2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 環境, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, エコパーク, その他の関連分野

2020年度 山ノ内町立南小学校の取り組みについて テーマ~ESDの日常化~

1 日常化に向けての課題を見つめ直す

「地球規模の問題の解決に向けて取り組もう」と言っても,小学校という段階で何ができるのかという問題がある。そんなとき,大事に考えたいことが,”Think globally act locally”ということだ。これは,「身近なところから行動を起こす」ととらえることができる。その上で,これまでの状況をふり返り課題を見つめ直してみると,

① 「ESDを進めなくちゃいけない」という義務感や,新しいことはじめるの?忙しいのに」という多望感・負担感があり,ESDが学校のほんの一部の場所でしか意識されていなかったかもしれない。

② ユネスコスクールに登録はされているものの,その意味やとりくみを学校内にとどめていたのかもしれない。

③ 子どもたちにとっては,決して身近なものではなく,別の世界のように感じていた部分があったのかもしれない。

これらの課題を少しずつクリアし,「ホールスクール」としてESD,SDGsに取り組むことが求められている。そのためには,ESD,SDGsの意義を再確認しつつ,ESD,SDGsを身近なものとしてとらえることができるような体制と環境を作り出すことが必要であると考えて,全職員でのとりくみをスタートさせた。

2 経過と内容

(1)ESDを通して目指す子ども象の明確化と職員の意識の変化

これまでの5年間で,徐々にではあるが,ESDが学校の中に浸透はしてきたのは事実である。しかし,2(2)①に挙げたような,ネガティブな感情があったこともまた事実である。

それでもこれまでの南小学校の歩みを見返したときにESDの視点で継続的に取り組んだ次のような活動では子どもも教師も楽しく生き生きと学習を展開することができた。

・アマランサスを使ったおやきづくり 町への提案(5,6年)

・高齢者が元気に暮らす町づくり~楽ちんバス(コミュニティバス)の運行時刻と料金に着目して~(6年)

・大豆を育て加工して見つめる食事・農業・貿易 大豆の可能性(4年)

・地域の温泉を見つめ直して考える,山ノ内町(5年)

・地域の人が集まる夜間瀬川の実現に向けて(6年)

このような事実から, ESDを通して目指す子どもの姿を次のように描いた。

・自分を含めた「ひと」のよさを見る子ども

・「本当か」と問い直す子ども

・身の回りの「もの」「社会」のよさや課題を発見する子ども

・身の回りの社会や世界の課題に対して,その解決に向けて主体的に学び,当事者としてかかわる子ども

そして教職員がこれまで以上にESDを前向きにとらえ直し,ESDを,

① これまでの教育・学習活動のとらえ直し

② 教科・領域間のつながりや関係性の見つめ直し

③ 身の周りの社会のもつ魅力や課題の再発見

をする学習と考え,これらを楽しんで行うことこそが,南小の教職員のミッションであると考えた。このようにして2020年度の歩みを始めた。

(2)研究会の持ち方 ~実践の共有~

本校では月曜日の放課後に「グループ研究会」を行っている。これまでは公開授業について,チームで考えるという側面が強かったことが否めないのだが,今年度は,低学年,高学年の2つのグループに分かれ,グループ内で実践発表を順番に行うこととした。この日程は早めに示し,見通しをもてるようにした。

低学年のグループでは「低学年ではESDをどうとらえ,推進していくのか」のテーマのもと,「豊かな原体験」をグループのキーワードとして,日々の実践について語り合った。

