2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

気候変動, エネルギー, 環境, 世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解

おくの義務教育学校は、ユネスコスクールであった奥野小学校と牛久第二中学校が統合し、令和2年度に開校しました。引き続きユネスコスクールとしてESDを推進しています。

1.はじめに

本校がある地域「おくの」は、自然豊かで歴史のある地域である。そして本校は、コミュニティスクールとして、学校運営協議会を中心とした地域に支えられている。この恵まれた自然環境と地域人材を活かし、「地域と共に本校の子供達を育てること」を核としESDを推進することで、本校児童生徒の「育成したい8つの資質・能力」(資料1)を8つの高めたい資質・能力高め、本校が目指す児童生徒像「おくのを知り、おくのに貢献する児童生徒」(本校グランドデザインより)、つまり持続可能な社会の創り手を育成することをねらいとしている。

 

(1)「総合的な学習の時間」における単元「ふるさとおくの」を柱としたESD

本校は、ユネスコスクールであった小・中学校が統合し、義務教育学校として令和2年度に開校した。総合的な学習の時間を柱とした9年間の系統的なESDの推進を重点に置き、教育活動を進めている。そして、その中心単元が「ふるさとおくの」であり、その活動の中で特に大事にしているのが「Think globally、Act locally」の理念である。前期課程1・2年では自然体験を、3・4年では自然への気付きを大切にし、5年からは海外の学校との交流を通して、地球規模の問題について考えたり、自分の国や地域と比較したりして、視野を広げていく。そして後期課程7年からは、自分達の住む地域おくのへと視点を戻し、大切なおくのの課題を見出し、地域の一員として何ができるのか考え、行動へと移していく。これら一連の活動を通して、児童生徒の資質・能力を高め、将来このおくのを支え、おくのに貢献し、さらには持続可能な社会の創り手の育成へとつなげていくことを目指した。

(2)「つなぐ」を大切にした学校教育全体に広がるESD

9年間のカリキュラムを系統的なESDの柱で1本太くつなぎ、効果的なカリキュラム・マネジメントを学校全体で意識して行った。同時に、教職員だけでなく、学校運営協議会を中心とした地域の人的・物的資源とのつながりを大切にしていくことで、一層の児童生徒の資質・能力の向上を目指した。そして、委員会活動や学校行事など、さまざまな教育活動へとつなげていくことで、本校の教育活動全体にESDが広がり、根付いていくことを目指した。

 

2.ESD大賞「中学校賞」を受賞

(本校HPより)11月27日第13回ユネスコスクール全国大会にて、「ESD大賞・中学校賞(義務教育学校)」を受賞した。(本校は義務教育学校のため、中学校部門での審査)
本校は、奥野小・牛久二中の統合前から、ユネスコスクールとして、ESDの推進に努力してきました。そしてそれらの活動は、地域の方と「共に子供を育てる」ことを大事に取り組んできたものである。
また、学校評価アンケートでは、保護者の方からも、ESD・SDGsに関する取組についての評価は高い結果をいただき、児童生徒そして保護者の方の意識も変わってきていることを感じている。
今後もこの受賞を励みに、ESDそしてSDGsに関する活動を進めていきたいと思う。

3.実践内容

(1)「地域と共に子どもを育てる」、地域に支えられたESD

本校のESDは、学校運営協議会をはじめ地域による人的・物的支援に支えられている。しかし、それらの多くがイベント的・単発的なものであり、児童生徒の資質・能力を確実に高めていくためには、地域の方達にも本校の「ESD推進のねらいの理解・共有が重要」であるとして、令和2年度末の学校運営協議会で、令和3年度の教育活動に向けて改善を図った。手立てとして、学校長が「共に子どもを育てていきたい」と説明し、その後、教頭が資料2のように視覚的カリキュラム表の説明を行い、各学年の教育活動の共有を行った。その後、「子どもにどんな力をつけさせたいのか」と各学年主任と地域の方と令和3年度に向けた人的・物的体制について話し合いが行われた。その後も定期的に見直し、改善を行っている。

