2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 減災・防災, 気候変動, エネルギー, 環境, 持続可能な生産と消費

「海と生きる」を震災復興のキャッチフレーズとする気仙沼市において,本校は「食を通して地域を見つめ,持続可能な郷土の未来を描く児童の育成」を活動テーマとして実践している。ESDのねらいとして,気仙沼市や階上地区の食や暮らしについて,問題解決的な地域学習を実施することで,未来に残したい気仙沼・階上の「理想とする未来社会」の実現に向けて具体的に提言していく。

ESDの実践を通して児童に育てたい力等を次のように設定している。

◯様々な地域の食品・食材・料理について興味・関心をもちながら,その地域の文化や自然,環境問題,生産者・消費者の努力や願い等について,自ら課題を見つけ,進んで情報を選択しながら,その解決に向けて調べたり考えたりすることができる。【課題解決能力】

◯課題解決に向けた活動を通して,自分たちが暮らしている地域の豊かな自然環境とそこで生産される素晴らしい食材と地域の人々との関わりの大切さに気付き,地元の食文化や風土,環境に誇りをもつことができる。【郷土愛の醸成】

◯持続可能な将来の気仙沼市や階上地区のあるべき姿について,自分なりの意見をもったり,行動したりすることができる。【行動力・発表力・実践力】

具体的には,「①スローフード(食育)に関わる学習」「②海洋教育」「③環境教育」「④防災・減災教育」等の領域を柱に,総合的な学習の時間を中心に国語,理科,社会科等の各教科や特別活動などを横断的に関連させながら取組んできた。具体的には,以下の内容となる。

①スローフードに係わる学習(全学年)

  6年生の地元食材を利用した店舗への取材活動,5年生の水産業に関わる学習,4年生の米作りの活動等を進めながら,2月に「海のフォーラム」を開催し,地元食材の豊かさとそれを支える自然環境,食材に関わる人の努力や工夫等をグループごとにまとめ,発表し交流した。自然と人とのつながりを重視し「自然豊かなふるさと階上」を持続可能なものにしていくために私たちは何をしなければならないかを考え,どのように生活し行動していけば良いかを考えて提言した。そして今後の生活や行動を見直すきっかけとなった。参観した地域住民ゲストティーチャーには未来を担う子どもたちの話にじっくりと耳を傾け,助言をいただき,地域のこれからについて交流することができた。1年生はサツマイモ,2年生は地域の特産品である「茶豆」の栽培や収穫等の体験活動を階上・波路上保育所といっしょに行った。一連の活動を通して,栽培の苦労や収穫の喜びを味わい,自分たちが生活する本地域の豊かさを感じ取りながら生産者の方々との交流を図った。3年生は,「名人発見」として,いちご名人,野菜名人,あわび・ウニ捕り名人から,栽培や養殖の実際を見せてもらいながら学びを深めた。

②環境(3・5年生)

7月に,やじの川にはどんな生き物がいるのか予想させ,生物調査を実施した。飼育・観察を行い,どのような事に注意が必要かグループで調べ活動し,どのような環境が良いのかまとめさせる。9月に学区内の岩井崎の海岸で磯に棲む生物調査を実施した。震災後,昨年度から実施し,磯の生物多様性を感じる活動となった。本地域の児童にとっては震災により海に親しむ原体験が,不足している。講師に宮城県の気仙沼水産試験場から職員を派遣していただき,磯に棲む生き物たちの生態や環境の豊かさについて話をしていただいた。学校に生き物を持ち帰り飼育観察を行った。

③海洋教育関係(5年生)

海を利用するという活動では,「わかめの養殖体験」を,年間を通して実施している。働く人々の工夫や努力,自然の豊かさや海の恵みについて探求活動を行い,10月に種はさみをしたわずか数センチのわかめが,半年後には2m近くも成長することに驚き,実感を伴う体験となった。

④防災・減災に係わる学習(4年生)~「防災復興マップづくり」~

 地域の方々(自治会長等)と一緒にタウンウォッチングを行ったことを基に,防災や復興状況の視点,そして地域の良さの視点から地図にまとめ,発表会を実施した。アクサユネスコ防災・減災プログラムと関連させ,全国の学校関係者の方や地域の方々に見ていただいた。日常の中で見落としがちな危険箇所をじっくりと見ることで,地域の方と情報の共有化も図ることができた。この活動は,保護者はもちろん,階上地区総合防災訓練でも地域の方に向けて発信し,子どもの気付きから地域の復興状況や災害への備えについて再確認する機会となった。

 
① 地域の寿司店への訪問 
① 茶豆の栽培活動(種まき)
② 磯の生物調査
③ わかめの養殖体験(種はさみ)
④ タウンウォッチング
④ 防災復興マップの発表

来年度の活動計画

【1・2年生】サツマイモや地域の特産品である「茶豆」の種まき,収穫等の体験的な活動を階上・波路上保育所といっしょに行い,栽培の苦労や収穫の喜びを味わう。また自分たちが生活する本地域の豊かさを感じ取りながら,生産者の方々との交流を図る。

【3年生】「岩井崎」の磯をフィールドに,生態系(生物多様性)とそれをはぐくむ海辺の環境(水質等)との関わりに着目し,観察を行う。また農業水路としての川の役割や水生生物等との関わりについて学ぶ。さらに「名人発見!ぼくらの階上」では,農業や水産業に従事する方から「地域」と「食」との関わりを学ぶ。

【4年生】地域の水田をフィールドに「米作り」を行う。米作りを通して課題を設定し,観察学習を通して自然環境と稲の成長の関わりを学び,生産過程,流通等について理解する。また本地域の暮らしと関連させながら米の役割を考え,探究活動を行う。また東日本大震災による大きな被害を受けた本地域では,持続可能な地域社会を担う人材育成が必要とされることから,「地域防災マップ作り」を行い,地域の方と学区内を歩き,危険箇所や避難所等の確認し,地域の防災のあり方について考える。児童が作成したマップの発表に対して地域の方々からアドバイスをもらい,完成度を高める。

【5年生】「ワカメ養殖」など地域の水産業に着目し,水産業とくらしのつながり,地元食材と環境のつながり等を課題にして探究活動を行う。岩井崎の生物調査から,海の生物の多様性を感じると共に,浜辺にごみがあることに気付き,ごみ拾いや分別処理を体験した。また,養殖業の方から「温暖化の影響により,わかめの種が育たない」といった現状から,自分達の生活を見直していくことの必要性をみつけ,東京海洋大学や川と海のビジターセンターなどの講師の方から話を聞き,自分たちにできることを考え,「海のフォーラム」の校内発表で提案する。

【6年生】「スローフードを知ろう」では気仙沼市のスローフード推進に関わる方々への取材を行い,実際に取り組んでいる店を訪問する。さらに学習旅行(修学旅行)で訪れる岩手県盛岡地方のスローフードの取組や考え方と比較し,学びを深めていく。また「味の方舟」の学習では,未来に残したい食材からメニューを考え,地域の調理のプロの指導をもらい調理を行う。更に,「海のフォーラム」では,6年間の食育学習の集大成として,「スローフード」「防災・安全」「自然環境」などの視点から,気仙沼・階上の魅力を未来に伝える取組を考え,提言する。