高学年のグループでは原体験を積んだ子どもたちが,「社会や人とどうつながるのか」をテーマに実践について語り合った。どちらのグループも資料は日々の学級だよりなどとして,この研究会のために何か新しいものを作らないことや,勤務時間内で端的に考えを出し合うこと,記録用紙に簡単な記録をとり,PDF化して保存すること,信州大学の水谷瑞希先生にも可能な範囲で参加していただくことを継続した。そうすることで,互いの学級のよさや今悩んでいることを共通理解することができるようになった。さらに,互いの活動や考え方を知り合うことができ,職員室でそれぞれの学級について,気軽に相談したり,経験をもとにアドバイスしたりして話し合う雰囲気が作られていった。それは,ESDの大前提である,「持続可能」ということにつながる,「持続可能で苦しくない研究会」ができてきたということだと考えている。

(3)職員研修と外部研修への参加

ここまで書いてきたことと同時に,ESDやSDGsについての理解をさらに深め,より身近なものへとしていくためにESDに関する職員研修も年間計画に位置付け定期的に開催してきた。研修で大事に考えたのは,「主体性をもち,当事者としていられる研修」である。研修では次のようなことを実施してきた。

ア 4月 ESDスタート研修

ユネスコアジア文化センター(ACCU)が2020年2月に発刊した,「変容につながる16のアプローチ」を全職員で読み,そこから本校で大事したいことや,学級で大事にしたいことを語り合う時間を設けた。そこで,3(2)で挙げた「豊かな原体験」という言葉と出会った。これまで低学年のESDの推進についてどのように考えたらよいのか,悩んでいたのだが,「豊かな原体験」という視点を持つことができた。そして,「豊かさ」は五感を総動員して行う体験であり,「原体験」は本物に触れる体験であるということを共通認識し,学習を展開する上でのベースとしてとらえるようになった。高学年においては,原体験を積み重ね,さらに社会とのつながり,課題解決に向けた行動変容を促していくような学習を大切にしていくことを学んだ。

イ 4月 ESDカレンダー作成に関する研修

信州大学教育学部特任教授の渡辺隆一先生を講師に,ESDカレンダーの作成についての研修を行った。本校でESDカレンダーを作成し,教科間のつながりやSDGsとの関連を見通すことでカリキュラムマネジメントを行っている。今年度の学習展開について構想する上で,グループで活動のイメージについて討議し,渡辺先生にもこれまでの知見から,先進校のとりくみなども紹介していただき研修を進めた。

ウ 4月 自己課題の共有

2回の研修会を経て,今年度どのような課題をもって一人一人が取り組むのかを発表する時間をもった。画用紙に端的な言葉で書き,それをもって短時間で発表を行った。最後にその紙を職員室に掲示し常に見えるようにした。

エ 6月 ESDカレンダー作成研修②

休校があけて1か月が経過したところで,信州大学教育学部助教の水谷瑞希先生を講師に,ESDカレンダーの作成・見直しの研修を行った。子どもたちとの実際の生活やコロナ禍での学習になることも踏まえて,教材に触れながらグループで意見交換を行った。

オ 8月 ESD授業づくり研修

夏休みに北信教育事務所の指導主事を講師に,2学期のとりくみと実際の授業づくりについての研修を行った。ESDカレンダーをもとに,今後の学習展開について発表をし,甘利指導主事も入ってグループで意見交換を行った。甘利指導主事からは「気づき」を大切にする学習の在り方などについてアドバイスをいただいた。

カ 12月 ESD授業づくり研修②

夏休みの研修を受けて12月に再度指導主事に来校していただき,2年生と4年生を中心に全学年の授業を参観していただき,授業後に研究会をもった。生活科と総合的な学習の時間で目指すことについて端的に教えていただいた。生活科はスタートカリキュラムであり,幼稚園・保育園での学びをいかして行うものである一方,総合的な学習の時間は,小学校で学習したすべての見方,考え方をいかし,つなぎ合わせて展開するゴールの姿をイメージするということを学んだ。

キ 12月 ESD実践報告会

講師に奈良教育大学准教授の中澤静男先生を迎え,放課後に2日間に分けて開催した。遠方の講師を迎えてのコロナ禍での開催だったので,講師の中澤先生にはオンラインで参加をしていただいた。

