2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 減災・防災, 環境, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 人権, ジェンダー平等, 健康

本校は、20年以上「探究」「表現」「交流」を学習活動の柱とした生活科,総合的な学習である「菊の子学習」の実践を展開し、国際理解、異文化間理解、また多文化共生、生物多様性、環境などの分野での児童の課題解決学習を継続してきた。しかし、現代の予測困難な変化が伴う社会の様相、VUCAな時代(volatile, uncertain,complex,ambiguous)が加速化される中で、「自立」と「共生」に向けて豊かな未来を切り拓いて生きることができる資質・能力を育成するために、「グローバル社会に生きる力の育成」を学校理念(研究テーマ)として、現代的な諸課題を教科横断的で探究的に学ぶ新教科「探究科」の創設と実践を中心にして、文部科学省研究開発指定4年目の研究に取り組んでいる。「探究科」の新設にあたっては、国際バカロレア機構の初等教育プログラム(PYP)からその理念や手法(児童像、学習観、テーマの設定、問いの設定、領域構成)を取り入れて構想している。本校の探究科の領域はA「自分らしさの尊重」B「人の多様性と背景」C「意志の表現と伝達」D「自然界の仕組みと活用」E「多様性が生きる社会」F「地球との共生」である。
本校での取り組みは、ESDがめざす「持続可能な社会作りの担い手を育む教育」と一致するものと捉えている。また、そのような教育をトピック的学習で終わらせるのではなく、6年間の系統性の中で積み上げるカリキュラムを作成している。
本年度、新型コロナウィルス感染症による臨時休業期間もあり、6月から新学年がスタートすることになった。学校生活においては感染対策を取りながら「探究科」をはじめ、教科学習及び学校行事等を可能な範囲(オンライン学習も含む)で展開した。そこで、「探究科」として昨年度からの修正を加えて取り組んだ単元をピックアップして紹介する。

① 人権、ジェンダー平等に係わる学習

・1年「わたしとかぞくとのかんけい」A領域(自分らしさの尊重)では「家族一人一人に役割があり、支えあう」という探究のテーマに沿って、家族の仕事を調べたり、家族と手紙を交換したりし、家族の一員として自分ができることに取り組み、「家族とわたし」の本をつくる活動を通して、家計や家事に関わる仕事や家族の団らん、家族で過ごす楽しみ、家族一人一人の思いや願い、家族の立場や役割など家族との人間関係に対する概念を形成し、家族への感謝の気持ちをもち家族の一員として自分ができることに継続して取り組んだり、健康に気を付けて生活したり、これからの自分の成長に願いをもって意欲的に生活しようとしたりしていくことが大切だと考える価値観を考えることができた。

② 健康に係わる学習

・5年「満たされた生活を創造する~いつでも誰もが健やかに生きていく~」A領域(自分らしさの尊重)では「満たされた生活を創造する~いつでもだれでもが健やかに生きていく」という探究のテーマに沿って、人の誕生や成長、食料生産に関わる人々の工夫や努力、人間の心と体の関係について調べる活動を通して、身体的・社会的・精神的な健康に関する概念を形成し、生命の恵みやそれを支える多くの人に感謝しながらも今後の自分自身のより良い成長について向き合うことがたいせつであるという価値観について考えることができた。授業では、「1947年に採択されたWHO憲章では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることを言います。」と述べています。70年以上前に規定されたこの健康の定義ですが、2020年のあなたはどのように規定しますか。」というパフォーマンス課題を設定したが、そのまとめでは、児童がそれぞれの考えを持ち寄ってレポートしパワーポイントなどを使ってプレゼンテーションをすることができた。

