2021年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

環境, 文化多様性, 国際理解, 平和, 人権, 持続可能な生産と消費, 健康, 食育

本園は、「豊かな自然や友達とかかわりながら一人一人がその子らしさを発揮し共に育ち合う生活を通して心豊かにたくましく生きる力を育む」という教育目標をかかげ、平成28年から令和元年度の4年間,幼児期における「持続可能な開発のための教育」に関する研究開発を行ってきた。令和2年度からは心を動かす子どもたちの支援について研究をしているが、これまでに開発、設定した「持続可能な社会の担い手の基盤となる能力・態度」も意識しながら保育を行っている。その中から,「自己の側面」の「主体性」「自信」に関する事例を紹介する。

【10月下旬 あともう少し!手につかまって!:3歳児】

<背景>
3歳児クラスの子どもたち全員で山頂に登った時のことである。山頂に到着後,斜面を滑って遊んでいた子どもたち。そのうちの一人のA子も楽しそうに斜面を滑って遊んでいた。滑り終えた後,今度は斜面を登ろうとしている。

<事例>
A子が斜面を登り,半分くらいのところまでくると,滑って登ることができず何度も落ちてしまう。なかなか登れないため,A子が泣き始める。A子が泣きながらでも,懸命に登ろうとする。担任が「Aちゃん,がんばれ!」と励ます。A子が斜面を登るために必死だが,「助けて!もう登れない!」と言い始める。担任が斜面を少し下り,「がんばれ~!」と声援を送る。その声援に応えるようにA子が懸命に斜面を登ろうとするが,何度も滑り落ちてしまい,次第に登れないことに対するいらだちから,泣き声も大きくなっていく。担任が木につかまり,「先生の手につかまれ~あともう少し!」と手を伸ばしながら励ます。すると,担任の近くにB子が来て「A子ちゃん,がんばれ!」と応援し始める。そして,B子も担任と同じように手を目一杯伸ばし,「あともう少し!B子の手につかまって!」と繰り返し声援を送り,A子を助けようとしている。担任はA子に差し出していた手を引っ込め,後に下がる。A子が必死になって斜面を登る。そして,A子は腕を目一杯伸ばしてB子の手を掴む。B子は木に支えられながら,A子を引っ張る。B子に助けられながら何とかしてA子が登ることができ,二人が息を付きほっとする。落ち着いたところで,担任が「Aちゃん,がんばって登ったよね~」「B子ちゃんも大変なのによく気付いて助けてたよね」「二人の力が合わさって登ることができたね」と二人に声をかける。少し間が開き,A子がB子に,「ありがとう」と礼を言う。B子は「うん!じゃぁ,滑ろう!」と返す。A子の表情がようやく笑顔になり,二人はまた斜面を勢いよく滑って遊び始めた。

 

来年度の活動計画

本園で作成した「持続可能な社会づくりの構成概念(幼児版)」を、年間通して子どもたちが体と心で体験できるようにしていく。この概念は「受容性」「多様性」「相互性・循環性」「有限性」「公平性」「連携性」「責任性」で構成され、中でも「受容性」は本園独自に設定した概念である。
これらの構成概念を意識して活動する中で、子どもたちも先生たちもしっかりと心を動かしていく様子を研究会などで紹介していく。
コロナ禍で実際に子どもたちの姿を見てもらうことが難しいが、今後、いろいろな場所で「持続可能な開発のための教育」の普及と,「持続可能な開発のための教育」に興味がある幼稚園や保育園,小学校等が本園の取り組みや教育課程を参考にできるように発信していきたいと考えている。