2022年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

世界遺産・無形文化遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, 福祉, 健康, その他の関連分野

本校は、「自治と自由」の校訓のもと、「新たな未来を創造する人の育成」を教育目標に掲げ、ユネスコスクールが重点的に取り組む3つの分野を通して、地域の文化や社会的な課題に対する理解を深め、地域社会を維持し、担っていく力を培うとともに、広い視野を持って、異なる習慣や文化を持った人々とともに生きていくための資質や能力の育成を目標とした。

具体的には、ふるさと学習、国際交流を柱に、①世界遺産や地域の文化財等に関する学習、②SDGsの達成を視野に入れた学習を行った。

①世界遺産や地域の文化財等に関する学習

私たちが住む和歌山県には世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」があり、本校はその一部である高野山のふもとに位置している。空海の開いた高野山は1200年を超える歴史を有し、仏教の聖地として信仰の中心地であるだけでなく、国宝や重要文化財に認定された多くの仏教美術や建築物を保有している。この地域の宝である世界遺産や文化財を学ぶことにより、歴史や文化、伝統などに対する理解を深め、自分たちの地域に誇りを持ち、そのよさを発信し、地域の発展につなげることを目標に取り組んでいる。

中学校では、「総合的な学習の時間」にふるさと学習を行っている。3年間を通して、ふるさとに誇りを持ち、自らが次世代にむけてふるさとのよさを伝える担い手となるよう意識づけをすることを目的としている。1年生では、①橋本駅周辺の歴史探索 ②みかんのお話 ③「わかやまふるさと検定」などを行い「ふるさと」について理解を深め学ぶことができた。(②は伊都振興局から講師が来校)和歌山県にある世界遺産、和歌山の歴史・特産品、和歌山に関連する著名人などについて学びを深めることができた。2年生では、「ユネスコ日韓教職員オンライン対話プログラム」に参加し、9月には韓国の釜山国際中学の生徒と2回オンラインで交流をした。1回目は自己紹介と学校生活などについての質問を交流し、2回目は世界遺産「紀伊産地の霊場と参詣道」の町石道と高野山についてスライド発表をした。韓国の生徒たちも韓国の世界遺産について日本語を交えて紹介した。緊張しながらも初めての海外の生徒との交流はとても貴重な体験となった。

11月のユネスコ・コングレスでは、地域の方々に向けて世界遺産についての学習の成果を発表した。また、2月の韓国教職員招聘プログラムでは、韓国の先生方に日本の世界遺産についての発表を、英語を使ってオンラインで行う予定である。3年生は、世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」について調べ学習をした。校外学習では、世界遺産マスターの方の説明のもと、九度山町の慈尊院や丹生官省符神社について現地学習し、さらには町石道(慈尊院から展望台付近まで)を実際に歩くことで、当時の人々の生活に触れることができた。校外学習後、学んだことを新聞にまとめ発表した。

高校では、昨年に引き続き、中国成都外国語学校の生徒とオンライン交流を行った。中国の生徒に高野山を紹介するために、フィールドワークとして高野山へ行き、高野山と中国の歴史的なつながりや、観光地としての高野山について学んだ。現地で学んだことや実際に見学して感じたことなどをもとに、パワーポイントを作って、オンライン交流会で紹介した。

また、文科省の普通科改革支援事業の一環で、1学年全員が世界遺産高野山での現地研修を実施した。高野山大学の先生に講演していただいたり、ガイドの方と奥の院を見学したりして、歴史的な価値を知るとともに、観光地としての高野山の魅力を認識することができた。今後、高野山の魅力を海外へ紹介するとともに、高野山と地域の活性化に関するアイデアを提案していく予定である。

②SDGsの達成を視野に入れた学習

中学校では「総合的な学習の時間」において、SDGs の17のゴールについて学習した。2年生では、校外学習で農業体験をし、そこから学んだことをSDGsと関連させてスライドにまとめた。3年生では、名古屋・岐阜・三重での修学旅行にて、岐阜かかみがはら航空宇宙博物館と鳥羽水族館を訪問し、見学と講話を通してSDGs への取り組みについて学習した。

高校では「総合的な探究の時間」において、SDGsの達成を視野に入れた学習を年間を通して行った。1学年では、橋本市の協力により農林業や高齢者、子育てや危機管理など市の抱える課題に対して施策提言を行った。項目ごとの発表会では、市の各課の職員の方々にも審査をお願いし、項目ごとに代表作品を選んだ。選ばれた10作品はさらに学年全体の発表会でプレゼンテーションを行い、優秀作品は今後市長へプレゼンテーションを行う予定である。2学年は、同じ分野を選択した生徒がチームとなり、SDGs の目標について課題を設定し、フィールドワークやアンケートなどの調査を行い、解決策をパワーポイントにまとめて発表した。各クラスから選ばれた5作品は「「SDGs探究AWARDS」に応募した。3学年は、1、2年で培った探究のプロセスを使って、「SDGs卒業論文」の作成に取り組んだ。自分の進路に関連したテーマを決め、SDGs の観点を視野に入れ、インターネットなどから集めた情報をもとに考察をすすめ、2000字の論文を完成させ、3年間の「総合的な探究の時間」の集大成となった。

