2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 減災・防災, エネルギー, 環境, 国際理解, ジェンダー平等, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, 貧困, エコパーク, ジオパーク, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)

当校は、「東日本大震災の被災経験をもとにした様々な活動を通じて,自身の防災意識を高めるとともに,科学的視点から防災・減災を考え,自らが他者と交流する防災教育」を目指して,ESDを防災教育の中心と捉え,ESDの実践を通して批判的に考える力や多面的総合的に考える力の育成を目標としている。

具体的には,防災学習に係わる活動,自然科学に係わる学習,国際理解に係わる活動をプログラムの柱にESDを行った。

 

防災学習に係わる活動

本校では将来の宮城を支え,自主防災組織等における次世代のリーダーなど将来の地域の防災活動の担い手を育
成するため,防災に関する知識・技術を習得し,防災や減災への取組に自発的に協力,活動する高校生を
みやぎ防災ジュニアリーダーとして養成しています。
また,全国の高校生が,自らの課題研究などの成果を発表するとともに,ワークショップなどを通して
意見交換することで,東日本大震災の経験と教訓を後世に継承し,国内外の減災に貢献するため,

「東日本大震災メモリアルday」と称し,を行いました。

 

自然科学に係わる学習

(1)栗駒・気仙沼巡検

災害科学科2年生がSSHスキルアップ研修Ⅱ「栗駒・気仙沼巡検」として,岩手宮城内陸地震の被災地である栗原市・一関市に加え,気仙沼市・南三陸町で東日本大震災に対する理解を深めました。

<1日目>

東北大学の高嶋礼詩教授を講師に迎え,岩手宮城内陸地震を扱いました。栗原市ジオパークビジターセンターを訪問後,ジオガイドさんの案内によって荒砥沢ダムや崩落地を訪問し,発生から13年を経た岩手宮城内陸地震を学びました。午後に訪れた祭畤震災遺構では,地震によって大きく破壊された橋を目の当たりにし,地すべり災害がどのような背景によって引き起こされたのか,現地で高嶋先生から解説いただいた後,夜は仙台近辺の歴史を振り返り,どのような過程を経て岩手宮城内陸地震に至ったのか,そして過去のカルデラ噴火による火砕流堆積物が広範囲で滑ったことに起因することを学びました。

<2日目>

気仙沼市に移動し,気仙沼市復興祈念公園から内湾地区の位置関係を把握した後,リアス・アーク美術館に移動。館内見学後,山内宏泰館長との意見交換会を行いました。自身が抱いた疑問・考えをアウトプットし,館長との議論は予定の時間を超えるほどでした。昼食後,内湾地区を散策。この土地の文化や産業に触れる時間としました。

午後は気仙沼市東日本大震災津波伝承館へ移動し,芳賀一郎先生からの講話の後,気仙沼向洋高等学校KSC「向洋語り部クラブ」の皆さんに館内を語り部として案内していただきました。本校も「まち歩き」を実施していますが,震災を語り継ぐ活動に取り組む同年代がここにもいることに,背中を押された様子でした。

夕食後は気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ(pier7)を会場に,気仙沼市大浦地区での防災活動に取り組む吉田千春さんを講師に招き,災害時の人権がいかに大切かを考える場を持ちました。少子高齢化が進む地域で実践してきた防災活動とは,どのような配慮があって可能になっていったのか,吉田さんの取り組みを知るとともに,車座となって議論し互いの考えを共有する活動を通して,今後高齢化が進む地域で防災減災を考えるにはどのような視点が必要かを学びました。

<3日目>

朝食前に希望者を対象として,魚市場見学を行いました。早朝にもかかわらず14人の生徒が参加し,講師の阿部正人先生の案内のもと,早朝から鰹の水揚げの様子を見学しました。水産業の片鱗を垣間見るとともに,この地域がいかに漁業とともに栄えてきたかを肌で感じることができました。

朝食後は大谷海岸・小泉海岸2つの防潮堤に実際に立ち,地域住民との合意形成の末に砂浜を残すことに成功した大谷海岸防潮堤,後背地がそのままとなっている小泉海岸防潮堤の様子を対比し,復興とはその地域に人が住まうことが前提であり,その議論にいかに地域住民が参画できるかの重要性を考えました。

午後は南三陸町語り部であるホテル観洋・伊藤 俊さんの案内により,南三陸町震災遺構高野会館,南三陸町防災庁舎跡を巡りました。特に高野会館は実際に内部へ入って細部も見学し,現在ではなかなか見ることが難しい「全く手の加えられていない10年前そのままの遺構」に圧倒されるばかりでした。

