2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, エネルギー, 環境, 福祉, 健康, 食育, エコパーク

はじめに

本校はユネスコスクールとして,国内のESDの推進拠点という役割を担っていると自覚の上に学習活動を展開しようとしている。私たちはESDを,地域学習,環境学習といったものにとどまらず,地域と共に学び,地域に貢献するための行動化を促す学びであると考える。それが地域の持続可能性を高めることであり,子どもたちにとっても将来の幸せを追究することにつながると考えている。今年度は目指す子ども像を次のように設定した。

〇 複数のものや事象の関連性に目を向け,課題の解決に向けて他者と協同し発信する子ども
〇 身の回りの課題をみつけ,「本当か」と問い直し,多面的に考えを深める子ども
〇 身の回りの他者と関わりながら,自分の世界を広げていく子ども
〇 豊かな原体験の中で,自分のやりたいことを満たす子ども

今年度は,これらのことに「多様なステークホルダーとの協同の学び」によって迫っていきたいと考えた。

各学年の学習

①1年生 ほなみ保育園へ行こう~ほなみ保育園との交流~
ア 保育園に行こう・学校周辺の散歩 ・入学前まで通っていたほなみ保育園への散歩 ・ほなみ保育園の園児との遊びイ 保育園のきりん組さん(年長児)とともにする遊びをつくり出そう
・保育園のきりん組さんとのリレー遊び(保育園から働きかけられての遊び)
・1年生がつくるきりん組さんとのリレー遊びの準備
・きりん組さんと楽しむリレー遊びの交流
ウ きりん組さんを学校に招待してみんなで楽しむ遊びをしよう
・みんなが一緒に行う保育園での遊び
・学校への招待の計画・準備・交流
子どもたちは当初ほなみ保育園で自分が楽しく遊びたいという思いで散歩をし、自分で遊びを見つけ遊んだ。繰り返し保育園に行くなかで多くの保育園児と遊ぶようになり、人とのかかわりが広がった。また、保育園の先生からの提案できりん組さんとリレー遊びをしたことをきっかけに、自分たちで遊びをつくり出したいという思いや願いを持ち、準備を進め交流した。その後、1年生ときりん組さんのみんなでひとつの同じ遊びをしたいと願い遊んだり、きりん組さんを学校に招待して遊び、学校のことを教えたいと願うようになったりした。本活動を通して、子どもたちが自分を主にした思いから年長さんを思いやる姿へと育ってきている。学校と保育園との垣根が低くなり、双方の行き来が生まれるようにもなった。

② 2学年 ~りんご栽培・販売にチャレンジ~
ア りんごを育てよう① ・花摘み(6月) ・マイりんごを決めて観察
イ りんごを育てよう② ・マイりんご日記の作成。(パワーポイント) ・葉摘 ・販売準備
(ポスター作り,SBCラジオ生放送・看板作り
ウ りんごを育てよう③ ・感想(メールや手紙)を送ってくださった方にお礼の手紙を書こう。
子どもたちは,りんごの栽培活動や販売活動から,りんごを育てることには多くの人が関わっていることや,山ノ内町のりんごがおいしく評判のいいことを知り,山ノ内町の良さをもっと知り,県外の方々に伝えたいと言う意識を持ち始めた。感想を送ってくださった方へのお礼の手紙に,山ノ内町の良さを書こうということになり実施し,居住地域とは異なる地域の方とのかかわりが生まれていった。

③ 3学年 ~ゴミを減らそう 自分たちにできることをしてみよう~
ア 昨年6年生と行った新聞エコバッグのことを思い出す。
NHkの「みんなのチャレンジ。」を視聴し自分たちで出来そうなことを考えてみる。
イ 全校ゴミ拾いのゴミを分別し、考えてみよう。
ウ 紙のリサイクルのついて考えよう。牛乳のフタからハガキ作り。
エ プラスチックについて考えよう。山ノ内町のプラスチック工場を見学しよう。
オ ペットボトルのフタからブローチを作ろう。
子どもの日記には「今日はわたしは,午後Mさんとおふろのちゅう車場を二人でゴミ拾いをしました。落ちていたゴミは、ひげそり,CD,かご(中略)こんなにたいりょうのゴミが落ちているなんて,思わなかったのでびっくりしました。これからもゴミを落とさないで、きれいな町になれば良いなと思います。」という記述があった。ESD体験学習後の作文には「今日, ESD体けん学習で志賀高原に行きました。〜〜(中略)〜~~~志賀高原に行って、花の名前やさわってはいけないけど,どくキノコの事とかいっぱい知れたし, 千年ご,一万年ごの人が同じけしきを見られたらいいなと思いました。」これらのことから,子どもの中に少しずつ環境などへの関心が高まってきているように感じている。