初日は,中澤先生の講演を聞き,ESDを推進するにあたって,学校と地域の関係について教えていただいた。これまで学校は地域に対して,「学校の活動に協力してくれる人材」を要望していたが,これからは,「学校が地域のためにできることを行い,それを共に行う人材」と共に活動をするという新たな視点を教えていただいた。

2日目は,本校の各学級の実践発表を行い,それを受けてのグループ討議を行った。中澤先生からは報告を受け,奈良県の実践を紹介していただき,本校の活動と関連付けて考えを深めることができた。この実践発表に向けて,実践報告と最新のESDカレンダーを全学年で作成した。実践報告書については水谷先生からの提案もあり,昨年から作成をスタートし,今年度は形式を新たにし次のような項目でA4で1枚を原則に作成した。

・実践校・対象  ・テーマ・目標・課題  ・ESDの視点   ・育成する資質・能力

・関連するSDGs ・探究課題と活動実践の概要 ・流れ(指導計画 他教科との関連を見える化)

・効果・反応・所感  ・指導方法・体制の工夫

昨年のものよりもSDGsとの関連などが明確になるとともに,昨年に引き続き,A4で1枚を原則とし,作り手にとっての負担感の軽減を図った。今後もこのような形式で実践を積み重ね,実践が見えるような形を探っていく。

ク 外部研修への参加 ~発信と学習と交流~

新型コロナウイルスの影響で,本校では思いがけず,オンライン学習や研修を実施するための環境を整備することができた。また,様々な研修がオンラインで実施されるようになったため,職員が研修に参加することがこれまでよりも容易になった。

ESDダイアログ「白山から発信 ユネスコエコパークを活かしたESD/SDGsの実践を考える」(11月15日実施)では,本校のとりくみとこれまでの歩みや悩みについて実践発表を行い,様々な参加者から意見をいただくことができた。また,その中でZoomのチャット機能を使って,屋久島の教育委員会をはじめ多くの方とやりとりをしながら交流できた。

ユネスコスクール全国大会では職員が指定討論者として討論に参加する機会をいただき,低学年のESDについてや,身近なことと世界をつなぐ視点,学校が地域包括的なESD推進のためのコンソーシアムを形成することなどについて意見を交わすことができた。

10月からは月に1回程度実施されるユネスコスクール意見交換会に放課後に学校から参加し,他県での実践を聞いたり,ユネスコスクールで学ぶ中学生,高校生とも意見交換をしたりして研修をすすめた。

このような研修を通してかかわりあった人や組織とのつながりを今後も大切にしたい。

(4)各学年の実践について

1学年 つくる~生き物のいる環境・ヨーグルト・アート作品

「豊かな原体験」この言葉をキーワードにしながら学習を進めた。春先,休校明けの学校はもう夏と言ってよいほどに暑さを感じる日々だった。散歩をしていると子どもたちは涼を求めて中庭の池で遊び始めた。何度も繰り返すうちに,池の中や周辺に思いのほか生き物がいないと感じた子どもたちは「生き物(トンボ)が集まる中庭にしたい」と考え始めた。そこで,8月に生き物が豊富な須賀川地区のビオトープを全員で訪問し,生き物の観察や遊びを行った。その際ビオトープの土を採集し,中庭に小さなビオトープを再現すれば生き物が集まるかもしれないと考え,土の採集もおこなった。日当たりや水の温度などの環境因子も子どもたちなりに考え始める姿が見られた。今年の段階では学校に設置したプラ船にはあまり生き物は集まっていないが,その背景を1年生なりに考えている。生活科の「生き物と一緒」「いつもの場所」などとの関連を図って実践をすすめた。

