2022年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 気候変動, 環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, 福祉, 貧困, グローバル・シチズンシップ教育(GCED), その他の関連分野

本校は,「進取創造」「至誠貢献」という校訓に基づき,「地域・日本・世界に貢献できるグローバルリーダーの育成」を目指している。これに関し,ESDを地球市民としての資質育成にとって重要な教育活動として捉え,特に「世界の水問題の解決」を学校全体の活動テーマとし,中学校と高校で連携・連動して,主に課題研究を通した探究活動を展開している。具体的には年間を通して,教育課程に組み込まれている「総合的な学習の時間」(中学校)と「グローバルスタディ(GS)課題研究」(学校設定教科),「総合的な探究の時間」(高校)を柱にし,フィールドワークや研修旅行等の行事と連動しながら,例年の中軸である①環境学習に係わる活動,②課題研究に係わる教育,③国際理解に係わる学習の3点に加え,④福祉に係わる学習,⑤平和に係わる学習を行った。2022年度は新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響を受けたものの,配慮と創意工夫をしながら,学びの場が失われないよう努めた。

環境学習に係わる活動

中学:中学校1年生では, 通年3回の野外巡検(定点観測)を通じて,四季の移ろいによる植生の変化や生命の多様性を感じ取らせ,その体験的・感覚的事象をデータ化し,実証的かつ科学的に問題を捉えさせる取組を行った。また,中学校2年生は「北上川フィールドワーク」において, 身近な川について探究学習を行った。被災したヨシ原の再生活動を通して生物・地学・水問題の分野を考察するとともに,震災と防災に関しても理解を深めることができた。

高校: 9月に高校1年次生全員参加で,1泊2日の「北上川フィールドワーク」において,鉱山の汚染にあった地域の学習や防災施設の見学,専門家による講義または東日本大震災で津波被害を受けた地域の現地調査を通して,水や環境等について総合的かつ体験的に学んだ。高校2年次は11月に3泊4日の沖縄研修旅行において,埋め立てが進む辺野古でのシーカヤック体験や亜熱帯の植生観察等を通して,環境について広く認識を深めた。この体験的な学習の効果は大きく,今年度の学習全体の土台となった。

課題研究に係わる教育

中学:中学校2・3年生はグループ毎にテーマを設定し,観察・実験を行い,ポスターやプレゼンテーション形式で発表した。文化祭や課題研究発表会で発表することで,中学や高校の他学年や保護者と意見を交換する場となった。

高校:高校1年生は全員「GS課題研究Ⅰ」に取り組む。高校1年次生は水問題や環境問題等についての書籍を読んで取り組む「ブックレビュー」,「模擬国連」,「北上川フィールドワーク」,その後の研究発表などを行った。高校2年次は個人または少人数のグループで「GS課題研究Ⅱ」あるいは,総合的な探究の時間における探究活動に取り組み,2022年度はSDGsから各自の興味関心に基づいてテーマを設定し,研究活動を展開している。11月の研修旅行は新型コロナにより行き先を国内(沖縄)に変更し,平和や世界遺産,異文化等について学び,コロナ禍においても大きな教育成果を生み出した。高校3年次は「GS課題研究Ⅲ」を選択した生徒が研究成果を英語でまとめ,発表する学習を行った。

 

 

国際理解に係わる学習

本校の特徴でもある活発な国際交流は,新型コロナ感染症の蔓延により例年通りに実施することが困難であった。生徒の活動が大きく制限される中で,感染予防に努め,工夫しながら実施できる方法を模索した。

中学:中学校1年生は,「総合的な学習の時間」で広く国際理解について学ぶために「国際理解ワークショップ」を実施した。海外出身の講師を招いた「世界の国からこんにちは」では,外国への文化の知識を得ることで世界への関心を抱き,「世界がもし100人の村だったら」では,世界を身近に感じる機会となった。中学校2年生では,外国人講師との交流体験を通して異文化理解を深めることを目標として,3日間の「イングリッシュキャンプ」を行った。その活動を通じて,英語での会話やコミュニケーションをとる際のマナーやルールを身に付けることができた。また,中学校3年生では,本校の特色ある教育の一環として今年から始まった「イングリッシュ・プレゼンテーション」を通じて,「平和教育」や「ジェンダー平等」等の社会問題についても国際的な観点から理解を深めることができた。また,英語でのコミュニケーション能力や論理的思考,さらに表現力を高めた。例年なら行っているシンガポールの姉妹校との交流については,昨年度に引き続き今年度もZoomを用いた4回のオンライン交流で,相互理解・異文化理解を深めた。また,研修旅行の一環で,京都大学農学部の教授による講話に参加し,日々の研究が国際的な協力の下で行われていることを理解した。本年度もコロナ対策をしながら様々な場で国際理解の学習ができたと考えている。

