2019年度活動報告

本年度の活動内容

活動分野

生物多様性, 環境, 人権, その他の関連分野

本園は,「豊かな自然や友達とかかわりながら一人一人がその子らしさを発揮し共に育ち合う生活を通して心豊かにたくましく生きる力を育む」という教育目標の下,『持続可能な社会づくりの構成概念(幼児版)』を作成して子どもたちが体と心で体験できるようにしている。この概念は,「受容性」「多様性」「相互性・循環性」「有限性」「公平性」「連携性」「責任性」で構成され,中でも「受容性」は本園独自に設定した概念である。その「受容性」に関する,3歳児の森の中での実践例を紹介する。

「受容性」(幼児期の定義):私たちを取り巻く世界は,私の存在を根底から支え,受け止めていること。

「滑り台しよう」と張り切っていた子どもも,暗がりに入って少し緊張気味な子どもも,森の中の急斜面を目の前にすると口数が減り,黙々と登り始めた。この急斜面は子どもたちにとって,足腰だけではなく手も使わないと登ることが難しい。子どもたちは目の前の斜面に一生懸命に,真剣な表情で足をかけ,手を使い,全身で登っている。

一部の子どもたちはすぐに登り切って,私と一緒にしゃがみ込んでまだ登れていない子どもたちを見つめる。自然と「がんばれー!」と大声で言ったり,「ここ!ここにつかまって!」と木を差し出したり,つかまったらいい場所を教えたりする姿がある。手助けしようと手を差し伸べた子が登れていない子に引っ張られて,ずるずると落ちてしまう。だからといって相手を責めたり怒ったりすることはない。また,もう一度前を向いて登ってくる。

みんなが登り切ると,A男が「滑り台しよ」と私に言う。それを聞いて,子どもたちも自然と滑り始める。急斜面だから,勢いよく滑ることができる。「きゃー!!」と歓声を上げて降りていた。5~6人程度で体をひっつけ合いながら,急斜面を降りる姿も見られる。どの子も嬉しそうに,満足そうに急斜面を滑って降りていった。

来年度の活動計画

「持続可能な開発のための教育」に関する研究は今年度で終了し,令和2年度以降は新たな研究に取り組んでいくことになるが,これまでの「持続可能な開発のための教育」を行ってきた成果を基に保育を行っていく。また,本園の「持続可能な開発のための教育」を意識した保育や森の環境をワークショップや,国内外からの視察を通して広く公開する。更に,広島県幼稚園教諭新採用研修会や幼小連携のための小学校教諭対象の保育公開等の実施も予定している。その際,本園が4年間かけて作成した「持続可能な社会の担い手となるための能力・態度」を育成するための教育課程も,紹介していく予定である。こうした取り組みを通して,「持続可能な開発のための教育」の普及と,「持続可能な開発のための教育」に興味がある幼稚園や保育園,小学校等が本園の取り組みや教育課程を参考にできるようにしたいと考えている。