国際交流は昨年度に引き続き、オンラインによる交流を実施した。

(1) 中国四川省成都外国語学校との交流

昨年度に引き続き、独立行政法人国際交流基金が実施する日中高校生対話・協働プログラムに参加し、中国四川省成都外国語学校と「パンダとSDGsがつなぐ日中交流」をテーマに1年間にわたり、オンラインでの国際交流を行った。私たちの住む和歌山県にある白浜アドベンチャーワールドでは、中国の四川省成都パンダ繁殖センターとパンダの繁殖・飼育の共同研究を行っており、そのことが縁で、和歌山県と四川省は友好提携を結んでいる。中国でも日本でも人気のあるパンダを通して、中国と日本のつながりを学んだり、希少動物の保全や自然環境への支援につなげるSDGsの目標達成に向けた取り組みを学び合うことを目的とした。事前にアドベンチャーワールドでパンダの繁殖・飼育について学習したり、バックヤードツアーでSDGsの取り組みについて見学と説明を受け、企業が実践しているSDGsの取り組みについても学習することができた。

1回目(5月24日)「自己紹介と日中の若者の好きなもの」について

2回目(11月15日)「和歌山の世界遺産・高野山」と「成都の世界遺産」について

3回目(2月10日) 「日本と中国のパンダ」について

(2) 和歌山県・四川省青少年オンライン交流

10月15日に県国際課主催の四川省とオンライン交流事業に、県内高校生12名、四川省内高校生18名が参加し、本校からは1年生5名が参加した。日中の高校の代表者が自分たちの高校を紹介してくれたり、四川大学で学習している日本人留学生、和歌山大学で学習している中国人留学生が四川や和歌山での生活を紹介してくれた。文化体験では、双方オンラインでの指導のもと、パンダの色塗りや、紀州備長炭を使った風鈴を作成した。グループディスカッションでは、学校で流行っていることや食べ物、観光名所などを紹介し合った。1日の交流体験を通して、中国に対する興味や理解が深まり、貴重な体験となった。

(3) 海外和歌山県人会との交流(わかやま国際ネットワーク)

和歌山県国際課主催の海外和歌山県人会との交流プログラムである「わかやま国際ネットワーク」に高校1年生が参加し、10月25日に、アメリカ・カリフォルニア州の南加和歌山県人会とオンライン交流会を実施した。学年を3つのグループに分け、それぞれのグループに県人会のメンバーが加わり、グループごとに交流会を行った。事前に県職員の方から海外移民の歴史についての講義やビデオで現地の様子を紹介してもらった。交流当日のディスカッションで、画面越しに英語でのコミュニケーションに挑戦した。生徒たちの多くは外国の人との交流が初めてであったが、カリフォルニアで流行っているものやコロナのことなど、海外の様子をリアルタイムで話を聞けて、異文化に対する理解が深まり、とてもよい経験になった。「英語をもっと勉強したい」、「海外へ行ってみたい」、「もっと外国の文化について知りたい」「日本のことや和歌山の文化を広めたい」など、交流を通して多くのことを学んだ。

来年度の活動計画

①世界遺産や地域の文化財等に関する学習

中学校では、3学年とも「ふるさと学習」を「総合的な学習の時間」の中心として取り組む予定である。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」について、世界遺産マスターに指導を受けながら、SDGsに関連した学習をすすめていく。また、学習した内容を国内だけでなく海外の学校と交流する機会を持っていきたいと考えている。

高校でも海外とのオンライン交流をする際に、地域の世界遺産や文化財について学習し、発信していきたいと考えている。

②SDGsの達成を視野に入れた学習

中学校では、「総合的な学習の時間」で、SDGsの17のゴールについて知り、ゴールを「自分ごと」ととらえ、ゴール達成のために自分たちができることは何かを考える予定である。

高校では、「総合的な探究の時間」で、SDGsを核に学習活動に取り組む。1年次では、橋本市と協力して、農林業や高齢者、子育てや危機管理など市の抱える課題に対して市長へ施策提案を行う予定である。2年次では、グループごとにSDGsの目標の中から課題をみつけ、フィールドワークやアンケートなどの調査を通して解決策を考えて、プレゼンの形で発表する予定である。3年次では自分の進路と関連したテーマから課題を設定し、SDGsの観点を取り入れた考察を、論文の形で表現する予定である。3年間の「総合的な探究の時間」における学習活動を通して、地域の文化や社会的な課題に対する理解を深め、持続可能な社会を維持し、担っていく力を培うとともに、広い視野を持って、異なる習慣や文化を持った人々とともに生きていくための資質や能力の育成を目標としたい。

また、国際交流活動については、まだオンラインでの交流が中心となると思われる。今後も多くの生徒がいろいろな国や地域の人たちと交流ができる機会を増やしていきたい。また、交流の内容も、身近なことを紹介し合うだけではなく、SDGsのテーマについて、意見交換や問題解決方法などの考えを共有できるような力をつけていきたい。