2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 減災・防災, 気候変動, エネルギー, 環境, 文化多様性, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, ジェンダー平等, 福祉, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育, 貧困, グローバル・シチズンシップ教育(GCED)

本校は、「Game Changer―新たな価値と希望を生み出す人―」を2030年に向けての学校ミッションとして掲げ、サイエンス教育・グローバル教育・ICT教育に力を入れている。そうした中で、個々の教育活動が“点”の状態とならないよう「SDGsで“つなぐ”キャリア教育」をコンセプトに、ESDの観点から従来の教育内容を再構築し、学校全体でESDに取り組む方法を模索してきた。特に昨年完成年度を迎えた「共創探究科」を学びの軸に据えることで、生徒たちは主体的にSDGsの解決に向けた活動を行えるようになったと考える。生徒自身の興味・関心とSDGsとの関連性を意識させた探究活動を中心に、以下のような①教員への啓発活動、②SSHに係わる教育、③教科教育、④国際交流活動を行った。

 

①教員への啓発活動

「理想的な探究科教員とは」ということを共有すべく、夏休みに校内研修会を実施した。今年度は教員及び生徒に同内容のアンケート調査を実施し、その回答を比較することで探究活動に対する認識に違いがあるのか、あるとすればどういった点なのかという現状理解を図ると同時に、課題改善に向けての意思統一を図ることを重視した。加えて、これまで高校中心となっていた探究活動について、中学においても「道徳」の時間を活用することで、探究マインドを育成することができるのではないかということを検討した。また、大学教員に対して附属校生徒の授業(探究活動)を見せることでその到達レベルを認識してもらい、大学初年次教育に生かせるよう、中等教育・高等教育の枠を取り払った教員への啓発活動を行うことができた。

 

②SSHに係わる教育

BKC(立命館大学)との接続を活かして、週1回の高大連携授業関連だけでなく、校外研修の講師として大学教授を招聘するなどより高度な連携をしている。また、地域性を活かして琵琶湖における水環境ワークショップを実施した他、生物・建築・電子工学など各分野特性をテーマにした宿泊を伴うサイエンスキャンプを実施した。さらに、滋賀医科大学において6回の連続講座となる医療基礎セミナーを行うなど他大学との接続も行っている。こうした教育環境の中、中学サイテック部では野洲川河口域でのヨシ帯の保全活動や、高校では日本陸水学会で優秀賞を受賞したりするなどの顕著な成果も得られた。

 

③教科教育

昨年度完成年度を迎えた「共創探究科」の7科目について、より「質の高い探究」(高度化と自律性)を目指し、教員・生徒ともに取り組むことができた。この3年間の探究活動を通じて、ESDで重視したい「批判的思考力」や「問題設定・解決力」、「協働する力」や「先を見通す力」などを身につけることができたと考える。生徒が各種コンテスト等で目に見える成果を上げたことや、進学学部先の決定にあたって高校の探究学習を継続したい意欲が生徒から見られるようになったのは、評価できる点である。

 

④国際交流活動

他国の生徒との交流を通じて俯瞰的に現在の世界の状況を捉えることが、海外渡航できない中での生徒たちの閉塞感を打破し、更に世界と繋がりたいと考える生徒たちの一助となると考え、ウィズコロナでの国際交流を、10の国と地域(アメリカ合衆国・アラブ首長国連邦・インドネシア・韓国・シンガポール・中国・台湾・トルコ・ポーランド・マレーシア)と実施。今年度はこれまでに360名以上の中高生が参加している。

来年度の活動計画

次年度より、他大学受験を目指すフロンティアコースの生徒も含め、本校の全生徒が共創探究科科目を受講することとなる。これは、学内推薦生徒は探究的な学び、他大学受験生徒はいわゆる「受験勉強」として切り離していた旧体制からの脱却である。当然、受験があるから課題解決学習が不要なわけではなく、そのことはおおよそすべての教員が理解しているが、一方で時間の捻出が難しいことや、「大学合格」という結果を残さなければ本当に課題解決型学習は必要なのか?という議論に発展しかねない。そのため、教員のマインドセット改革や探究指導力養成は今年度以上に必要な課題となることを意識した、実践的な教員研修を行いたい。
一部の教員の理解だけでは、育てられる生徒の数や機会に限界がある。すべての教員の探究力・指導力を向上させることによって、生徒の課題解決学習も中身の濃い学びになると同時に、SDGsが生徒にとって、より「自分ごと」になる。他者や未来社会への思いやりをもち、新しい価値創造のために貢献できるよう生徒を支えることのできる教員体制を整える。