2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

減災・防災, 環境, 文化多様性

当校は、「基礎力の習得と思考力・実践力の育成を図る小中一貫教育」を活動テーマとして、ESDを未来をたくましく生き抜く子どもを育成するための教育活動と捉え、ESDの実践を通して基礎力・思考力・実践力の育成を目標とした。

①地域の消防機関とのかかわりから学ぶ防災教育

 本実践のはじめに、身近な消火設備を探す探検の時間を設けた。探検の中で子どもたちは、学校の中や校区の道路には、消火器や消火栓などたくさんの消火設備が設置してあることに気づいた。そして、消火設備の数や設置してある位置に着目することで、「自分たちは多くの消火設備に守られている」ことに気づき、地域を守る工夫を理解することができた。
 その後、道具から人へと視野を広げるために、消防署の見学を行った。子どもたちは見学を通して、消防士の訓練の様子や消防署内の仕組み、消防道具の工夫など、これまで直接かかわることのなかった消防の姿を知ることができた。消防士が毎日訓練を行っていることや火事の連絡を受けてから1分で出動することを知った子どもたちは、驚きの声をあげるとともに、人の命を守るためには「毎日の訓練が大切なこと」や「1秒でも早く消火しなければならないこと」に気づいた。 
 消防団とのかかわりでは、消防団が校区のパトロールやイベントの交通整理を行っていること、また、日々放水訓練を行っていることを知り、何のためにこのような活動をしているのかという疑問を抱いた。そして、話し合いの結果、校区に暮らす人々の命を守るためという結論に至った。子どもたちは、地域の消防機関とのかかわりを通して、安全に暮らせるよう多くの人に支えられていることを実感した。同時に、自分の命は自分で守るという思いも高まり、火事を起こさない行動を心がけて生活しなければならないことを感じた。

②ふるさと富士見の秘密―開拓者の思いにせまる―

 本校ができて36年になる。現在は住宅地であるが、以前は畑が広がり、更にその前は森林や荒地だった。校区に住む人たちの多くが畑から住宅地への転用後に引っ越してきたため、住宅ができる前の校区のことを知っている児童はほとんどいない。開拓の歴史や当時の人々の生き様に触れることで、地域のことを知り愛情を深めることができるのではないかと考え、実践を行った。
 まず、本校区はどのようなところか話し合った。すると「生活用品を売っている店が少なく、住宅ばかり」という意見が出た。また本校で昔から歌われている歌の歌詞にも注目した。歌詞のなかに「わかい町」とあり、新しい校区なのかと疑問をもった。
 校区ができる前は何があったのか知るために年代の違う2つの地図の色分けを行った。色分けするなかで、森林や荒地があった土地が畑に変わっていると気づいた。なぜ畑に変わったのか疑問が出てきたので調べ学習を行った。すると、地形が軍隊の演習場にふさわしいという理由で豊橋市が軍隊を誘致したことや、終戦後、食料不足になったため演習場を開拓し、畑につくりかえたことを知った。さらに調べをすすめると、酸性土壌のため作物が育たないことや根が邪魔をして鍬が入らないことなど、開墾作業の困難さを知り、実際に体験してみたいと考えた。そこで「開墾体験」「糞尿運び体験」「すいとん作り体験」といった活動を取り入れ、開拓者の思いを少しでも感じられるようにした。
 苦しい生活だったのに、やめる人はほとんどいなかった。この共通問題について調べたり体験活動から考えたりし、問題解決を図った。その結果、「農作物ができるようになって生活が楽になった」などの意見が多い中、「町をつくる希望をもっていた」という開拓者の気持ちに寄り沿った意見も出てきた。
 現在の地図と比べて変わっているところを探すと、海を埋め立てて工場ができていることを見つけた。そこで働く人たちのために造られた町が本校区である。本校区をつくるために開拓者が移転せざるを得なくなった。本校区ができることをどう思っていたのだろうか。開拓者の手記に「お金には代えがたい何かがある」とあった。開拓者の気持ちを知るためには、その「何か」という言葉がキーワードではないかと注目した。話し合った結果、思い出がつまった土地だから手放したくなかったのではないかとまとまった。
 最後に、これからの校区をどうしていきたいか話し合った。児童数の減少や売地が多い校区の現状をふまえ、町の人口が増えるための方法を考えた。その中で、校区のよさを伝え、住みやすい町づくりをしていくことが大切だという思いをもった。

来年度の活動計画

消防団の活動を取り上げた「防災学習」では消防団員をゲストティーチャーとして招き、訓練を見学したり自分たちも消防団の動きを体験したりすることで、地域を思う人々の思いに触れることができた。また「地域文化学習」では、地域の歴史を知る学習や体験活動を通して地域をよりよくしていきたいと願っていた先人の思いに触れ、自分たちが地域に貢献できることは何かと考えをもつことができた。
 これらの学習を今後の自己の生き方に取り入れるためには、地域から学び郷土愛を育むことが不可欠だと考える。さらに学んだことを生かしていくためには、他教科との連動や系統性も必要であろう。今後も学校全体でESDを意識し、活動に取り組みたい。