高校:
・メコン川フィールドワークで,カンボジアのバイヨン中学校に3年ぶりに訪問

 

 

 

 

・アメリカ・デラウェア州へ交流生徒派遣研修を3年ぶりに実施予定(3月)

・インドネシアからの長期留学生を受け入れており,生徒たちの日常的な異文化理解の場となっている。

・昨年度からスタートした国際バカロレア(IB)の授業担当者として様々な国籍の外国人講師が来校しており,生徒たちと交流を深めている。
・高校2年次から行っているバカロレア類型の授業では,主に英語で書かれたテキストを用いて,外国人講師による授業が行われている。
・全日本高校生模擬国連大会に参加した。

・ユネスコスクール東北ブロック大会に初参加した。
・部活動としては,英語部が精力的にユネスコ活動や国際理解活動に励んでおり,国際理解に関する弁論大会やスピーチコンテスト等において多く入賞を果たしている。また,JRC部はワクチン普及のためのエコキャップ回収運動やユネスコ寺子屋運動(書き損じはがきの回収)も実施中である。

福祉に係わる活動

高校:JRC部と英語部が中心になり,国境なき医師団への募金活動や緑の羽根募金活動,ユネスコ世界寺子屋運動などを行った。

平和に係わる活動

中学:昨年度より国内になった研修旅行では,グループでの京都探究学習と広島の平和学習を実施した。その事前学習は,総合的な学習の時間で行い,より平和についての知識と共に国際理解も深めた。広島において平和学習の一環として平和記念資料館で見学をした後,伝承者による被爆伝承講話を体験した。またボランティアガイドによる平和記念公園のツアーで,原爆の子の像や世界遺産の広島平和記念碑をガイドの解説と共に訪れて,平和への知識と理解を総合的・体験的に学んだ。

高校:研修場所をシンガポールから沖縄に変更した研修旅行では,米軍基地の現状と問題について理解を深めることができた。特に埋め立てが進む辺野古でのシーカヤック体験は,環境と平和の両方を考える良い機会となった。また,平和祈念公園では鎮魂の祈りを捧げると共に, 資料館を訪れて改めて平和の尊さを認識することができた。また,3月に,ロシアの軍事侵攻のため,隣国のポーランドに避難しているウクライナ人のためにメッセージや絵を送った。12月には,英語部の生徒が,ポーランドの学校とオンライン交流を行い,ポーランドとウクライナの生徒との直接の交流を通して,戦争の酷さや国境を越えて繋がることの大切さを学んだ。

 

<総括>

本校のユネスコ活動は,日常の学校生活や教育活動の中に定着してきている。中軸となる「課題研究」はもちろん,諸行事,部活動等を通して,世界が抱える問題に関心をもつことが自然になっている。今年度も新型コロナウイルス感染症の拡大により開催が危ぶまれたが,3年ぶりに,メコン川フィールドワークやアメリカ姉妹校交流,国際学会参加等,感染対策を十分に行った上で,できる限りの工夫をして行事を実施し,生徒の体験的な学びの場の確保に努めた。実際の体験を伴う学習は,知識の活用や視野の拡大等,学習面またESDの理解促進の面で有効性が認められた。次年度も,高2生徒全員参加による海外研修旅行や,教育課程に定位した課題研究等をベースにし,生徒たちがグローバルイシューを自分たちの課題として捉えて,これからの社会に貢献しようとする姿勢を涵養していきたい。

来年度の活動計画

2023年度についても,新型コロナウィルス感染症の感染状況を注視しつつ,工夫しながらユネスコ活動を進めていきたい。

中学:2022年に引き続き「総合的な学習の時間」を通じて,以下のユネスコ活動を計画的に実施する予定である。

① 環境学習(巡検,植生研究,水問題学習,国内研修旅行等)
② 課題研究学習(課題研究,ポスター発表等)
③ 国際理解学習(国際交流,イングリッシュキャンプ,国際理解ワークショップ等)
④ 平和学習(国内研修旅行)

高校:「課題研究」を通して,以下の3本柱で,年間を通して教育活動を展開していく。その際,SDGsを課題研究にからめながら,ホールスクールで展開していきたい。

①環境学習(北上川フィールドワーク,メコン川フィールドワーク,世界の水問題等)
②課題解決学習(課題研究,研修旅行での学習,ポスター発表等)
③国際理解学習(海外交流校との交流,留学生や外国人講師との異文化理解等)

同時に,中学・高校合同で,文化祭におけるチャリティー活動,災害時募金活動,また地域への貢献活動やボランティア活動を,関係機関と協力しながら,充実させていきたい。