2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

海洋, 減災・防災, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 国際理解, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 健康, 食育, 貧困, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)

「ユネスコスクールガイドライン」に記されている以下の点にそって本校の取組を示す。

 

1 持続可能な開発のための教育(ESD)を通じて育てたい資質や能力を明確にし、自分で、あるいは協働して、問題を見出し、解決を図っていく学習の過程を重視した教育課程を編成するよう努めること。

2 地域の社会教育機関、NPO等との連携などを通じて、開かれたネットワークを築くよう努めること。

 

1 育てたい生徒の資質と問題解決学習を重視した教育課程

育てたい資質や能力を葺合高校独自で定めた「Neo MAKS」12の力を広く公表している。以下の通りである。

Mind   ① 物事を多面的に見る力 ② 他者の痛みを理解しサポートする力

③ 多様性の中で協働する力

Attitude  ④ 経験と知識を融合させる力

⑤ リーダーシップをとり責任を持って調整する力

⑥ 柔軟性に富んだ問題解決力

Knowledge ⑦ 自国や他国の文化・歴史に関する深い知識と理解

⑧ 科学的知識を活用する力

Skills     ⑨ ICTを主体的に使う力

⑩ コミュニケーション力

Neo    ⑪ 普遍的正義感

⑫ 新しい価値観の創造

 

また、さらに生徒が主体的にあるいは協働的に問題を見出し、解決を図っていく学習の過程を重視した教育課程を編成し、学際系科目の7科目を設定した。

上記12の力をどの科目のどのような活動で育てるかは各科目で決めている。

(1)グローバルスタディーズIA(GSIA) (2)グローバルスタディーズⅡB(GSⅡB)

(3)グローバルスタディーズⅡC(GSⅡC)(4)グローバルスタディーズⅢC(GSⅢC)

(5)学際国語  (6)学際リサーチ  (7)学際フードデザイン(令和3年度より)

 

それぞれの科目の形態と取り組み内容は次の通りである。

(1)グローバルスタディーズIA(GSIA)国際科1年生 必修

2年時に行う課題研究に向けた基礎学習を行う科目で、「言語」「宗教」「人口」「教育」「文化」「貧富の差」「政治」「経済・産業」を題材とした。日本人英語教員とALTが担当し英語で授業を行なう。

 

(2)グローバルスタディーズⅡB (GSⅡB) 国際科2年生 必修

SDGsの17の目標より絞り込んだ5つの分野(教育、環境、健康、福祉、人権)から、各自が関心のあるテーマを選び、課題研究に取り組み、英語で論文作成を行った。英語科教員、ALT、外国人講師等が担当した。また、ポスターやパワーポイントの作成を行い、プレゼンテーションも実施した。校内外での発表に向けての指導も担当教員が行った。

 

(3)グローバルスタディーズⅡC(GSⅡC) 国際科2年生 選択

地歴公民科教諭、英語科教諭とALTの3名が担当する科目内連携の学校設定科目である。生徒が複眼的な視野を育成し、社会の問題解決を目指して、主体的に学び考える日本語と英語による授業を展開している。政治・経済・環境・人権・教育に関する諸問題をテーマに取り上げ、考察してきた。また、オーストラリアオリンピック委員会主催による交流プログラム「オーストラリア・オリンピック・コネクト2020」を姉妹校のオーストラリアのウエストボーングラマーハイスクールと協働で取り組んだ。

 

(4)グローバルスタディーズⅢC(GSⅢC)国際科3年生 選択

英語科教諭3名とALT2名が担当する科目である。7月のWWL International Conference Online 2020では“Risk Management: International Cooperation during the COVID-19 Global Crisis”をスローガンに「教育」「健康」「経済」「人権」「情報」をテーマにプレゼンテーションの準備を行った。会議の後は、ポスターの作成や啓発のプレゼンテーションを行うなど問題解決のために実際に行動を起こした。コロナ禍において、国際協力の重要性が高まっていることを鑑み、10月から「武器輸出」を議題に模擬国連に取組んだ。

 

(5)学際国語 普通科2年生 英語系 文系必修

学際国語は、今年度初めて開講された。文理融合、教科横断的な学びを念頭に置きながら、テーマをリスクマネジメントに設定している。国内外には多くの「課題(リスク・禍)」が存在するが、それを他人ごとではなく「自分ごと」として受け止め考える姿勢を培うことを目的としている。令和2年度は国内外における「課題(リスク・禍)」について、日本語で書かれた文章または資料を総合的に読解し、また、新たな視点からそれらの問題を考察できるよう、多様な方法知の習得にも取り組む。主体的・対話的で深い学びとなるよう、いわゆる講義型は少なくし、ペアワークやグループワーク、ディスカッション、プレゼンテーション等、生徒たちが活動の主役になることも目指した。

 

(6)学際リサーチ 普通科2年生 英語系文系 選択

学際リサーチは教科「学際」として、今年度初めて開講した授業であり、教科「学際」の目標はイノベーティブでグローバルなリーダーに必要な、新しい価値観を創造する力を複数科目で育成することである。また科目「学際リサーチ」の目標は人権、環境、経済に関するテーマについて、社会的視野と科学的視野から考察することにより、人権問題や環境課題、経済問題に対しての本質的な解決方法を考え、社会に提案することである。

