家庭科)、理科等の教科が横断的に沖縄に関する授業を実施し、約半年間の事前学習を行い出発している。後期の終わりは、3年間のESDの取り組みを元に、生徒が様々なテーマについて探求し発表を行う学習に取り組む。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20中学森の時間

自由の森学園中3修学旅行

自由の森学園中3修学旅行 やんばるの自然と出会う

自由の森学園中3修学旅行

自由の森学園中3修学旅行 平和学習

 

 

② 高校での選択授業の活動

小岩井生態学(理科)

理科・生物学的な視点で、飯能地域の森林、農地、市街地を含む空間の生態系を調査、データ収集を行った。自然環境の再生や保全、生物多様性、外来生物、持続的な資源管理について学び、発信することを目指す。今年も、生きものにひたすら出会うスタディーツアーin西表島を計画中。
https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20小岩井生態学%EF%BC%88地域生態学%EF%BC%89

 

林業講座(総合)

学園周辺の民有林を借りて間伐などの作業を中心に、森林とその生態系、産業としての林業に関する諸問題を学ぶ講座である。自然科学、社会科学、労働、地域という4つの視角で森林を考えることを目指した。例年は白神山地と足尾の植林のスタディーツアーを行なっているが、コロナの影響もあり、今年は足尾のみ行なった。
https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20林業講座

 

ベンチをつくる(木工 美術)

中禅寺湖にあるホテルの庭で風倒木となった木を預かり、それを製材しベンチにつくり変え、また元の森に返しゆっくりと朽ちていく。朽ちゆく木にもう一度、人が触れ合う時間と場所をつくりだし繋げる講座。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search?q=ベンチ

 

選択講座「自然」(理科)

学内のビオトープのデザインと修復作業、学園の自然マップの作成、学校林の管理とシイタケ栽培、ミツバチの飼育と観察などを行い、「自然と人間」について考える講座である。現在は、ツリーハウスの補修再建を行なっている。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20土曜自然(学校自然)

 

環境学(公民科)

小川町風土活用センター生ごみ資源化バイオマスプラント、西川地域木質資源活用センター(ペレット燃料工場)、群馬県上野村バイオマス発電所などを訪問し、エネルギーの観点から、日本と世界の環境について学ぶ講座である。校内にキエーロを設置し、学園食堂で出た生ごみ等を処理し、体験的に学んでいる。
http://jiyunomori-nikki.blogspot.com/2018/11/blog-post_29.html

 

飯能地域研究(公民科)

飯能市を調査し、更にそれを外部に向かって発信することを目標とする講座。今年度は『ロゲイニング』というゲーム形式を用いたツアーを生徒が企画し、子供から大人までを招いて飯能の町を知ってもらう機会である。夏と冬の年2回行った。飯能市が企画をして、飯能市の魅力を伝えるプランを公募する「プランニングコンテスト」に参加し、その活動は地域の新聞にも掲載された。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/2019/01/blog-post_69.html

 

福祉の現場へ(公民)

福祉施設でのボランティア活動や岩手県釜石市の仮設住宅、学園食堂と関わりのあった福島の農家さんのところへのボランティア、スタディーツアーを行った。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20福祉の現場へ

 

タネ(理科)

近年出回っている「F1品種」と「固定種」の違いを学び、「固定種」の種から大根、ナス、トマトなどを育てる。固定種からは継続的にタネが収穫でき、そのタネが次年度の講座の教材となる。地域の畑をお借りし、体験的に学んでいる。
https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20タネ

 

ワールドピースラボ(地理、現代社会)

ワークショップを通して世界の現状を知り考える講座。これまで外部ファシリテーターを呼び、SDGsカードゲームや100人村の世界、ワールドピースゲームといった疑似体験授業を行い、地球に生きることの意義を考えることを狙いとしている。

 

③ 学園食堂の活動

食事に使う全ての出汁は、毎日早朝から昆布から煮出したり、パンは小麦粉を捏ねて食堂内で焼くほど、すべての食事を徹底して手作りしている。減農薬の野菜、抗生物質を使用しない食肉の使用、地域の食材の使用にもこだわり、また生ごみは敷地内のコンポテストで完全処理している。また、食堂で使用済みの天ぷら油は、食堂内で使う石鹸やBDF車両に用いている。

https://jiyunomori-nikki.blogspot.com/search/label/ESD%20食生活

 

④埼玉県飯能市に1985年に開校した自由の森学園中学高等学校。独自の教育理念をもち、豊かな自然環境を活かした環境教育を積極的に実践してきました。2017年にユネスコスクールに加盟を認められました。

開校以来、毎年秋に公開教育研究会を開催し、教育研究者や市民の方々を学園に招き学園の教育を開き、研究研鑽を積んで参りました。今年度は、「自由の森学園は、SDGs/ESDとどう向き合っているか」をテーマにオンラインでの公開教育研究会を行いました。学園が行っている実践の紹介や、実践家との対話など多角的にご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=ulXYTHiLiWQ

自由の森学園公開教育研究会2021

自由の森学園公開教育研究会2021

 

自由の森学園 中学校・高等学校

来年度の活動計画

今年は様々な制約の中でも、できる限りの体験、経験を生徒にしてもらえるように工夫して実践を行った。その制約の中で新たに生まれた良い実践もあった。来年度は、それらのことも踏まえ新たな実践を探求していきたい。しかし昨年も断念した、マレーシア・ボルネオでの海外スタディーツアーはいまだに先行き不透明なままである。現地のユネスコスクールのアーメダシャー高校とは今も定期的に連絡を取りつつ、開催までの準備をゆっくりと進めているところである。

自由の森学園の田んぼづくり

自由の森学園の田んぼづくり