2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 環境, 文化多様性, 世界遺産・地域の文化財等, 国際理解, 平和, 人権, 福祉, 持続可能な生産と消費, その他の関連分野

 本校では,生徒の誓いに「自主自立の精神,協同奉仕の態度,確かな実践力,たくましさ」がある。それは本校の教育目標ともつながり,生徒の目標でもある。そこで,本校が取り組むESDを「持続可能な社会づくりの担い手を育む教育」と捉え,その実践を2年間のフィールドワーク(課題追究活動,以後FWという)を主体とした活動を積み上げている。現代的,身の回りの生活にかかわる課題を追究することを通して「各教科や領域で学んだことを総合的に生かす」「課題追究の成果を自らの生活に生かす」「生涯にわたって学び続ける態度を育む」ことをねらいとしている。本校の宿泊行事を現地でのFWとして,2年生では「小豆島の生活」,3年生では「広島の生活」の中で主に取り組んでいる。その事前学習や事後学習も含め総合的な学習の時間として取り組んでいる。その中からここでは3年生が取り組んだ「広島の生活」でのFWでの取組を紹介する。

① 事前学習 (○ 課題を決める ○ 仮説を立てる ○ 行動計画を立てる)

広島は,歴史的に見て平和の観点からも伝統工芸や食文化など多岐にわたり魅力のある街であり,身近な問題や興味・関心につながる課題の宝庫である。そこで,自分の身の周りで疑問に思うことや興味・関心のあることから「課題」を設定する。その「課題」に対して自分の考えの根拠となるものを得るために,広島でのFWで何について調べればよいのかを考え,「現地調査課題」を設定する。その後,課題への仮説を立ててから広島に訪問する。そのために,「現地調査課題」で取り上げる内容と類似するものについて事前調査を行い,集めた情報を根拠にして,「現地調査課題」に対する自分の考えを仮説として設定して,現地調査を踏まえて仮説が正しいかどうかを検証した。

② 現地調査 (○ 現地調査を行う ○ 行動計画に則って活動する)

生徒が課題とした分野は多岐にわたり,食文化・産業・伝統・行政・産業・伝統文化・歴史・産業・平和等に関わる調査を行った。まずは,全員で「平和学習」として被爆体験講話を聞くことから始まり,平和公園資料館見学,折り鶴を捧げる会,原爆ドームの対岸親水テラスでの学年合唱を行った。2日目にFWとして,個人の「課題」に基づいて,訪問先での資料収集,聞き取り調査を中心とした現地調査を行った。今年度は市役所,放射線研究所,筆の里,広島城,宮島伝統産業会館,大和ミュージアム,厳島神社等13か所で行った。

③ 事後学習 (〇 仮説を検証する ○ 追究成果発表をする ○成果をまとめる)

「現地調査課題」の検証の結果を基に,自分の身の周りで疑問に思うことや興味・関心のあることから設定した「課題」に対する自分の考えをまとめた。3年間取り組んできたFWの集大成の場として,「広島の生活」の課題追究の成果を,参観者に分かりやすく伝えることを意識して10会場にわかれ,電子黒板や実物投影機などを使用して発表した。以下に簡単に紹介する。「どうしたら争いが減り,平和に暮らせるようになるか」「人を虜にする魅力は何か」「どのようにしてメッセージを発信すれば多くの人に伝わるか」「人々に親しまれる商品の工夫とは」などである。活動の最後に,課題追究の経過と自分の考えをまとめた報告書を冊子として作成した。現地調査でお世話になった方にも送付している。保護者からも生徒の自主的な学びや表現力の育成につながり,学んだことが自分の今後の生き方,考え方に大きく影響を与えていると大きく評価されている。

来年度の活動計画

 令和2年度も各学年でのFWを活動の中心に据えて課題追究学習を継続していく。現在も行っている現地調査での各団体との交流の充実を生かし、今まで以上に学びの内容を教科の授業でも横断的に係わりながら活用していく。また、次年度は2年生の小豆島との交流が50年目を迎える節目でもあり,より文化交流に関わる内容が深まる工夫を進めたい。さらに,FWの個人課題に関しては,毎年新たな分野の情報収集を大切にし、現代的な課題としての課題設定の工夫をしていきたいと考える。1年生からのキャリア教育も含めて,3年間を通して系統的に幅広く,持続可能な社会づくりの担い手につながる教育に結びつけた活動としていきたい。