午後はホテル観洋での昼食後,ホテル内ホールで振り返りのワークショップを展開しました。阿部先生のファシリテーションのもと,これまでの行程を振り返り「これからどんな課題意識を持って取り組んでいくかを考える」をテーマに,ペアトーク・OST(オープンスペーステクノロジー・一人ずつ30秒プレゼンを通して,自らの学びの振り返りと今後への決意を共有しました。

2泊3日という長丁場でしたが,二つの災害を科学的・社会科学的に捉え,災害そのものへの視点は単一なものではないことを改めて学ぶ場となりました。今後の災害科学科諸君の飛躍に今回の巡検が強き足がかりとなって,防災・減災・伝災を学んだ者として未来を担う有為な人材になってほしいと願っています。

 

(2)釧路湿原巡検

「釧路湿原巡検」は,北海道釧路湖陵高等学校がSSH地域巡検として位置付けているものであり,北海道を代表する自然環境のもとで環境保全を目的とした環境調査の手法を学び,環境科学における科学的な探究手法を身に付けることを目的とする。また,本校独自に温根内ビジターセンターや猛禽類医学研究所,釧路市動物園を訪問することで,シマフクロウをはじめとした北海道固有の動物について,その形態的特徴や寒冷地における環境適応などを学び,課題研究や理科学習における自然環境の保全に関連した展開の一助とする。

【実施内容・評価】

a)達古武湖森林再生事業地におけるフィールドワーク(昆虫班,沢班)

湿原に棲息する生物の採捕とスケールの測定,種類の同定など,湿原環境の保全を目的とした科学的な調査方法を学んだ。さらには,生まれ育った自然環境を科学的に理解し,後世に残すことを目的とした環境教育の機会を与えるものとしており,自然との共存について考える機会を得た。

b)恩根内ビジターセンターにおけるフィールドワーク

環境省釧路湿原野生生物保護センター・猛禽類医学研究所における研修

釧路市動物園における研修

温根内木道では,ハンノキ林を抜けてヨシ・スゲ湿原に至る行程において,湿原における植生とそこに生息する動物を観察した。また,猛禽類医学研究所では,レッドデータにおいて絶滅危惧Ⅱ類に指定されるオオワシやオジロワシ,絶滅危惧ⅠA類のシマフクロウといった希少種の生息状況や保護活動の具体について学んだ。

人間生活と自然との共存について,その難しさを生徒たちは直に感じ取ることができた。

国際理解に係わる活動

(1)語学研究部の活動

国際理解・国際協力についての理解や異文化理解を深め
ることを目的とした「国際理解生徒研修会」に参加しました。宮城県高等学校国際教育研究
会が主催し,仙台多文化共生センターで行われたものです。貧困や児童労働の問題,ジェン
ダーの問題等に関して,県内の高校生がプレゼンテーションを行うのを見て,自分たちが何
を課題と捉え,伝えていくのか,ということについても考えることができました。また,異
文化理解としてバングラデシュ出身のアブドゥラ・アル・マムンさんからお話をいただき日
本とは異なる文化背景を学びました。

12月11日に,多賀城市市民活動サポートセンターで行われた「たがさぽのクリスマス
雑貨市 2021」に参加しました。
2004 年のスマトラ島沖地震で 20 万人以上の死者・行方不明者という大きな被害があっ
た被災地で,日本の手織り「さをり織り」が被災者の心のケアを目的に導入されました。語
学研究部ではそれらの商品を販売しながら,雑貨市を訪れた方に防災について改めて意識
してもらうことができました。
また,利益は多賀城市国際交流協会の募金とともに,ミャンマーに寄付します。昨年度,
ミャンマー出身の技能実習生と交流する機会をいただきました。現在,ミャンマーは軍事ク
ーデターで市民が苦しんでいるため,募金と寄付金ははその市民への炊き出し支援になる
ように使われる予定です。

 

(2)インドネシアサンタローレンシア校との交流事業

現在、コロナ禍において交流事業はオンラインに限られていますが、インドネシアの

状況も改善傾向にあり、今後オンラインシステムを利用した生徒交流事業をすすめていく

予定です。

来年度の活動計画

多賀城七ヶ浜巡検・まち歩き(4月)

洞爺湖有珠山ジオパーク巡検(5月)

釧路湿原巡検(6月)

浦戸巡検(7月)

「世界津波の日」高校生サミット参加(9月)

1学年つくば研修(10月)

栗駒・気仙沼巡検(10月)

ESD学習発表会(10月)

石巻・女川巡検(11月)

課題研究発表会(12月)

伊豆沼研修(1月)

東日本大震災メモリアルDay(1月)

HOKKAIDOサイエンスフェスティバル参加(2月)

つくばScience Edge参加(3月)

県理数科課題研究発表会(3月)