宮城県大河原町立金ヶ瀬中学校の高橋教義校長先生より、被災地における活動の報告をいただきました。
平成23年4月
東日本大震災における宮城県金ヶ瀬中学校の教育実践
宮城県大河原町立金ヶ瀬中学校
1、はじめに
昨年度から本校では、中学生が主動する地域防災訓練、地域農家での弟子入り体験、地域特産の梅干づくりなど、多彩な教育活動を実践している。本校はこれらの教育実践を通じて、持続可能な地域社会づくりや地域活性化に貢献できる生徒の育成を目指している。
3月11日に起きた未曽有の大震災では、本校学区の被害はさほどの状態には至らず、教職員や生徒も無事であった。しかし、本校は町指定の避難所であったものの、体育館の天井一部の落下により、避難所が開設できなかった。その後も、震度3以上の余震が続くとともに、1週間ほど停電になり、不安な生活状況であった。
このような中、ラジオ等で震災の状況が報道されていたが、電気が復旧して映像で悲惨な災害状況を知ることができ始めた。本校は臨時休校に入っていたものの、教職員による生徒の安否確認や学校での掲示による生徒への連絡を行っていた。その際、生徒たちは「自分たちにできることしたい」「自分たちは何もしないでいいのか」などの思いを教員に訴えていた。その生徒たちの思いや願いを叶えるべく、本校では次の取組を実践した。
2、避難所の閉所後に奉仕活動
本校近くの公民館が避難所となり、多い時には地域住民400人が避難所生活をしたが、震災後10日間ほどで避難所は閉所になった。しかし、公民館は避難生活に伴う汚れや震災による書籍等の散乱、様々な破損したものの後片付けなど、手付かずの状況であった。そこで、臨時休校の中、本校の生徒会は在校生に呼びかけ、全生徒の82%と教員で避難所の清掃や後片付け等の奉仕活動を3月23日に行った。
3、津波・被災校への復興支援の奉仕活動
本校は4月14日に始業式と入学式を行うことができたが、津波被害により開校出来ずにいた学校が県内にいくつもあった。そこで、20kmほど離れた沿岸部の学校に連絡を取り、本校の全生徒と教職員、そして保護者や卒業生も入り、4月18日に被災校に復興支援の奉仕活動を行った。被災校は一階部分が浸水し、校舎や敷地に泥やごみ等で汚れていた。多くの生徒が津波被害のために集まることも出来ないことから、教職員や住民の手で復旧作業を行っていたが、まだまだ人手不足の状況であった。本校では、被災校の指示により、清掃やごみ等の撤去など出来る限りの復興支援の奉仕活動を行った。
4、被災校への全校生徒による応援メッセージ贈呈
奉仕活動後に、全校生徒が応援メッセージを制作し、生徒会役員が被災校に持参した。メッセージには、全校生徒一人一人の、被災校の復興を願う思いが綴られていた。
後日、被災校は学校再開を果たし、生徒会長名で感謝と御礼の手紙を届けてくれた。
5、生徒の思いや願いの実態(アンケート調査結果)
奉仕体験後に、全校生徒を対象としたアンケート調査を実施し、震災後に生徒たちが抱いていた「自分たちにできることしたい」「自分たちは何もしないでいいのか」などの思い・願い等の実態状況を把握・確認している。調査は、5件尺度による質問紙法で行い、その結果の一部を次の表に示す。
No.
|
調査内容
|
大いに |
まあまあ |
どちらとも |
あまり |
まったく |
1
|
被災者に対して、自分が出来ることをしたいと思う
|
67.4 |
27.4 |
4.2 |
0 |
1.1 |
2
|
被災地のために、何ができるか考えたいと思う
|
61.7 |
33.0
|
2.1
|
3.2
|
0
|
3
|
自分の力が役立ったと思う
|
48.4 |
37.6
|
9.7
|
3.2
|
1.1
|
4
|
これからも、何かの役に立ちたいと思う |
73.7 |
21.1
|
3.2
|
1.1
|
1.1
|
5
|
自分は成長できたと思う
|
40.4 |
45.7
|
10.6
|
2.1
|
1.1
|
6
|
貴重な体験と活動ができたと思う
|
90.4
|
5.3
|
3.2
|
1.1
|
0
|
調査結果からは、大震災に対して、ほぼ全ての生徒が自分に何ができるかを考え、出来ることをしたいと思っていることが分かる。そして、活動後には、自分の力が役立ったことを実感し、今後も何かの役に立ちたいと意欲を抱いていることも読み取れ、生徒にとって貴重な体験と活動であったことが認められる。さらには、多くの生徒が自らの成長を感じ取ることができる実践であり、教育成果や効果が非常に高いことがうかがえる。