1学期のテーマは「ゴミ問題としてグローズアップされるプラスチックは本当に悪なのか」「日本の移民受け入れ拡大は是が非か」「原子力発電所のある世界、ない世界、あなたはどちらの未来を選択しますか」であり、2学期は個人でテーマを選び、研究を進めた。

 

2 社会に開かれた学びの実践――地域の社会教育機関、NPO等との連携

 

コロナ禍のため4・5月は学校が休校になり、今年度は国内外の大学・国際機関・企業・自治体・NPOなどに講義やワークショップを依頼できるか心配したが、学校再開直後の6月下旬にWHO神戸センターの茅野医務官に ”Global Health Development and COVID-19 Pandemic” というタイトルで英語でオンラインの講義をしていただき、生徒から予定時間を超えて質問が続いた。ALネットワークを継続発展させるために、IT企業(株式会社OPTiM)による講演会やオンラインワークショップ(Google主催)を実施した。本年度の講座は対面とオンラインを併用して、国際機関2講座、国内大学10講座、海外大学3講座、企業2講座、自治体5講座、NPO3講座の計30講座を開催することができた。内容は、国際保健、AI, グローバル社会、共生社会、リスクマネジメント、コミュニケーション、課題研究の進め方などである。さらに1年生対象には「探究の日」を設定し、グローバルな課題解決に取り組む国際機関、企業、NPOや自治体による対面やオンラインでの13講座を開講した。

以下は、社会に開かれた高度な学びのネットワークに関わる本年度の連携先である。

大  学:神戸市外国語大学、神戸大学、兵庫教育大学、大阪大学、筑波大学、立命館大学、関西学院大学、甲南大学、中京大学、アテネオ デ マニラ大学(フィリピン)他

企  業:アシックス、神戸新聞社、UCC、NTTドコモ、イオン、オプティム、Google、みらい翻訳、フードピクト、レアジョッブ、スカイライトコンサルティング他

国際機関:WHO神戸センター、JICA関西、ユニセフ兵庫県協会他

自治体他:神戸市環境局、神戸市企画調整局、神戸市国際課、神戸国際コミュニティーセンター、理化学研究所、神戸税務署、神戸市社会福祉協議会、コンソーシアムひょうご神戸他

NPO 他:TABLE FOR TWO、DEAR ME、Future Code BYCS、PALAFOOL、がくボ会、アジア福祉教育財団、多文化センターまんまるあかし、神戸親子療育サークル、神戸外国人救済ネット他

 

本校が企画運営した高校生国際会議(WWLインターナショナルコンファレンス2020)はオンラインで、5つの国と地域の合計175名の生徒が参加し、活発な討議が行なわれた。また、WWLフォーラムでは、本校生に4つの神戸市立高等学校生が加わって、多様な分野の発表を聞き、考察を深めることができた。また、本校主催のWWL課題研究交流発表会の開催にあたっては、11校と事前の情報共有と綿密なリハーサルを行い、当日はインターナショナルスクールを含め生徒148名が、オンラインでの発表とディスカッションに取り組んだ。

来年度の活動計画

生徒が主体的にあるいは協働的に問題を見出し、解決を図っていく学習の過程を重視した学際系科目7科目うち、「学際フードデザイン」が普通科3年生対象の選択科目として2021年度に開始される。これまでに設定されているグローバルスタディーズIA(GSIA)、グローバルスタディーズⅡB(GSⅡB)、グローバルスタディーズⅡC(GSⅡC)、グローバルスタディーズⅢC(GSⅢC)、学際国語、学際リサーチは、授業ごとに丁寧に振り返りを行ない、生徒の12の力を育成できるように教材・指導法とも改善していきたい。

 

2021年度も、対面とオンラインを組み合わせて学校外の国際機関、大学、企業、自治体、NPO等度連携をして高度な学びを提供していく。神戸市にある第一線の研究機関である先端医療研究センターや世界で3番目の設置となるSDGs上の課題解決を目指すUnited Nations Office for Project Services(国連プロジェクトサービス機関)との新しい連携を試み、医療分野や起業分野の充実も測りたい。

 

2021年7月に開催予定の高校生国際会議、WWC(ワールド・ワイド・コンファレンス)は、海外5カ国(地域)から高校生を招待し、課題研究の発表の他に、活発な議論を行ない、提案を実現するための行動計画を立てて、主催していく予定である。10校ほどの生徒が集まり、神戸市文化ホールで基調講演、全体会を行う。英語日本語によるポスター発表、分野別プレゼンテーションでは、文理融合の学際的テーマを扱う。現在の世界で共通の課題に、高校生同士が自ら解決策を探り行動を起こす協働の機会とする。海外からの来訪がコロナウイルスのために不可能になった場合は、2020年度と同様オンラインで行なう予定である。前もって海外の高校とのオンラインの連絡や準備が大変だと考えられる。参加生徒にとっても良い経験になるように発表・討議・運営を丁寧に行なう。

2021年度12月には、本校主催で引き続き課題研究交流発表会を実施する。対面かオンラインか状況をよく見て判断する。WWLの共同実施校、連携校、SSH校など、様々な特徴のある高校が参加し、理系、文理融合型のポスター発表やディスカッションを実施する。2021年度も各校の特色が発揮でき、各校が相互補完となる機会を設定する。

さらに自治体や他大学主催の課題研究発表会や生徒の海外派遣などは、視野を広げたり実践力をつけたりする生徒の成長の機会である。生徒に案内と指導を行なっていきたい。