広島県 / 熊野町立熊野第一小学校
「被災当事者」でありながら「復興当事者」でもあるという情意的葛藤の中から地域とのつながりを紡ぐ減災教育
【事例紹介者(ASPUnivNet)】広島大学教育学部 教授 由井義道,准教授 永田忠道
(支援担当地域:広島県・山口県)
学校ステータス
(2021年12月執筆当時)
加盟校
教科等/特別活動 社会科・総合的な学習の時間
学年(または年齢) 第5学年
活動テーマ 持続可能な開発と持続可能なライフスタイル
事例の特色

平成 30 年7月豪雨災害の「被災当事者」である子どもたちが,実際の被災経験をもとに,具体的に郷土の減災と防災力向上について復興に携わる人々と関わる中で, 自分自身が「復興当事者」でもあることに気付き,自分のこととして考えを発信し,具体的行動に移し続けていくことのできる資質・能力の育成を目的としている。

取組の詳細

本活動は,第5学年の「総合的な学習の時間」で取り組んできた防災・減災教育に加え,カリキュラム・マネジメントによって社会科の小単元「自然災害とともに生きる」とつなぎ,地域の減災レガシー構築のためのカリキュラムづくりを目的とした実践である。
実践内容としては「総合的な学習の時間」で,熊野町の災害について調査し,前述したねらいをもとに自分たちにできることを考えさせ,実際に行動・発信させた。「社会科」では,近年日本各地で頻発する自然災害への取組から,「被災当事者」と「復興当事者」の視点において共通項を見付けさせ,「災害に強いまちづくり」に活かすことができるか等,その関連性に着眼し,「総合的な学習の時間」との相関性をもたせながら思考の深まりを追求した。
本実践は,子どもたちが漠然と「災害に強いまちづくり」を構想するものではなく,実際の被災経験から「当事者性」ではなく「被災当事者として」の切迫感の中で情意的な高まりを整理していきながら,「復興当事者」でもあることを認識していく活動である。子どもたちの「大切な人の命を守る」という想いの強さから紡がれた主体的な行動や発信こそ,家族はもちろん多くの熊野町住民の心を揺さぶり,巻き込み,大きな渦となってまちの復興を支えるものとなっている。

ASPUnivNetによる
支援の内容

広島県熊野町は,町内の4小学校と2中学校がユネスコスクールに加盟している。熊野第一小学校では,世界的にも評価の高い熊野筆の産地として,低学年書道科(第1・2学年/年間 15 時間),筆作り体験・筆踊りの伝承(第4学年)③郷土と紡ぐ防災・減災教育(第5学年)④創作和太鼓「筆が舞う」の取組(第6学年)⑤小学校外国語パワーアップ事業指定校等の教育活動を,地域や広島大学の担当者などとの連携を緊密に図りながら,継続的に行っている。特にASPUnivNetの広島大学の担当者は熊野第一小学校とともに町内の他の小中学校の研究開発にも継続的に指導者・助言者として参画している。

取組を通して
変容が見られた点

熊野第一小学校の活動は ESD の観点において「批判的に考える力」「未来像を予想して計画を立てる力」「多面的・総合的に考える力」の育成が進められている。人々の社会生活における復興とは,被災前の元のまちの状態に戻そうとすることではない。子どもたちは,復興に携わる人々とつながる中で,「復興当事者」でもあることを徐々に認識し,災害に強いこれからの新しいまちづくりについて,復興に対する新たな価値観をもって,これからの郷土の姿を想像し,自ら今できること,これからできることを考え,発信・行動していくことができた。

資料・画像・動画等