秋になると子どもたちの身の回りに木の実や落ち葉が増えてきた。その色の美しさや形のおもしろさ,感触のよさに惹かれた子どもたちは,自然とそれらを集め始めた。そんな姿を見て,これらを「使う」そして「生かす」学習を展開しようと考え,「秋とあそぼう」を実施した。教室前に落ち葉のお風呂を作ったり,木の実や枝を組み合わせた置物作品を創り出したりして,身の回りのものを使い,生かすことのおもしろさを味わった様子だった。この学習は図工の学習との関連性を特に念頭において進めた。

10月,11月に近所の牧場を訪問した。そこで子どもたちは,身近な場所に牛がいること,牛乳やヨーグルトやチーズはスーパーで売っているだけでなく,自分の手でも作ることができることを知り驚くと共に,やってみたいという意欲を高めた。この学習では国語の「しらせたいな 見せたいな」生活科の「生き物といっしょ」図工の「動物さんの絵」,道徳の生命尊重の観点など様々な教科間の連携を図ることができた。

2学年 ~私たちとりんご~

「りんごを育てよう 春」花摘み,摘果(中止)「自分のりんご」という気持ちを高めるため個人のりんごを決め観察をした。

「りんごを育てよう 夏~秋」

観察を継続しながら,11月下旬の販売に向けて活動を進めた。充実した販売となるよう,子どもたちと検討し,6年生から教えてもらった新聞紙エコバックに入れての販売を決定し,エコバック作りを6年生と行った。また,子どものつぶやきから,「りんごの名産地」という歌詞をつくり,コマーシャルソングとして活用した。

「りんごを育てよう 冬」

販売後に学校にメールで感想が多数届いた。それに対して子どもたちがお礼の手紙を送る活学習をした。

3学年~私たちの町山ノ内 そば作りを中心に~

社会科の地域学習を広めて,自分たちの住んでいる佐野地区と「自分たちの町」山ノ内町について学ぶことを柱に考えた。また,1・2年の生活科から学級で取り組んできた「食」や「栽培」の活動も引き続き行うことにした。

地域探検では,学区内のそれぞれの地区の地勢や産業など,社会科的な視点からの見学にあわせ,自然や公園の中で遊んだり,温泉の足湯につかったりという体験活動をすることで,自分たちの町のよさを肌で感じられるように考えた。子どもたちは自分の住んでいる地域をめぐるときにはガイド役となり,「ここでは,秋にこんなお祭りがあるよ」「このお風呂は,結構熱いんだよ」などと,友だちに楽しそうに語る姿があった。自分の住んでいる地区をクラスの友だちに紹介することを通して,そのよさを再認識できたようだ。

もう一つの柱のそば作りは,本学級では2年生から取り組んでいる。地域の少年警察ボランティアの皆さんに,須賀川地区の畑で,そばの種まきとそば打ちの体験をさせていただいた。オヤマボクチをつなぎにした,山ノ内地域独特のそば作りを楽しむことができた。ただ,自分たちの住んでいる佐野地区には,そば畑はほとんどない。農家の子も多いが,りんごやぶどう栽培が主で,そばを作っている家庭もない。山ノ内のそばが有名だということは,なんとなく知っていても,他の地区のことだと思っている。子どもたちは昨年度の経験から,「学校の畑でそばを作ってみたい」との願いを持った。そこで,そばの種まきからそば打ちまでの工程を,自分たちの力で行うこととした。刈り取り,脱穀,天日干し,製粉などの作業は,千歯扱き,唐箕,石臼などの昔からの道具を使って行った。社会科としてのねらいもあるが,全ての工程を自分たちで行うことで,そばへの思いがより深まると考えた。地道で根気のいる作業も多かったが,活動の中で「早く食べたいな」「そばクッキーにしたい」などの声が聞かれた。

4学年 ~大豆を食生活に活かそう~

子どもたちの「自分たちで作った野菜を具にしてみそ汁を作りたい」「大豆の他の料理もしてみたい」という意識を始まりとして学習を進めてきた。そのための野菜を学校の畑で栽培したり,昨年度仕込んだみその変化を観察したりした。じゃがいもが収穫できると,みそ汁作りに取り組んだ。具材の選定においては,昨年度健康教育で学習した食品の持つ栄養素のことを生かそうとする姿が見られた。