(2)各学年のESD取組の実践(一部)

①前期課程1、2年・・・おくのの自然を感じる

【2年生 生活科 「森探検」】

本校のESDのスタートとして、1、2年生は、おくのの豊かな自然に十分に触れ、1年間を通して様々な活動を通して、森探検自然を感じる学習を行う。2年生は、資料3のように、本校や地域の人々が「おくのの森」と呼んでいるやまゆりの林の探検を行った。植物を調べたり、鳥の声を聞いたりして、自然の中でのたくさんの発見を通して、「おくの」の自然を十分に感じた。その後、森での実体験を、視覚的カリキュラム表をもとにカリキュラム・マネジメントの視点から、国語や図工をはじめとした他教科への学習活動へと広げていった。

②前期課程3、4年・・・身のまわりの自然への気付き、様々な関連性、SDGsの基礎的な学習

【4年生 総合的な学習の時間 世界や日本の問題を知ろう!(SDGs 17の目標の学習)】

4年生は、SDGs17の目標の表示をもとに、世界や日本の問題についての学習を行った。学習を通して、日本や世界には、様々な問題があることを知った。ある児童の「〇番の問題が解決すると、□番の問題も良くなるかな?」というつぶやきに、他の児童から「△番の問題も良くなるのでは?」という発言が出た。さらに「(これらの問題は)つながっているんだね。」「本当だ。」と友達同士の考えが、つながり広がっていく瞬間が見られた。学校全体でのESD推進の素地があるからこその、子ども達の思考のつながり、広がりが見られた一例である。その後、SDGsのすごろくゲームを通して、17の目標に慣れ親しんでいた。

③前期課程5、6年・・・地域のくらし、課題を地域と共有・提案、そして海外との交流スタート

【5年生 オーストラリアと交流スタート】

5年生は、オーストラリアの学校との交流では、自校のことや総合で学習した奥野地区に残る文化財などを紹介した。オーストラリアについて、興味があることを質問したりしてコミュニケーションを図ることができた。また、エアメールの送り方、料金など送り方を自ら調べ、習字や折り紙など日本の文化がわかるプレゼントを添えて、手紙を送った。返事をもらったり、送ったものが掲示された写真を送ってもらったりして、うれしそうな姿が見られた。海外への関心を高める機会となった。

【5年生 総合的な学習の時間 おくのの歴史や文化を継承しよう】

5年生は、地域の方から「おくのの歴史や文化を守ってほしい」と依頼を受け、「地域に昔から残る風習、行事、神社・仏閣を守り、受け継いでいくために、自分たちにできることは何だろう。」というテーマで活動を行った。まず、地域の風習、行事、神社、仏閣を調べ、その中で特に金剛院と団子念仏に注目した。全校児童生徒や保護者にアンケートをとったり、歴史や文化を守る方法について考えたりした。そして、自分たちの考えた方法として、「キャラクターをつくって、全校児童生徒や地域の人に金剛院・団子念仏を知ってもらう」として活動を進めているところである。

【6年生 総合的な学習の時間「アートマイル国際協働学習」】

6年生は、アートマイル国際協働学習に参加している。2020年度は、インドネシアのアートマイル壁画プロジェクト(牛久シャトー)ユネスコスクールと交流を通して、様々なことを実感したり、学んだりした。また今回の交流では、SDGsの視点だけでなく、交流相手の学校がコロナ禍で休校になってしまったこともあり、世界的課題である新型コロナウィルス感染症もテーマとして取り上げ交流を進め、自分達の思いを協働活動を通して壁画制作という形で表した。この壁画は、資料のように約1ヶ月間、牛久シャトー内の日本遺産ビジターセンターに展示された。

また、2021年度は、台湾の学校の子ども達と交流を進めている。交流相手の学校が特に水環境について関心を持って活動していることから、本校児童もSDGs目標6に関心を高め、活動を進めている。そして、SDGsの視点からの課題についての交流を経て、現在、両国協働で自分達の思いを込めて壁画を制作しているところである。

