2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 減災・防災, エネルギー, 環境, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 福祉, 持続可能な生産と消費

本校では、対象と子どもと教師が一体となって“くらし”を創り、よりよい“くらし”を求めていくなかで、対象から教科の枠を超えた事柄を総合的に学び、友だちの大切さや自分自身のあり方を見つめ直していく活動をESDの理念で意味づけている。地域の自然や歴史、文化に包まれながら、充実した毎日を過ごす中で、本物に触れる活動を大切にしていきたいと考えている。生活科や総合的な学習の時間に限らず、日常の授業においても教師が教え、与える授業から、子どもの力を引き出す授業への転換を図り、自立し自律した子どもの育成を目指している。また、本校独自のESDカレンダーも作成しているが、主たるねらいは各学級で活動を立ち上げる際のヒントであり、それに縛られるような位置づけはしていない。

活動の具体として、ここでは、①「動物とのくらしをつくる活動」(1,2年)②町名産のリンゴ作りと販売をする活動(3年)③福祉に関する学習(4年)④食育に関する学習(5年)⑤「ふるさとの山『高社山』から学ぼう」を取り上げる。

①動物とのくらしをつくる活動(1年,2年)

1年生は、10月より羊の飼育を始めた。「ゆき」と名付けられた子羊と過ごす中で、ゆきに心を寄せ、ゆきとのくらしを創っていく子どもたちと教師の生活が始まった。毎朝小屋の周りに落ちている動物の糞や掘られた穴が話題になったときは、大学の先生を講師に招き、夜間のセンサーカメラを周辺に取り付け、その正体を突き止めることになった。すると、毎日のようにキツネやハクビシン、テンなどが小屋の周りに現れていることがわかった。子どもたちは「罠を仕掛けて、捕まえて、山奥へ置いてこよう」と話していた。しかし、図書館司書の読み聞かせ、椋鳩十の「きつねものがたり」を聞いた子どもたちは、きつねの側に心を傾けていった。「きつねには、きつねの世界があり、縄張りがある」そう考え始めた子どもたちは、きつねを駆除する方法ではなく、夜中にきつねが現れても羊(ゆき)が安心して過ごすことができる小屋の改修の活動に広がっていった。

2年生は昨年度からヤギと共に生活している。7月に出産予定の母ヤギ(しろ)と、生まれてくる赤ちゃんのため、昨年度作った柵の中に小屋作りを行った。「しろが安心して赤ちゃんを産むことができる小屋を作りたい」と願った子どもたちは、試行錯誤しながら自分らがイメージする小屋を作り出した。しかし、思い通りに小屋作りができずに行き詰まる子どもたちであった。そこで、建設関係のお仕事をされている保護者の方の援助を依頼し、その設計図をもとに自分たちがイメージする立派な小屋を作ることができた。また、毎日のお世話を通し、2匹のヤギに心を寄せ、思いを深めていった子どもたちは、音楽会でしろとめぐるとの生活を歌にし、全校児童や保護者に向けて発表した。

 ②町名産のリンゴ作りと販売をする活動(3年)

  3年生は、学校の敷地内にあるリンゴ畑でリンゴの栽培を行っている。リンゴの観察や調べ学習、摘花、葉摘、玉回し、収穫などを、地域のリンゴ栽培支援者の方々に教わりながら行ってきた。支援者の方々との関わりの中で「どうしてこの地域はリンゴ栽培が盛んなのか」「栽培者の方々は、どんな思いをもってリンゴを栽培しているのか」などの問いが生まれ、学習を広げていった。最後には、自分たちが実らせたリンゴを近隣の観光地で外国の方々に、学んだ英語を使いながら売る活動にと発展していった。

③福祉に関する学習(4年)

  4年生は、国語「だれもが関わり合えるように」の学習から「目が見えない人は、実際にどのような生活をしているのだろう」という問いを持った。そこで、地域にお住まいの視覚障害者のTさんとの交流が始まった。その交流を深めていく中から点字の学習へ発展していく。そして「音楽が好きなTさんを、音楽会に招待したい」という願いを持った子どもたちは、地域の「点字友の会」の方々から点字を教わり、その点字で招待状を書き、Tさんを招いての音楽会が実現する。「耳も不自由なTさんが、自分たちの音楽会を楽しんでくれるにはどうすればいいのか」Tさんの側に立ち、自分たちの音楽会を創りだし、Tさんを喜んでいただくことができた。

 ④食育に関する学習(5年)

  5年生は、年度当初から「自分たちで米作りをしたい」という願いを持っていた。社会科「米作りがさかんな地域」の学習では、よい米を育てるための工夫や努力を学んだ。そして、校内にある水田を利用し、自分たちの米作りの活動が始まった。「活動の最後は、自分たちが育て、収穫したものでおはぎを作って収穫祭をしたい」と願った子どもたちは、学級園で大豆(きな粉)小豆(あんこ)ゴマの栽培を始めた。収穫祭を終えた子どもたちは「農家の方の工夫や苦労、食べる事への喜びや感謝の気持ちを実感することができた」と語っていた。

 ⑤「ふるさとの山『高社山』から学ぼう」(6年生)

  6年生は、理科「大地のつくりと変化」の学習で、ふるさとの山「高社山」を取り上げて学習を進めてきた。実際に現地に赴き、崖や切通しなどの土地の構成物を観察し、複数地点の地層を相互に関係付けて考えてきた。学習が進む中で「高社山は火山だったのかな」とう問いを持った子どもたちは、採取してきた土地の構造物に着目した。そこから、火山灰や多くの穴をもつ石が含まれていることから地層が火山の噴火によってできたことが分かった。さらに、火山の噴火や地震によって土地が大きく変化することを、自然災害と関係付けながら過去に起こった変化から推論するとともに、将来も起こる可能性を考えて土地の変化をとらえていった。特に山ノ内町は志賀高原を始め、西小学区では高社山という火山が身近にあり、自分たちの土地の様子と結びついていることに関心を持ちこの単元の学習を展開していった。

来年度の活動計画

令和2年度は、本校の目指す子ども像「自ら感じ 自ら考え 自ら動き出す子ども」を念頭に、児童と教師はもちろん、保護者、地域の方々と共にESDの推進を図っていきたい。それには、子どもと教師がくらしを創る生活科や総合的な学習の時間をベースに、子どもたちの主体的な学びを日々の授業実践として積み重ねていく。それに加え、地域・保護者への発信や、町内の他校との連携や研修の機会を増やしていきたい。また、ESD教育に関わる先進的な取り組みをしている学校への視察研修なども視野に入れながら計画を立てていきたいと考えている。