秋になり大豆が収穫の時期を迎えた。大豆の収穫と並行して,大豆についての調べ学習を進めた。こどもたちは,大豆の持つ栄養素に関心を向けて調べ,大豆の持つタンパク質が注目されていることが分かり,子どもたちは,「大豆をもっと食べた方がいい」と考えた。給食の献立の中にもいくつか大豆を使った料理があることに気づき,献立表を調べ始めた。調べたことをもとに休日の昼食を想定して大豆を使った料理を取り入れた献立を考えた。食生活と健康との深い関わりを意識し実生活に生かそうとする姿が見られた。

今後は,社会科「ゴミの処理とその利用」の学習から,「食品ロス」を無くしたいという意識の高まりが見られているので,大豆の調べ学習の中で子どもたちが見つけた大豆の生産量と輸入量から食品の生産と消費について意識の広がりを図っていきたい。

オ 5学年 ~地域のブランド米 雪白舞~

4月 田おこし前の田んぼを見学に行く。「ここから始まるんだなぁ」しかし,この後休校になってしまう。休校中に行われた籾まきを,担任が行ってお手伝いする。本当は子どもたちにここから関わらせたかったが,今年はできなかった。

5月 休校明けに田植えができるようにと,堀内さんが準備を整えてくださった。休校明け3日目(27日)に田植えを行う。「いよいよ始まるんだなぁ。」田植えの様子が信濃毎日新聞の記事になる。

6月 協力していただいている方から余った苗をいただき,学校で一人ひとつずつバケツに稲を植えて観察を始める。

8月 夏休み中にバケツ稲の水が切れて,稲が枯れた後,復活する。19日(84日目)穂が垂れてくる。

9月 23日(119日目)稲刈り。終盤に近づくと「なんかちょっとさびしい」バケツ稲の稲刈り。

10月 12日(138日目)脱穀。現代のコンバインと昔の足踏み脱穀機で行う。「昔の方が力はいるし,

大変だけど,なんか自分たちのお米って感じがする。」

11月 バケツ稲の脱穀,バケツの片付け(根の観察 日向と日陰で根の張り方が全然違うことへの気づき)

米・食味分析鑑定コンクールの小学校部門で金賞を受賞。町への報告会への参加。

金賞を受賞したことで,協力してくださる方の農家としての仕事の丁寧さと米作りと向き合う真剣さに改めて気づくと共に,子どもたちは「産業としての米作り」「どうこの米をいかしていけるのか」などに目が向き始めた。

6学年 ~海なし県から考える海洋プラスチックごみ問題 エコアクション~

 SDGsという世界の誰一人も取り残さずに2030年までに達成すべき17の目標を意識しながら,環境保全をテーマに学習をしている。どの学校でも地域学習が多く,とりわけ本校はユネスコエコパーク内にある学校であるため,身近な山を学習材にすることが多い。一方,世界に目を向けると,急激な人口増加,異常気象など様々な課題が生じている。この中で今年度は,地域だけでなく世界に目を向ける活動をしたいと考え,海洋プラスチックゴミの問題に対策を考える活動をした。

長野県という海無し県の陸域から排出されるゴミが,川に流され海にたどり着くことを学習することができた。その中で,問題の深刻さをとらえ,まずは身近な地域のゴミを拾う活動を行い,改めてプラスチックゴミが多いことを実感した。

11月にはレジ袋の有料化に伴い,本校2年生が毎年リンゴ販売の際に使用するレジ袋を新聞紙エコバッグに代替して販売する企画を実行した。自分たちにできることを児童自らが見付け,行動した活動であった。

さらに,12月にはプラスチックゴミの問題について,Zoomを用いて静岡県の小学校と交流を行い,陸域と海域の違いや取り組んでいることについて意見交換をすることができた。