④後期課程7~9年・・・課題を地域と共有・提案、地域社会との協働、持続可能な社会の担い手へ

【7~9年 後期課程学校行事「歩く会」】

後期課程では「Act locally」へと視点を戻し、「SDGs目標11住み続けられるまちづくりを」歩く会につなげた学習を進めていく。まず、後期課程学校行事「歩く会」(資料5)で、前期課程までに培った資質・能力を生かし、そして地域の方と共に改めて地域「おくの」を歩き、地域の課題を明らかにしていく活動を行った。

【前期課程から後期課程の学習へとつなげる】

前期課程の学習により、生徒たちのSDGsへの意識は確実に高まっている。後期課程7年となり、「歩く会」でSDGsの視点で地域の現状を調べると、森林が多くを占め、放置林の増加や太陽光発電設備の建設が急速に進むという実状が浮き彫りとなった。その後、文部科学省からインドネシアの日本大使館に出向している髙橋さんによるSDGが示す世界的な課題と地域おくのの関連についての講義を頂いた。そして、本校のESDの活動拠点である古民家などで、自分達の地域の課題について考えた。

【7年生 総合的な学習の時間 地域「おくの」の課題について知る】

最初は、「森林の保持」か「太陽光発電設備」かのどちらを優先するのかについて検討していたが、考えが深くなるほど、次第に双方の共存を目指すことが地域を魅力あるものにすると共に、持続可能な社会へとつながるのではないかという考えが多数を占めるに至った。そこで、多くの学年が支援を受けているNPO法人アサザ基金や、クリーンエネルギーを扱う企業、市役所環境政策課によるレクチャー等から多様な視点や考えから地域を捉える機会を得た。今後さらに発展させていく予定である。

(3)本校のESDを支える国際教育

ユネスコスクールとして、「Think globally、Act locally」の理念のもとESDを推進するためには、国際教育も重要である。したがって、本校では、次のような教育活動も推進している。

①前期課程 イングリッシュタイム

前期課程では、英語に慣れ親しむことができるよう、英語の授業とは別に週2~3回イングリッシュタイムを設定している。これは、地域ボランティアの方の支援によるものである。

②1、2年 ワールドキャラバン国際理解教育

本年度は、講師として、ウクライナとウガンダ出身の2人を講師として行われた。それぞれの国の文化や生活について理解したり、海外への関心を高めたりしていた。

③3、4年 JICA筑波国際協力出前講座

本年度は、JICA日系社会ボランティアの方を講師として招き行われた。世界は様々な文化や生活、思考があることや、世界が抱える問題や国際協力について考えを深めることができた。

④5年生~海外との交流スタート

児童生徒が世界的な視野で物事を捉えることができるように、2015年度より、海外の学校と交流を行っている。現在は5年がオーストラリア、6年が台湾、7年がインドネシア、8年がリトアニア、9年がポーランドの学校と交流を進めている。

⑤8年生 ブリティッシュヒルズ外国語研修

 福島県にある「ブリティッシュヒルズ」において、外国語宿泊研修が行われた。英国の建築様式や生活様式、調度品にふれ、本物を見たり実体験したりすることを通して異文化理解を深めた。そして、英国圏の外国人講師や現地スタッフとの英語による日常会話やレッスンを通して、言語活用・運用能力の向上を図った。

(4)ESDの深化を目指した新たな取組

【6・7年生によるアートマイル国際協働学習 座談会~ESDの深化を目指して】

アートマイル国際協働学習に取り組んだ、6、7年生による座談会が行われた。年々、ESDの取組が各学年の教育活動に浸透し、義務学校化に伴い系統性も意識して取り組んでいるところである。しかし、単独でSDGsの学習を進めている学年があったり、活動内容が異学年で重なってしまったりするという課題がある。そこで、前期課程と後期課程をつなぎ、更なる活動の深化を目指し、6・7年代表による座談会が設定された。6・7年がどちらも取り組んだアートマイル国際協働学習を踏まえ、海外の学校との交流を通して学んだことについて話し合いが行われた。話し合いの様子から、一人一人がSDGsを自分事としてとらえ、将来に対する願いをもち、自分から行動しようという態度が生まれており、「Think globally、act locally」を体現していると強く感じられた。今後、学年の縦の流れを意識した異学年活動や、他学年にも学習状況がわかるようにして、各学年の学習が一層深まるようにすることの必要性を確認した。

