2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

気候変動, 世界遺産・地域の文化財等

本年度はユネスコからの助成が受けられることになり、かねてより気にかかっていた、本校の白もくれん並木の再生に本格的に取り組めることになった。学校の象徴ともいえる白もくれんの並木再生を児童に託し、これを教材化することで、学校への愛着、愛情、学区への思慕の念を育めると考えた。また学区の人たちと協働的に取り組ませることは、この地域で生きる一人の人間としての自覚をもたせる絶好の機会となる。本校の児童は素直で、何事にも興味関心をもって取りかかることができる。しかし、継続して一つのことに取り組むことや、自分から課題や問題を見つけ動き出すことが苦手といった一面がある。その一方で、人との関わりにおいては、とても思いやり深く、どんな友達も温かく受け入れ、一緒に生きようとすることができ、子供ながらに懐の深いところがある。この児童らが、朽ちてしまう白もくれんの再生に長いスパンで取り組む中で、学びと振り返り、そして発信を繰り返し、後輩へと活動を引き継いでいくことができれば、学校の白もくれん並木は発展的な教材として、児童たちをさらに深い学びへと導いてくれるはずだ。そう考え、この取り組みを3つの段階「気付く」(体験からの課題認識・設定)「考える」(情報の収集と整理、)「実行する」(学びの発信、継承)で構成し、児童たちが多くの人の思いに触れながら、自然の命の尊さ、再生の難しさを実感し成長していく姿を追究した。

実際の活動のいくつかを児童の姿で報告する。

1 専門家からのアドバイスで立ち枯れの原因を探る

岡崎市がみどりの学校の活動として派遣している樹木医を招き、白もくれんをみていただいた。また、城南の白もくれんの状態についても詳しく教えていただいた。外では実際に児童たちとともに地面や樹木の状態を調べ教室では樹木の命をつないでいくために必要なことを教えていただいた。

2 私の木の継続観察

白もくれんに番号をつけ、児童個々に割り当てた。自分燠を継続して観察し樹木への愛着を抱けるようにした。

3 プロの手を借りた手当て

子どもたちだけでは、白もくれんの手当てはできない。監察しているだけでは、自分たちの活動が樹木を再生させているという実感が持てない。そこで、近くの造園業を営んでいる金原さんの手を借りて、一緒に白もくれんの手当てを行った。学校の白もくれんの植わっているところは日当たりが良すぎること、幹が乾燥すると傷みやすいこと、腐ってしまった部分は取り除いて手当をした方が良いことなどを教えてくださった。その後金原さんと一緒に樹木の手当てをした。白もくれんの乾燥を防ぐために、幹に幹巻きテープを巻いた。さらに、根元には、麻でできたマットを敷き、水を与えた。具体的に手当てをしたことで、白もくれんの再生へ期待が膨らみはじめた。「卒業までに少しでも復活に近づけるようにしたい」という児童の感想には「できないかもしれないけれど……」というニュアンスを含んだ消極的な意志ではあるが、前向きさが感じられるようになっている。自分の木に手当をして、安心した表情も見えた。

 

4 枯れてしまう木々について考える

再生可能な木には手当を施したが、今は花をつけていても、いずれは枯れてしまう可能性の高い、再生不可能と判断された木には手当が施されなかった。児童はその事実を淡々と受け止めていた。そんな折、大雨で一本の白もくれんが倒れた。そこで枯れてしまう木々の命について考える授業を行った。

