2020年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 海洋, 環境

水産高校での餌やり体験

食欲旺盛なウナギたち

本校は、ユネスコスクールとしてSDGs17の目標を見据え、自分たちが住む地域が直面している問題に向き合い、未来を展望しながら解決に向かう学びを進めている。そこで、理科学習で培う知識・技能や理科的な見方、考え方を働かせて探究する、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にアプローチするESD環境学習を構想した。海を知り、海を探り、海を思う学びを通して、子供たちが川沿いに住む自分たちの暮らしとの関連性や相互性、その責任性を尊重する姿につなげたいと考えた。

具体的には、海洋教育を柱に、①水環境を支える微生物に関わる学習、②地球の水循環に関わる学習、③海洋生物の生態に関わる学習、④海や湖での体験的な学習、⑤海洋環境保全への意識を高める学習を行った。

①「私たちの暮らしと水環境」 微生物の役割を知る実践(7月)

日本技術士会理科支援委員会と授業連携し、上下水道・衛生工学専門の野々部顕治氏から、水の中の小さな生き物の存在について教えていただいた。下水処理場で水を浄化する際に活躍する微生物を顕微鏡で観察した。私たちが生活の中で使って汚した水は下水処理場に運ばれ、そこで汚れを分解してくれるのが微生物たちであると知った。自然の森や地面の中でも、微生物たちがしみ込んだ雨水をきれいにし、地球の水を育んでいる。そんな微生物たちにも限界があり、人間の水の使い方が、自分が使う水にも水生生物が生きる水にも影響することに子供たちの意識を向けることができた。

②「水循環の中にいる私たちの責任」 里山と川の上流で体験的に学ぶ実践(9月)

川の上流を観察しようと岡崎市鳥川町へと出向いた。里山の湧水が集まる澄んだ川の中に入ると、カワニナやサワガニなどを見つけて、自分たちが住む地域の川には見られない生き物や流れる水の様子の違いに驚いた。ホタルが飛び交う清らかな上流の水は、海へと流れていく間に水質や住む生き物に変化がある。その間には、人間の生活があるからだ。岡崎市環境課の方から、里山を手入れしホタルを育む川を住民が守っていることを教えていただいた。子供たちは、水は地球を循環し、私たちの生活が水循環の一部であることへの責任を考え始めた。

③「三河湾の生き物の世界をのぞく」 海洋生物とのつながりを考える実践(9月)

人と自然の共生を目指して活動するBio Garden With代表の宮田賢輔氏に出前授業をお願いし、三河湾の生き物を子供たちに見せていただいた。姿形の全く違う数種類の魚介どうしが、実は互いの命の営みにつながりや関わりがあり、人間の私たちもそのつながりと関わりの中にあると知った。どれか一つが絶滅しても、どの生き物の命も保つことが難しくなることから、子供たちは「海の生き物が自分たちの命を支えてくれているという」考え方をもつようになった。

④「海に親しみ、海を知ろう」竹島海岸、水産高校で体験的に学ぶ実践(10月~11月)

三河湾を望む蒲郡市竹島海岸へ出かけた。竹島を巡り、潮が引いた海岸を散策しながらカニやヤドカリ、巻貝など次々に生き物を発見し、歓声を上げる子供たちの姿があった。竹島水族館にも立ち寄り、愛らしい海の生き物たちの様子を楽しく観察した。また、愛知県立水産高等学校を訪れ、海洋資源科の生徒からウナギとその餌となる魚の養殖や、海について勉強していることを教えてもらう機会を設けた。餌やりの体験やどんな質問にも答えてくれる生徒たちの生き生きとした表情に、子供たちの海への思いが高まっていった。

⑤「海を守り、海の恵みに感謝」海洋プラスチックごみの行方を考える実践(12月)

愛知県環境センターへあいちecoティーチャーの派遣を依頼し「どこへいく?プラスチックごみの真実!」の講座を開いた。適切に処分されないペットボトルやレジ袋がやがて海洋プラスチックごみになり、海洋汚染や生態系に及ぼす影響について学んだ。自分が捨てた1つのプラスチックごみが海洋生物に蓄積され苦しみ、それを自分が食べることになるとわかり、海はこのままでは魚の量よりごみの量の方が多くなることに危機感を抱いた。子供たちは、ごみを減らす暮らしや水を大切に使うことなど、自分にできることを始め、海への思いを高めた。

来年度の活動計画

「自己の見方や考え方の変容を自覚し、未来を展望しながら学びに向かう子供の育成」をテーマに、SDGs目標を見据えESDの視点に立った教科横断的な学習の展開を目指す。

・栽培、飼育活動を通して、生物多様性と生き物同士のつながりを考える。

・キャリア教育を通して、仕事や社会へ目を向け、生き方や将来なりたい自分を見つめる。

・教科の学びと生活の中の事象や現象、仕組みとのつながりに目を向け、SDGs目標を見据えながら、地域が直面する環境や社会の問題解決に向かう学習を展開する。