③ 環境 ・エネルギーに係わる学習

・4年「自分の生活と水とのかかわりを考えよう~水に流す×心=○~」F領域(地球との共存)では、理科的なアプローチで水の性質について、社会科的なアプローチで水を作る公共事業の役割(利用する仕組み)について実際に下水処理場の見学はできなかったが、教師の資料提供や調べ学習など個人やグループで新たな課題を見いだしそれについて実験や調べ学習、話し合いを積み重ねて追究していく。人が生きていくうえで必要な水の性質や特徴、役割、社会問題等を捉える活動を通して、地球環境の中で人間と多くの生物がともに生きていくためにどのようにかかわっていくかについて、自分なりの概念を形成し、地球環境を大切にした水生活を進めていくことが人間と生物、地球全体が豊かな営みを続けていくことが大切だと考える価値観を構成する。授業では、「水を上手に活用する」ことについての自分なりのアプローチの仕方を考え、水の性質を利用した省エネ対策や濾過の仕組み、また節水の仕方など生活に密着したテーマを選んで学習を進めることができた。また「水未来計画」と題して、異学年に対し、 自分たちが行った個人探究や実験の結果を報告するとともに、自分たちにできることを発表する。また、身近 で 取り組めることを呼びかけたポスターや ステッカーを学校内に掲示 し、水の使い方について提案した。「水」だけに限定せず「資源」を大切にする視点も取り込むことで、節水とゴミの増加の関連や、食生活との関連等にも子どもたちの議論が発展した。

来年度の活動計画

①地域理解に係わる学習(環境学習・世界遺産や地域の文化財等に関する学習を含む)

・フリータイム学習(3~6年生)
移動教室、地域におけるフィールド学習(フリータイム学習)4~6年生が移動教室で行く地域(富浦・箱根・日光)、学校周辺地域である練馬区大泉の歴史、文化、自然環境、特産物などについて、自分が興味をもったテーマから課題を設定し体験を通して探究活動を行い、問題解決や学びを深めていく活動。現地では、専門家を指導者として依頼し、グループごとに体験活動を行い、活動後に成果の発表会を行う。発表会には保護者や1つ下の学年を招き発表することで、児童は来年度に向けての見通しをもつことができる。令和2年度は移動教室が、新型コロナウィルス感染症感染防止にため、実施できなかったので、来年度は、実施する方向である。しかし、探究科の6つの領域との関連性も踏まえて地域理解に係わる視点のみならず、概念的な理解を深める学習を予定している。

・スポットガイド日光(6年生)
6年生が移動教室で出かける日光東照宮(世界遺産)についてグループごとに調べ、現地で観光客(外国人を含む)に声をかけ、日光東照宮周辺についてのガイド活動を行う活動。英語活動で事前に使える英語を学習し、外国人観光客にも積極的に声をかけるようにする。また、国際学級児童が海外で身に付けた外国語を使って活躍する場にもなっている。前述したとおり、本年度は実施できなかったので、次年度は新型コロナウィルス感染症感染防止対策を取りながら、プログラムする予定である。

②国際理解に係わる学習
・東京韓国学校との交流学習(2年生)
本校は20年以上にわたり東京韓国学校との年間2回の交流授業を行っている。1回は東京韓国学校へ出向き、遊び、文化体験をする交流、韓国の遊び、文化(衣装などを着用)、民族舞踊を見せてもらう等の活動を行っている。2回目は本校に招待。「日本の遊び、日本の食べ物紹介、餅つき大会」等を行っている。交流に先立って、探究学習の一環として、「韓国ってどんな国?」と児童に投げかけ、児童が韓国の文化や生活などについて自分が興味関心を持ったことについて調べ学習を行っている.そこで調べたことを基にして韓国学校を訪問し、韓国の文化や遊び、韓国学校児童の学習の様子などに触れ、自分で調べた事を体験したり、日本との違いを質問したりする。次に本校に招いて、日本の文化や遊び、習慣などどんな事を伝えたらよいかを話し合い、準備をして、本校での交流活動を行っている。本年度は実施できなかったが、オンラインなどを活用しながらどのような交流ができるのか検討して実施する。

※上記の学習については既にカリキュラムとして定着し、検討を繰り返し改善を図りながら、20年以上本校で毎年継続して実践している。

③探究科

本年度紹介した実践を継続するとともに、国際バカロレアPYPの理念を取り入れたカリキュラムの開発とその完成を目指して新単元の実践研究をする。

④研究発表会 2022年1月29日(土) 開催(予定)

文部科学省研究開発指定(5年次)「新教科 探究科の創設」

~国際バカロレアPYPの理念を取り入れたカリキュラム開発~