(5)ESDの学校全体へのつながり、広がり

ここまで述べた一連のESD推進のための教育活動は学校全体でつながり、様々な活動へ広がりつつある。ここでは、その一部を紹介する。

①生徒会活動への広がり

画像は、生徒会ポスターである。活動の主となる3メリット計画の中には、ユネスコスクールとしてSDGsの取組が位置づけられている。コロナ禍のオンラインによる文化祭では、生徒会本部役員を中心に、SDGsの「目標2 飢餓をゼロに」の取組として全校で募金を行った。また、企画の一つとして、各委員会ごとのSDGsに関する全校での取組が動画で紹介された。目的をもってSDGsを意識した活動が、各委員会活動としても広がっていることがわかる内容であった。

②教職員研修を生かして

年度始めには、新しく本校に赴任した教職員に対して、そして1年間を通してどのようにESDを推進していくのか確認の意味も含めて、ESD・SDGs研修を行っている。学校全体についてだけでなく、学年ごとにも学年主任を中心に方針や流れを確認した。

また、6月には、在インドネシア大使館の髙橋さんによるESD・SDGs研修がオンラインで行われた。髙橋さんは、日本のESD発展に直接関わってきた方である。ESD・SDGs・ユネスコスクールとの関係や、成り立ちや定着等について、直接聞くことで、更なる理解を深めた。そして、日々の実践の中での疑問についてのQ&Aの時間も設定され、貴重な研修となった。

さらに、夏期研修では、カリキュラム・マネジメント研修において、全教員でカリマネの意義や有用性を確認し、実際に視覚的カリキュラム表をもとにカリキュラム・マネジメントの可能性の見直しを行った。そして、本校が推進しているSDGsに関する取組も視覚的に見える化することで、9年間の系統的な学びがより効果的になるように、カリキュラム表にSDGsアイコンシールを貼る活動も行った。各学年・各教科だけでなく、学校全体で教育活動のSDGsの関連性の確認により、ESDの取組をさらに充実させていくことを目指した。

4.成果と課題

(1)保護者学校評価アンケートより

資料9の質問1~4の結果から、保護者に85%以上と一定の評価が得られていることがわかる。保護者アンケートしかし、5については課題であり、これは児童生徒の高めたい8つの資質・能力③、④、⑧と関連が大きい内容である。今後も、これらの成果と結果を生かし、児童生徒の高めたい8つ資質・能力の向上を目指し、地域と連携を重ねながら、本校のESD・SDGsの取組の改善を続けていきたい。

 

 

 

 

来年度の活動計画

2021年12月の学校運営協議会では、ESD大賞「中学校(義務教育学校)賞」の報告の後、総合的な学習の時間を中心としたESD・SDGsの取組の中間報告および計画の改善・見通しを行った。2021年度もコロナ禍ということで、変更・改善等が少なくなかったためである。今後まずは、見直しをした活動の実践を地域の方と一緒に行っていく。そして、2021年度末の学校運営協議会において、2021年度の活動を各学年主任と地域の方と一緒に振り返り、見直しを行っていく予定である。その際、本校が推進している総合的な学習の時間を柱としたESD・SDGsの取組の見直しから、改善を行い、次年度2022年度のよりよい活動へとつなげていきたい。

また、並行して、次年度の教育課程編成の総合部会において、次年度の年間計画を進めている。現在、児童生徒が探究的な活動となるよう、またさらに系統的になるように、各学年のテーマとする内容の精選を行っているところである。また、児童生徒および教職員、そして保護者アンケートを生かし、児童生徒の育てたい8つの資質・能力を高め、持続可能な社会の担い手を育成していきたい。