2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 減災・防災, エネルギー, 環境, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 持続可能な生産と消費

原爆ドーム前での合唱の様子

本校の教育活動方針の一つに「調和と活力ある教育活動の推進」がある。その中の具体的な取組として,「今日的な課題に対する先進的・創造的な活動と,各部・各教科相互の連携のとれた活動の推進」がある。そこで,本校ではESDを「持続可能な社会づくりの担い手を育む教育」と捉え,その実践を2年間のフィールドワーク(課題追究活動,以後FWという)を主体とした活動として積み上げている。FWでの事前・現地調査を通して解決を目指す課題は,ESDで示されている「現代的な課題,身の回りの生活にかかわる課題」と同義であり,追究の成果を自らの成長につなげようとしたり,自らの生活に生かそうとしたりすることは,ESDが目指す「持続可能な開発」と同義であると考える。本校では宿泊行事である,「小豆島の生活」(2年生),「広島の生活」(3年生)での現地でのFWに加え,事前学習や事後学習も含め総合的な学習の時間として取り組んでいる。FWの実践を通して,持続可能な社会づくりの担い手を育むことを目標とした。

その中からここでは3年生が取り組んだ「広島の生活」でのFWの実践を紹介する。

 

① 事前学習 (○ 課題を決める ○ 仮説を立てる ○ 行動計画を立てる)

広島は,歴史的に見て平和の観点からも伝統工芸や食文化など多岐にわたり魅力のある街であり,身近な問題や興味・関心につながる課題の宝庫である。そこで,自分の身の周りで疑問に思うことや興味・関心のあることから「追究課題」を設定した上で,その課題に対して自分の考えの根拠となるものを得るために,広島でのFWで何について調べればよいのかを考え,「現地調査課題」を設定した。その後,現地調査課題で取り上げる内容について事前調査を行い,集めた情報を根拠にして,現地調査課題に対する自分の考えを仮説として設定した。

また,本年度は事前に被爆伝承講話として現地の被爆伝承者の方に来校していただき,平和についてあらかじめ学んだ上で,平和に対する自分の考えをもって現地での「平和学習」に臨んだ。

 

② 現地調査 (○ 現地調査を行う ○ 行動計画に則って活動する)

生徒が課題とした分野は多岐にわたり,食文化・産業・伝統・行政・産業・伝統文化・歴史・産業・平和等に関わる調査を行った。1日目には,平和記念資料館の見学,被爆体験講話,原爆ドームの対岸親水テラスでの学年合唱,平和記念公園の散策などを通して,学年全体で平和についての考えを深めた。事前に伝承講話を聞いていたこともあり,どのように平和を継続し,思いを引き継いでいけばよいのかについて自分なりの考えをもつことができたようだった。2日目に,FWとして,個人の追究課題に基づいて,訪問先での資料収集,聞き取り調査を中心とした現地調査を行った。今年度は広島市役所,放射線影響研究所,広島市水産振興センター,中国新聞社,オタフクソース,広島市環境局中工場,厳島神社等で現地の方から貴重なお話をいただき,現代的な課題と生活の中の「追究課題」を結び付け,課題に対してどのように向き合っていくかを考える姿が見られた。

 

③ 事後学習 (〇 仮説を検証する ○ 追究成果発表をする ○成果をまとめる)

「現地調査課題」の検証の結果を基に,自分の身の周りで疑問に思うことや興味・関心のあることから設定した「課題」に対する自分の考えをまとめた。本来であれば3年間取り組んできたFWの集大成の場として,「広島の生活」の課題追究の成果を発表会という形で発信しているが,本年度は感染症対策のため追究成果発表会は中止となった。そのため,追究の成果は,課題追究の経過と自分の考えをまとめた報告書を作成して,冊子としてまとめた。この冊子は,現地調査でお世話になった方にも送付している。保護者からも生徒の自主的な学びや表現力の育成につながり,学んだことが自分の今後の生き方,考え方に大きく影響を与えていると大きく評価されている。

来年度の活動計画

令和3年度は,SDGsに関わる学習も視野に入れながら,各学年でのFWを活動の中心に据えてESDの実践を継続していく。現在も行っている現地調査での各団体との交流の充実を生かし,今まで以上に教科の授業でも横断的に関わらせながら活用していく。また,FWの個人課題に関しては,毎年新たな分野の情報収集を大切にし,現代的な課題としての課題設定の工夫をしていきたいと考える。さらに,1年生に関しては,これまで行ってきた宿泊学習に代わる学習として,校外学習でSDGsに関わる施設の訪問などを行い,FWにつながる探究のプロセスを通じた一人一人の資質・能力の向上を目指していく。そうすることで,3年間を通して系統的に幅広く,持続可能な社会づくりの担い手につながる教育に結び付けた活動としていきたい。