2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 環境, 文化多様性, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, 持続可能な生産と消費

本校は学校全体で、持続可能な社会の担い手を育成する教育(ESD)の理念を総合的な学習(探究)の時間をはじめ教科や課外活動などに積極的に取り入れている。3年間のテーマとして「温郷知新~地元に学び、世界を舞台に活躍できる人材の育成~」(*温郷知新とは「ふるさとをたずね、あたらしきをしる」という意の本校の造語)と“Think Locally Act Globally”を設定している。育む力として郷土への愛着を高め、異なる文化や価値観を持つ集団のなかでアイデンティティを確立し、持続可能な社会づくりに取り組む態度を養うことを目的としている。具体的には①地域魅力発見・課題解決探究に関わる活動、②世界遺産の保全と持続可能な質の高い観光地づくりに関わる活動、③多文化共生社会実現に関わる活動を軸に幅広い活動を行っている。

①   地域の魅力発見・課題解決探究に関わる活動

入学後すぐにSDGsの観点から、持続可能な地域となるため個々人がどのような行動をとるべきかを設定するため、「地域の環境・防災・地域創生」をテーマにフィールドワークや調べ学習とプレゼンテーションを行った。この調べ学習を通して、地元への誇りを醸成するとともに、調査することの楽しさや地域の人々とのつながりの大切さを実感し、やりがいを感じる生徒がおり、課題探究に向けてのモチベーションを高める効果もあった。その後、グループ単位で「地域の直面する課題解決に向けて」「地域の強みを活かすための方策」を提言するために課題発見・課題解決型の探究活動に取り組んでいる。和歌山県をはじめ地域の様々な組織・企業・商店などの協力と支援のもとフィールドワークを実施し、最終プレゼンテーションで地域の課題解決策を提言することで、地域社会と自らが直接結びついており、地域のなかで自分が必要とされている存在であるという自己有用感を持たせている。なお、立命館大学経済学部・田辺市・本校が連携し課題研究をすすめており、高大官連携を実現している。

 ②世界遺産の保全と持続可能な質の高い観光地づくりに関わる学習

ユネスコ世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産である熊野参詣道(熊野古道)に焦点をあてて、世界遺産の保全と活用について学習を深めている。具体的には保全の面として、和歌山県世界遺産センター及び管理団体である田辺市の指導の下、花王株式会社和歌山工場とともに産学連携による世界遺産保全活動(道普請)を行った。この活動は、世界中から多くの観光客が訪れる熊野古道の傷みが激しい場所に土を搬入し、参詣道を修復する活動である。一方活用面では、和歌山県世界遺産センター所長による「地域・観光ゼミ」の開講や「世界遺産の地和歌山の魅力」と題する講演会を実施し、積極的な観光を通した活用など、持続可能な社会にむけた取り組みが多岐にわたり実施されていることを学んだ。また、外国人観光客に向けたインタビューを行い、世界の人々が熊野古道や自分たちの地域に何を求めるのか、世界からみた当地域の魅力についても継続的に調査している。一連の活動を通して、生徒一人ひとりが世界遺産の意義、ユネスコ憲章に掲げられる文化交流の大切さ、観光は平和の産業であることを理解している。

③多文化共生社会実現に関わる学習

外国人観光客を対象とした活動や調査のなかから、国内に定住している外国出身の観光客が一定数いることが分かり、田辺市を中心に在住する外国人にも焦点を当て活動を始めている。本校生徒が田辺市生涯学習課・国際交流センターとともに企画運営を行う外国人との交流イベント「T-cafétanabeTomodachiTsukuro~」も3年目を迎え、令和元年7月には外国人の命を守ることをテーマに「防災T-café」を実施した。在留外国人の多くが自治体の防災放送や避難訓練に参加できていないという状況から、高校生がハザードマップ作り・簡易トイレ・避難用品クイズ・起震車体験などのブースを運営し、外国人とともに防災に取り組んだ。午前中では、外国人宅にも常備あるパスタ・米を少量の湯で調理する方法で非常食づくりを体験した。午後は、それぞれのブース体験を行い、最後は田辺市のハザードマップを自分たちで作成し、高台への避難経路を確認した。こうした防災イベントを行うことで、生徒は外国人が直面する課題、日本人では気づかない点が理解でき、多文化共生社会に向けた視点を学ぶことができた。

来年度の活動計画

SDGsの観点からESD教育を推進するために次のような活動を行う予定である。

・令和元年度に引き続き、在留外国人との交流イベント「T-café」などを開催し、多文化共生社会の実現に向けた生徒・地域の住民との輪を広げる(田辺市と協働)。

・世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を通した世界遺産学習を行い、ユネスコと平和、文化と平和について考察する。また、人類の宝としての世界遺産を後世に継承するために、世界遺産保全活動を継続的に行う。

・総合学習では、持続可能な地域となるために「地域創生・防災・環境」をテーマに地域の課題研究に取り組み、生徒一人ひとりにSDGsの視点を持つよう外部機関と協働し、学習をすすめる。

・紀南ユネスコ協会や和歌山ユネスコ連絡協議会と連携して、ユネスコ及びユネスコスクールの取り組みの普及活動を行う。