(5)その他 ~日常化にむけての環境づくり~

ア 信州ESDコンソーシアムとの連携

職員研修の講師を務めていただいたり,講師を紹介していただいたり,月曜日の校内研究会に参加をしていただいたりして,日常的に学校に関わっていただいている。本校の実践について研究者の視点での価値づけや課題の整理を共に行うことで,職員室を中心に学校の中でESDが日常的なもので身近なものになってきている。

イ SDGsの見える化と意識づけ

ESD・SDGsについて,教職員だけでなく,児童,保護者,来校者などにも身近なものとして意識してもらえるように,全学級にSDGsのアイコンシールを配布した。そのシールを掲示物や教室の関係が深そうだと感じるところにどんどんはってみた。例えば,エアコンのスイッチ,教室のドアなどに,「エネルギー」「気候変動」のシール,水道の前に「安全な水」のシール,ごみ箱に「つくる責任 つかう責任」のシールなどをはった。子どもたちはそれを目にして,「そうかこれは○○番につながるのか」「ここは○○番につながるかもしれないからシールを貼ろう」など呟く姿があり,ほんの少しかもしれないが,SDGsが日常的なものに近づいたのではないか。

ウ 児童会活動

今年度から本校では児童会の委員会にESD環境美化委員会を設置した。児童が主体的に児童の視点でESDを推進する委員会である。今年度は以前から行っている登校時のごみ拾い(クリーン作戦)をESDの視点で改めて見直し,ゴミを集めるための袋の量を減少させた。また,SDGsに対し,児童会としてでできることを考え始めた。

来年度の活動計画

次年度に向けての課題

ユネスコスクールとしてこれまでよりも「ホールスクールアプローチ」ができたのではないかと感じている。何か新しいものをつくることも大切だが,今あるものをESDの視点で「持続可能なもの」へとつくりかえていくことこそが「持続可能な学習」につながると感じた。例えば,今年度ならばその代表的なものが研究会の持ち方だった。これまでも研究会は行っていたが,その中身を実践発表形式にし,そこに水谷先生(信州大学)という外部の人にも入っていただくことで,より深く意味のあるものへと変わっていった。きっと学校には「持続可能」という視点で見直すべきものがまだまだあるだろう。今後,より学校・子ども・地域でESDを推進するための課題も見えてきている。それを以下に挙げる。

・コミュニティスクール運営委員会との連携体制

本校では南小コミュニティスクール運営委員会を組織し,様々な方に関わってもらっている。しかし,担当の職員以外はあまりその組織とかかわることが少なかった。地域の方も巻き込み子どもたちの学習を展開するならば,これまで以上に連携を強くする必要がある。共にESD・SDGsに関する意見交換を行う場を作ることや,学校と地域が互いに求めるものや目指すものを理解し合う必要もある。そうすることで,学校が地域包括的にESDを推進する上での拠点となっていくのではなだろうか。そして,学校が地域の課題解決のためにできることは何かを探っていきたい。

・交流活動の推進

多様な見方・考え方に触れる機会を大事にするということからも,子どもたち同士,職員間の交流の場を探りたい。そうすることで子どもたちにとって当たり前のことが特別なものに見えてきたり,逆に本校の子どもたちにとって特別なことが相手には当たり前のことだったりというふうに価値観を揺さぶられる機会となるのではないだろうか。本校は陸域の小さな学校であるので,海域の学校,都市部の学校,温暖な地域の学校,本校と同様にユネスコエコパーク内の学校などとかかわりをもてるようにしていきたい。そのためにも,職員が積極的に研修などに参加し,つながりの輪を広げていくことを大切に考えていきたい。

・中学校との連携

○年生で~~をするということを決めることには弊害を感じるが,大きな柱として,どのような力をつけ,どんな姿で小学校・中学校を卒業していくのかを共通イメージの大きな描きをする必要があるのではないか。