2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

環境, 文化多様性, 国際理解, その他の関連分野

本校では国際協力プロジェクトという授業を高校2年、総合的な学習の時間にて実施している。本授業ではそれぞれのクラスが割り当てられた開発途上国を担当し、その国の問題を発見、解決のための行動を起こす。その過程の中で生徒たちはSDGsの概念について触れ、それら問題に対する様々なアプローチ方法を体験的に学んでいく。本プロジェクトはJICAを始めとした外部団体、近隣大学生、そして本年度からは東京ニュービジネス協会の協力も得て活動を展開した。

まず、学期当初に自身らが担当する開発途上国の現状について調べ、活動経験のあるJICA青年海外協力隊隊員(以下JOCV)の話を聞いて見聞を深める。本年度の担当国は1組ケニア、2組フィリピン、3組バングラディシュ、4組ミクロネシア、5組スーダン、6組モザンビーク、7組グアテマラ、8組ルワンダ。その国の事情について理解を深めた後、生徒たちは各自で担当する国の問題を発見、その問題を解決するための方策を企画書という形で提案する。提案される企画は「今の自分たちにできる」ということが大前提である。つまり、現地に行けない中で、限られた情報を基に相手国の状況、文化、歴史を考慮し思い描きながら企画を立案していくのである。自ら企画を立てて実行するということを今まで実践したことの無い高校生が大多数のため、企画の視点や規模が大きくなり過ぎる傾向があった。そのため、SDGsという枠組みは大きく捉えられ過ぎることになり、授業本来の目的であるSDGs達成には高校生という立場からでもそれぞれの関わり方があるということに気づくと言う当初の目的が達成できなかったケースがこれまで散見された。その原因として、企画達成のための具体的な思考のプロセスが確立されていないことが考えられた。今年度はその問題を解決すべく、開発コンサルタントを授業に招き、プロブレムツリーの活用方法を中心に考え方の表出方法について特別授業を実施した。企画はクラス内でデーター共有し、参加したいとプロジェクトについてアンケート調査を実施する。アンケートでは自分のプロジェクトへ応募しても良いし、他の人間が提案したものに投票しても構わない。プロジェクトはアンケートの結果5名以上の応募者があったものを採用としている。ここまでが1学期の授業内容である。

2学期からはグループ活動が主となる。プロジェクトメンバーで集まり、自身らのプロジェクトの内容と期待される効果について10月に行われる外部有識者を招いた中間報告会に向けたプレゼンテーション制作を行う。プレゼンテーションの作成作業に入る前に、グループ内で企画を熟考する機会を設けている。グループに企画者がいる場合はまだ良いが、いない場合もあるので、企画の趣旨や実行までの行程をここで擦り合わせる。今年度はその作業の質を高めるため、スタートアップ企業が研修会等でアイデアを表出させるために活用する、「リーンキャンバス」というものを本授業に即した形に修正し活用した。

情報授業とも連携する本授業では、プレゼンテーションスライド作成に関する技術指導はそちらの時間が担当することとなる。近隣大学生も要所毎にサポートに入り、プレゼンテーションに落とし込む過程において、自身らのプロジェクトの課題点等について指摘を受けながら修正する作業も同時に行う。こうして完成したプレゼンテーションスライドは中間報告会の際に、外部有識者の前でプレゼンテーションを行い、アドバイスをもらう。本プロジェクトは世界課題を解決することを最終目標としているため、ソーシャルビジネス的な要素を含む。そのため、東京ニュービジネス協会の協力を仰ぎ、起業家を中間報告会に招き、生徒たちが立てた計画と実社会のニーズという観点という従来とは異なる視点でのコメントを得られる機会としている。

中間報告会後はいよいよ自分たちの計画の実践である。仲間と協働しながら、プロジェクトを進めていくのだが、その過程において様々な困難に直面する。例えば、物資を送ることを計画していたが送る先が練られていない。企業と共同しようと計画していたが、その企業からの協力が得られなかった等。その都度、自身らの計画を修正し完遂へと進んでいく。その過程において生徒たちは仲間と協力することの大切さや課題を克服する柔軟性を身につけることができるのである。

プロジェクトは1月一杯で終了し、2月からは次年度担当する現高校1年生に対するポスタープレゼンテーションと報告書の作成に入る。ポスタープレゼンテーションでは再び情報の時間と共同し、技術指導を担当してもらう。2020年3月に予定されている成果報告会では高校1年生全生徒に加え、中間報告会に出席した外部有識者やその他教育関係者を招き、各クラスの取り組みについて発表する予定である。

来年度の活動計画

プロジェクトの実行段階に入ると生徒たちは自身らの力で企画の完遂に向け始動する。要所で大学生のサポートや教員の指導が入る。今年度は新たな取り組みとして、企画実行段階で一度JOCVに来てもらい、自身らの取り組みを評価してもらう機会を設けた。そこでは、企画の行き詰まりなどについて助言を求めることができ、その結果、生徒達はプロジェクトの達成に向け、大きな進歩を感じることができた。次年度は今年度課題となった、大学生アシスタントの指導力向上に向けたオンライン教材の作成等を行い、プロジェクト完遂のためのバックアップ体制を整えていきたい。

(1年間の流れ(概要))

4月〜5月 担当開発途上国調べ学習

6月〜7月  課題発見、解決の提案・プロジェクト実行アンケート調査

8月〜10月 中間報告会準備

11月〜1月 プロジェクトの実行

2月 活動報告準備