授業の冒頭で、大雨により白もくれんが折れたことを伝えると、児童たちは「やっぱり」という反応だった。そこで、佐賀県で倒木がきっかけで事故が起こり、小学生が死亡した事件の記事を提示し、「シンボルだった松の木をどうすべきだと思うか」と尋ねた児童らは「切った方が良い」とすぐに答えた。なによりも子供の命が失われたことへの反応が一番大きく「切った方が良い」という意見がしばらく続いた。しかしその後で「切らない方がいいけど」「全部じゃなくても」という意見が出たので少し広げようと問い返すと「残すのも大切」「シンボルだから」という意見も出た。「「人の命には代えられないから」という伐採派と、「全部を切らなくても」という中立派の間で話し合いは止まってしまった。そこで、話を白もくれんに戻し「手当てをしていない木をどうしたらよいか」と再度問い返した「道路側に出てしまっているのは切る」「危ない木切る」というように少しでも白もくれんを残す方法を提案する中立派と、「人の命が大切です」とそれを受け入れない伐採派。確かに、人命には代えられない。ただ、今の白もくれんの状況が、直ちに人命に影響するかというと、そうではない。そこで「いろんな人にとって大切な木な気がする」と自分たち以外の人の思いに「木にも命がある。生きている」という白もくれんの命に言及する意見がでたところで、自分たち以外の人の意見を聞いてみようということになった。

5 地域の人の思いを聞いてみよう

城南小の白もくれんにとても深い思いを寄せている学区のボランティアMさんと、白もくれん並木の前に住んでいる総代のTさんをお招きし、白もくれんについての話を聞く会を開いた。

児童は初めて、自分たち以外の人が白もくれんについてどう思っているのかを聞いた。白もくれんについての強い思いは、児童の心を動かしていった。また、頑なに「枯れそうな白もくれんは切った方がいいと思う」と、主張していた子供たちも「でも切らないでほしいという学区の方々の思いがあるから、できれば切りたくない」と感想を書いている。並木を再生させたい、という思いは皆と同じである。しかし、「人命に影響があるときは、早く切ってしまった方がいい」簡単にそう思っていた児童が、学区の方の思いをうけとめ、心配な木は「別のところへ植える」という代案を見い出してきた。再生という点では弱いが、伐採という考えを捨てたのは、児童にとって大きな変容である。ここにきて初めて、白もくれんが児童にとって身近なものになり、自らが保護すべき対象として強く意識された。この会の後で、子供たちの思いはとても大きくなり、活動の中に「こうしたい」「やってみたい」という意思が感じられるようになった。思いをもっている人と触れることは、主体的な学習への一つのポイントだということをあらためて感じた。

6 ここまでの学びを発信する

本校には、城南シティカーニバルという行事がある。各学年がお店という形で、総合学習の学びをまとめ発表する。は、これまでに調べたことを全校や保護者に発信することで自分たちの活動を振り返り、後半の活動へつなげて行くのがねらいである。学年での話し合いから、①白もくれんの存在とそれが今危機的な状態にあること、②学区の方々の思い、の2点についてまとめ、伝えた。この発表を聞いた学区の方から多額の寄付をいただくことができ、また写教委員会から支援をいただくことができるようになった。

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7 後輩につなげよう

これまで児童は白もくれんの現状と向き合い、どうしたら並木を再生できるかについて、よく考えてきた。しかし、白もくれん(樹木)はすぐには変化をしない。5年、10年と長い時間をかけて、再生していくものである。児童は、木の継続観察でそのことに気がついており、卒業するまでの並木再生は難しいということを感じ始めていた。そこで、「白もくれんのこれからについて」話し合った。「今の保護活動だけで、並木は再生するのか」なげかけると、「下の学年にも伝えていかないといけないと思います」と引継ぎに関する意見がでた。5年生に保護活動を引き継いでもらいたいという願いを強くした児童らは、「つなげ!白もくれんプロジェクト!」と新しいプロジェクトを立ち上げた。まずは、白もくれんの美しさやすばらしさを伝えるために、iPadを活用して、写真で特徴を伝えた。さらに、現状を知るために、グループ活動で5年生と一緒に白もくれんの観察をした。

8 次の時代にむけて

いただいた助成や寄付をつかって、これまで活動してきた6年生と、受けつく5年生、そして学区の方々とともに植樹会行う予定である。

来年度の活動計画

今年度の同様の活動を新6年生が行っていく。

また、植樹した白もくれんを育て、この活動を本校の6年生の活動として定着させていくことがねらいである。