2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

環境

本校は、広島市の中心部から車で約45分、雄大な西中国山地に囲まれた湯来町に所在している。湯来町は、1500年前に、傷ついた白鷺が傷を癒やしているところをみた村人により発見された「湯来温泉」と、1200年前に発見され、江戸時代には藩主浅野公の湯治場として栄えた「湯の山温泉」の2つの歴史ある温泉に加え、ホタルの飛翔の鑑賞、魚のつかみ取り、鮎釣りや神楽など、豊かな自然や伝統芸能でも知られる町である。

本校は、全校生徒24人の小規模校で、生徒のほとんどが保育園等就学前から小学校6年間をほぼ同一の顔ぶれでのびのびと過ごし、中学校に入学してくる。このような小規模校の良さを生かし、生徒同士はもちろん、生徒と教師、保護者や地域が連携・協働しながら教育活動を展開している。

本校独自の取組である「水内川水質調査」は、学校経営重点目標のひとつである「豊かな人間性の育成」を目指し、総合的な学習の時間を中心に、2006年(平成18年)から14年間継続して実施している調査である。

本校の総合的な学習の時間では、「問題解決学習を通じて《生きる力》と《総合的な視野》を育成し、論理的表現力を身に付けさける」ことと、「地域社会の一員としての自己の役割を考えさせる時間とする」ことの二つを目標に掲げ、3年間系統的な調べ学習を通して学びを深めている。特に、最終学年である3学年では、「課題解決のための情報を収集・整理・分析し、これからの自分が将来、地域に貢献できることを発信できるようになる」ことを目指し、「自然界の循環型社会形成を知るための自然しらべ」と題した上述の水質調査を以下のような方法で実施している。

1.水内川での水質調査・環境調べ学習(月)

総合的な学習の時間を利用して、地元を流れる水内川の「データの分析と水質階級の判定」と「水内川の水質実態調査」を平成18年から継続して行っている。今年度は、9月17日から調査に向けた事前学習を3時間行い、9月18日の午後、毎年調査を実施している5か所において定点観測を行った。この調査を実施するにあたっては、教職員に加え、地域の環境調査に長年携わるともに、本校の生徒にその調査の意義や調査方法、分析方法について指導してこられた地域の方など、外部講師3名にも参加をお願いしている。具体的には、5か所それぞれで、①水温の計測 ②ph(水素イオン指数)及びCOD(化学的酸素要求量)の計測 ③水生生物の採取を行い、バケツで学校に持ち帰った水生生物の種類と個体数を観測、記録した。

2.校内で調査結果をまとめ報告するための学習(10月~11月)

9月下旬から10月にかけ、校内で調査結果に関する考察を行い、考察結果を報告にまとめ推敲を繰り返し、論理的思考力の育成を図った。

例年は、グループごとにパワーポイント及び掲示物にまとめ、10月の文化祭で全校生徒や保護者・地域住民を対象に、3年生全員が調査結果の報告を行っていたが、本年度は新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、校内において展示のみを行うことした。また、例年は、地元湯来西公民館のふれあいまつりにおいても展示を行うこととしており、こうした取組は、学校関係者だけでなく、地域の方へも広く啓発を行っている。

来年度の活動計画

令和3年度は、本校のこうした取組が国際社会共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の取組と重なっていることを踏まえ、総合的な「ふるさと(湯来)」の学習の時間において、SDGsに関係した世界の動きを知り、自分たちが行っていることが、地域にとどまらず、地球環境にも大きく影響していることを生徒に理解させたいと考えている。

本校は、これまでも地元の水内川漁協や広島市湯来交流体験センターの指導のもと、「鮎の稚魚の放流」体験やカヌー体験等を実施してきた。これらの活動は、3学年の生徒を中心に、総合的な学習の時間や放課後の時間において実施していたが、生徒数の減少により、3学年の生徒だけでは調査を継続させることが難しくなってきた。そこで、来年度は、総合的な学習の時間をはじめとする教育課程を見直し、全校生徒での調査に変更するなど、持続可能な調査方法への転換を図る予定である。(図1参照)

なお、これまで目標としてきた「問題解決学習を通じて《生きる力》と《総合的な視野》を育成し、論理的表現力を身に付けさせる」ことは引き続き重視した上で、国際社会共通の目標であるSDGsと水内川の水質調査を中心とした「自然界の循環型社会形成」を知るための学習を結び付けながら、湯来地区だけでなく広く他の地域にも発信していきたいと考えている。

【図1】