④ 4学年 東京2020を楽しもう ~パラスポーツを通して深める他者理解~
ア 東京2020を応援しよう ・一人一国運動で世界の国を応援しよう ・パラリンピック種目を知ろう
イ 「障がい」って何?  ・アイマスク体験 ・バリアフリーって何? ・知的障がい者ってどんな人?
ウ パラスポーツを体験しよう ・シッティングバレー ・ゴールボール ・ボッチャ ・車いすバスケット
・フロアホッケー
エ スペシャルオリンピックス世界大会に出場した選手と交流しよう
障がい者は,「介助が必要な特別な人」「かわいそうな人」という意識を持っていた子どもたちが,本活動で「目が見えない人は,360度どこからでも音を感じることができる」「車いすバスケットの選手は,手で漕がなくてもすごいスピードで車いすを操作できる」というような驚きを持つことができた。そのような「障がい者」について新たな認識を持って,健常者である自分との違いに気付くことで,物質的なバリアフリーのだけでなく心のバリアフリーの大切さに気付いていく素地ができつつある。

⑤ 5学年 ~水を通して考える持続可能なまちづくり~
ア 水生生物を観察しよう ・生物の減少 ・水生生物が生息できる環境の減少
・地域の田んぼ、須賀川のビオトープの観察
イ 水について考える   ・サントリー水育学習 ・メダカの飼育
ウ 志賀高原学習     ・ユネスコパークの意義理解 ・志賀高原の動植物、地形の成り立ち調査、核心地域散策
エ ESD体験学習     ・エコパーク散策 ・水力発電所の発見
オ 自然エネルギーの調査 ・自然エネルギーによる発電 ・地球温暖化の実態調査 ・各発電方法の調査
・自然エネルギーによる発電に挑戦 ・小水力発電の見学
カ 外部との交流     ・町内6年生のESD交流会への参加,視聴 ・エコジャパンシステム工場見学
子ども達の多くは,異常気象などが毎年のように起こる地球環境から,「CO2を排出しないクリーンなエネルギーを使うべきだ」と考えた。一方,日本の発電方法の割合を見ると,火力発電や原子力発電が多いことが分かり,「どうして自然エネルギーを使った発電がもっと普及しないか」という問いを立てて,実際に風や水を使って発電することに挑戦した。この活動により安定して多くの発電できないことを痛感した。このような経験から,改めて今後のエネルギー問題を見つめ直し,どのような発電が持続可能な社会づくりになるのか,1人1人が,各発電方法のメリットだけに目を向けるのではなく,デメリットにも注目してこれからを考える深い学びにつながった。

⑥ 6学年 川の上流部の学校で考える ~つなぎ・守る志賀高原のきれいな水~
ア 世界で起きている問題を知ろう(バトンタッチ SDGs視聴) ・砂漠化 ・森林伐採
・人口爆発(日本は人口減少、高齢化社会) ・異常気象 ・海洋プラスチックゴミ
・移民  ・人種差別 ・水不足(信大COIの訪問)

イ 修学旅行での学習 ・氷見海浜植物園の方との学習(海岸で海洋ゴミの実態を調べる)
・大町市SDGs共創推進係との学習 大町市の水の政策や源流部としての取組を知る。
ウ 様々な場所での水質調査 ・校内の池,理科室の水槽,生活排水,近隣の三沢川・伊沢川などでの水質調査
・志賀高原の源流部での水質調査の実施
エ 交流と発信 ・山ノ内町の政策の理解  ・総合計画についてのお話(行政の方との交流),
・奈良県川上村「森と水の源流館」の方による川上村の取組の紹介
・飯田市「天竜川総合学習館」の方による中流域での水を守る活動の紹介
・やまのうちESD交流会での町内の6年生同士の発表と地域の人との懇談
「志賀高原の水はきれいだと思う」「おいしい水はどこにでもある」という感覚だった子どもたち。しかし,上にあげたような学習を通して,「本当に志賀高原の水はきれいなんだ。(数値による科学的な根拠をもつ)」,「きれいな水は貴重だ」,「きれいな水をつなぐには,何かをしなくちゃいけない」という意識の変化があった。また,「役場に~~してほしい」から「自分たちも含めた住民の意識が高まらないと何も変わらない」ということに気がつくことができた。これは主体性と参画に関する当事者意識の変化と考えられる。

来年度の活動計画

・コミュニティスクール(CS)運営委員会との連携体制
 本校では南小コミュニティスクール運営委員会を組織し,様々な方に関わってもらっている。しかし,担当の職員以外はあまりかかわることがなかった。地域の方も巻き込み子どもたちの学習を展開するならば,これまで以上に連携を強くする必要がある。そのためにESDカレンダーの作成など学習活動の見通しを持つ段階から,CS運営委員会の方にも周知を図っていきたい。そして,学校と地域とが互いに求めるものや目指すものを理解し合う場を設けていく。そうして学校が地域包括的にESDを推進する上での拠点となっていきたい。

・交流活動の推進
 多様な見方・考え方に触れる機会を大事にするということからも,来年度も子どもたち同士,職員間の交流の場を探りたい。それが価値観を揺さぶられる機会となるのではないだろうか。本校は陸域の小さな学校であるので,海域の学校,都市部の学校,温暖な地域の学校,本校と同様にユネスコエコパーク内の学校などとかかわりをもてるようにしていきたい。そのためにも,職員が積極的に研修などに参加し,つながりの輪を広げていくことを大切に考えていきたい。

・中学校との連携
 中学校との連携の在り方も大きな課題である。「○年生で~~をする」ということを決めることには弊害を感じるが,大きな柱として,どのような力をつけ,どんな姿で小学校・中学校を卒業していくのかを共通イメージの大きな描きをする必要がある。